トランプ氏が大統領選に当選した背景には白人中間層の不満があったと言われますが、これがよくわかりませんでした。
 
トランプ氏は選挙戦で「外国に奪われた雇用を取り戻す」ということをしきりに訴えました。しかし、アメリカの11月の失業率は4.6%でしたし、今年はほぼ4%台で推移しています。これは完全雇用に近い数字です。
アメリカ経済は先進国の中で唯一好調です。EUや日本がマイナス金利から抜け出せないのに、アメリカはすでに利上げの方向に動き出しています。ダウ平均はこのところ最高値を更新中です。
 
トランプ氏は、アメリカの企業がメキシコなどに工場を移転させるのはけしからんと言って、現に移転をやめさせたりしています。
しかし、2015年の1人当たり名目GDPでいうと、メキシコ人はアメリカ人の6分の1の所得しかありません(中国人はさらに下)
工場が人件費の安い国に移っていくのは当然のことです。それによって貧しい国が豊かになりますし、アメリカ人も安い製品を買うことができます。
日本においても、ひところ工場がどんどん中国に移転していきましたが、それに文句を言う日本人はほとんどいなかったと思います。
ですから、白人中間層が外国に雇用を奪われていることに怒っていると言われても、納得がいきません。
 
アメリカでは格差社会がどんどん拡大しています。白人中間層はそれに対して怒っているのかと思いましたが、それも違うようです。
というのは、白人と黒人の格差も拡大しているからです。
 
 
白人と黒人の資産額格差、25年間で3倍に拡大 米
ニューヨーク(CNNMoney) 米ブランダイス大学は24日までに、白人とアフリカ系(黒人)国民の間の資産額の格差は過去25年で約3倍に拡大したとの調査結果を発表した。
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米調査機関ピュー・リサーチ・センターによると、白人世帯の資産額の中間値は2011年の時点で、9万1405ドル。黒人は6446ドルだった。自宅の所持者が黒人に極めて少ないことが大きな要因となっている。
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黒人の所得額は白人より総じて低く、蓄財が難しい環境にも置かれている。米調査企業Sentier Researchによると、黒人世帯の所得額の中間値は今年6月時点で3万5416ドル。白人は5万9754ドルだった。
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白人中間層は格差社会においてはむしろ勝ち組です。
黒人やヒスパニックや若者が格差社会に不満を持ってサンダース氏を支持したというのはわかりますが、トランプ氏を支持した白人中間層がなにに不満を持っていたのかは謎です。
しかし、朝日新聞に載った次の記事を読んで納得がいきました。
 
 
 ■「特権」気づかせる教育を 出口真紀子さん(文化心理学者)
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 権力にある側が差別を抑えるどころか、むしろ助長している。それは日本も同じです。沖縄で米軍ヘリパッド建設に抗議する人たちに向けられた「土人」という罵声を、現職の沖縄北方相が「差別とは断定できない」と擁護したのも、その表れです。
 日米で共通しているのは、差別の対象にならない人々、マジョリティー(多数派)の多くは危機感を抱いていないことです。マジョリティーは労することなく得た優位性を持っていて、心理学では「特権」と呼びます。土人発言問題では、本土の人々が沖縄ではなくたまたま本土に生まれたということが特権です。特権集団は、自分には特権があるという認識が欠けていて、社会的抑圧の現実を否定するか見ないようにしがちです。
 トランプ氏は米国ではまさにマジョリティーです。白人で、男性で、経済的には上流階級に属し、宗教的にも少数者ではありません。さらに「それが何か」と開き直っているようにみえます。選挙中に叫んだ「アメリカを再び偉大に」という言葉には、人種的マジョリティー、つまり白人のアメリカを取り戻せという意味が込められています。
 
 
白人中間層は恵まれているのに、それに気づかず、現状に不満を抱いて、もっといい目をしたいと思っているのです。
しかも独善的で、貧しいメキシコへ工場が移転することまで阻止しようとしています。
これはキリスト教の「七つの大罪」の「強欲」と「傲慢」に当たります。彼らはキリスト教徒を自認しているかもしれませんが、堕落したキリスト教徒です。
 
ただ、白人中間層には、やがて自分たちが少数派になるという危機感があったと思います。トランプ氏はそれを利用しました。メキシコ国境に壁を築くというのは、白人支配をいつまでも続けさせるという意味でしょう。
 
トランプ氏の言うアメリカ・ファースト、つまりアメリカ第一主義とは、「強欲」と「傲慢」の別名です。
日本を初めとする世界は、これからトランプ政権を教え諭していかなければなりません。