ちょっと前ですが、1111日に2016年版「犯罪白書」が発表されました。
ところが、この報道の仕方がメディアによってまったく違います。
 
産経新聞の記事は、全体を簡潔にまとめています。
 
 
刑法犯109万件、13年連続減少 平成28年版「犯罪白書」(産経新聞)
 平成28年版の犯罪白書が11日、閣議で報告された。それによると、27年の刑法犯の認知件数は109万8969件(前年比9.4%減)と、13年連続で減少。ピークだった14年の約285万件から、4割弱にまで減ったことが分かった。
 犯罪種別でみると、依然として「窃盗」が刑法犯認知件数の7割以上を占め、80万7560件。ただ、前年比では8万9699件減少し、刑法犯全体の認知件数減少につながったものとみられる。
 交通関係や薬物関係などの特別法犯は、検察庁で新規受理した人員は41万5944人(前年比1%減)だった。このうち過失運転致死傷などの摘発は53万697人(同6.5%減)、危険運転致死傷は622人(同26.9%増)。また、DV(ドメスティックバイオレンス)事案は108人と、24年以降、高止まりの傾向となっていた。
 
 
次の時事通信の記事は、もっぱら高齢者の犯罪に焦点を当てています。
 
 
高齢受刑者、過去最多に=凶悪化進む-犯罪白書(時事通信)
金田勝年法相は11日午前の閣議で、2016年版の犯罪白書を報告した。15年に刑務所へ入所した65歳以上の高齢者は2313人で、全体の10.7%を占め、現在の集計方法となった1984年以降最多となった。高齢者の刑法犯検挙人数は高齢化社会を反映し、05年に4万人を超えてから高止まりしており、15年は4万7632人だった。
 15年に検挙された高齢者を罪名別でみると、暴行・傷害が前年比7.7%増の5523人と急増。殺人(164人)と強盗(127人)もそれぞれ増加傾向にあり、高齢者犯罪の凶悪化が進んでいる実態が浮き彫りとなった。一方、窃盗は前年並みの3万4429人。遺失物等横領はピークの06年に1万人を超えた後は減少しており、3446人だった。
 特集では再犯防止策を取り上げた。刑法犯の検挙人数は04年に38万9297人とピークを迎えて以降は減少に転じ、13年からは毎年戦後最少を記録している。ただ、検挙者に占める再犯者の割合である再犯者率は上昇し続けており、15年は48.0%だった。(2016/11/11-10:24
 
 
高齢者犯罪に焦点を当てると、高齢化社会ですから、犯罪の数が増えて深刻化しているということになります。
しかし、犯罪白書を紹介する記事なのですから、こういう書き方はまともではありません。
産経新聞の書き方はまともです。
 
しかし、産経新聞のような書き方は例外です。どのメディアも「犯罪は深刻化している」と印象づける記事を書いています。
それは見出しだけ見ても明らかです。
 
 

犯罪白書公表再犯者割合は過去最悪47%(日テレNEWS24)

 
刑法犯の検挙人数、戦後最少を更新 再犯者率は過去最高(朝日新聞)
 
性犯罪「顔見知り」3割 犯罪白書、20年で3倍に(日経新聞)
 
女性受刑者が20年で倍増 女性の“不倫願望”原因と元刑事(日刊ゲンダイ)
 
ほとんどの人は見出しに影響されて「犯罪は深刻化している」というイメージを持つに違いありません。 

念のために法務省のサイトも紹介しておきます。

平成28年版犯罪白書のあらまし(法務省)
 
 
刑法犯の認知件数は,2002年をピークに13年連続で減少し、2015年には戦後最少を記録し、ピーク時の4割弱になったのですから、激減というべきです(殺人・強盗などの凶悪犯罪もへっています)
ただ、高齢者犯罪とか高齢者の再犯者率とか幼児虐待とか、部分的には増えているものがあるので、そこに焦点を当てると「犯罪は深刻化している」という印象の記事が書けますし、現実にそういう記事がほとんどです。
なぜそうなるかというと、犯罪報道はマスコミにとって優良コンテンツなので、「犯罪は深刻化している」というイメージが必要なのです。また、法務省なども予算獲得のためにはそのほうが好都合なので、そうした記事を後押ししているかもしれません。
 
私などもブログを書くときは、世の中の問題点を指摘して、警鐘を鳴らすという書き方をすることが多いので、犯罪がへっているというニュースは取り上げにくくなります。
そこで、とりあえずマスコミ批判という形で取り上げたわけです。
 
実は「若者の犯罪離れ」という形で取り上げようかとも思いました。
社会の格差が広がっているのに犯罪が減少するというのは不可解です。
誰かちゃんと理由を解明してもらいたいものです。