小池都政が発足3カ月になりました。
「小池マジック」という言葉があるように、小池百合子都知事の政治的センスは抜群です。
都知事選のときに小池氏を支持した自民党の区議七人を「七人の侍」と最初に言ったのも小池氏です。
その後、「七人の侍」という言葉が独り歩きしていきました。自民党が七人をなかなか処分できないのは、この言葉のせいもあるのではないでしょうか。
 
築地市場の豊洲移転に関しても、豊洲新市場がほぼ完成しているのにストップをかけたときは無謀ではないかと思いましたが、盛り土や謎の地下空間のことが連日マスコミに取り上げられ、小池知事の思惑通りに進展しているようです。
 
専門家会議は新市場の土地に全面的に盛り土をするように提言しましたが、いつのまにか計画が変更され、主要な建物の地下にモニタリング空間がつくられていました。この計画変更の経緯が不透明で、小池知事は11月1日、都の職員とOBの8人を懲戒処分対象とすると発表しましたが、なぜ地下空間がつくられたかについては曖昧なままです。
 
なにかの利権とか業者からの賄賂で計画変更がされたというならわかりますが、そういうことではなさそうです。
となれば、答えはひとつです。
そのことは次の記事にも示唆されています。
 
幹部「空洞作らないとダメ」 都の「盛り土」方針を覆す 豊洲問題、発案者は特定されず (1/2ページ)
 
この記事から3か所を引用します(「同法改正」とあるのは土壌汚染対策法改正のこと)
 
当時、市場は同法改正の動きを注視。図面作成に携わった当時の担当者は調査に、上司から「土壌汚染が発生したら掘り返して浄化するスペースが必要」などと指示されたと証言した。
 
報告書によると、当時部長だった宮良真氏は、会議での自身の発言について「(モニタリング空間を)造らないのはダメだと言っただけ」と説明。ほかの出席者からは「『汚染が出たら掘削除去しに行く準備をしていこう』と力強い発言があった」などの証言があった。
 
調査チームは地下空洞について「法改正への対応と新市場建設を両立させるための合理的な解決策として考え出された」と分析し、担当者の「日本でだれもやったことのない土壌汚染対策工事を短期間で仕上げた」「『プロジェクトX』だと思って取り組んだ」との証言を紹介した。
 
 
つまり、都の職員たちは、盛り土だけでは汚染対策が十分ではないと判断し、汚染が出てきたときに備えて、重機を入れて作業できる地下空間をつくったのです。
 
もちろん都の職員が勝手にそんなことを判断していいわけがありません。専門家会議の提言に問題があると思うなら、それなりの手続きを踏んで訂正するべきです。ですから、職員たちも自分たちは正しいことをやったとは主張できなかったのでしょう。
 
 
ただ、問題は、盛り土だけで汚染対策は十分だとする専門家会議の提言が正しいのか、それとも盛り土だけでは不十分で地下空間が必要だとする都の職員の判断が正しいのかということです。
 
私は土壌汚染の専門家でもないし、現場のことを知っているわけでもありませんが、二者択一で判断しろと言われたら、都の職員のほうが正しいに違いないと判断します。
というのは、専門家会議というのは、原子力の専門家を考えてもわかるように、たいていろくなものではないからです。
一方、都の職員はおそらくなんの利権もなしに純粋に判断したはずです。
 
もともと築地市場の豊洲移転は、豊洲の土壌汚染がわかって疑問の声が噴出しても強行されたというのが私の印象です。
築地は銀座に近い一等地で、そこに2階建ての広大な市場があるわけです。ここに高層マンションとショッピングセンターを建設すれば巨大な利権が発生します。
専門家会議が盛り土で汚染対策は十分とする提言をしたのは、結果的にこの利権を後押ししました。
 
小池知事は、都の職員とOB八人の処分を発表しましたが、これは「八人の侍」を処分したことになるかもしれません。