アパホテルの客室に、アパホテルグループ代表の元谷外志雄氏が書いた南京虐殺や慰安婦問題を否定する本が置かれているということが、中国のネットにアップされ、炎上騒ぎになっています。
アパホテルは、「日本には言論の自由がある」として本を客室から撤去しないという方針を表明しました。
 
もちろんこれは「言論の自由」の問題ではなく、経営者個人の思想とビジネスを混同しているという問題です。経営者が訴えたいことを書いた本を客室に置くのは、客へのサービスと対極にある行為です。中国人客が多いホテルだけに、なおさら問題です。
 
とはいえ、一企業のおかしな経営者のことで、たいした問題ではないと思っていたら、菅官房長官が言及して、問題が拡大しました。
 
 
中国のアパホテル批判に菅義偉官房長官「過去の歴史に過度な焦点当てるな」と応戦
 菅義偉官房長官は18日の記者会見で、アパホテルの客室に「南京大虐殺」や「慰安婦の強制連行」を否定した書籍が備えられていることを中国外務省の華春瑩報道官が批判したことについて「報道官の発言一つ一つに政府としてコメントすることは控えたいと」述べた。
 その上で「過去の不幸な歴史に過度な焦点を当てるのではなく、日中両国が国際社会が直面する共通の課題、そして未来志向に向けて取り組んでいる姿勢を示すことが重要だ」と指摘した。
 
 
「コメントすることは控えたいと」と言いながらコメントしています。
中国外務省の報道官が先にコメントしたとはいえ、この問題をさらに大きくしています。
 
また、菅官房長官は韓国が竹島に少女像を設置する動きをしていることについてもコメントしました。
 
 
竹島への少女像設置運動に強く抗議 菅氏「極めて遺憾」
菅義偉官房長官は17日の記者会見で、韓国北部・京畿道(キョンギド)の与野党議員らが、日韓両国が領有権を主張する竹島(韓国名・独島〈トクト〉)に慰安婦問題を象徴する「少女像」を設置するための募金運動を始めたことについて、韓国側に強く抗議したことを明らかにした。
 菅氏は「竹島の領有権に関する我が国の立場に照らしても(少女像設置は)受け入れられず、極めて遺憾だ」と述べ、慰安婦問題の日韓合意を履行するよう求めた。岸田文雄外相も同日の閣議後の記者会見で、「竹島は国際法上も歴史的にも我が国固有の領土だ。(少女像設置は)受け入れられない」とした。
(後略)
 
 
少女像(慰安婦像)といえば、釜山の日本総領事館前に少女像が新設されたことで日本政府は駐韓大使を一時帰国させるという強硬手段に出ました。
私はこれについて前回の記事で、「韓国政局の混乱とアメリカの政権移行期に乗じた機敏な行動」と書きましたが、よく考えると、そういう単純なことではなさそうです。
 
今、アメリカのトランプ新大統領の就任を迎え、日本はどう対応するかを考えなければならないときです。
おそらくトランプ大統領は外交軍事でも経済でも日本に無理難題を吹っかけてくるのではないかと思われます。そうすると、日本はアメリカから自立しなければという議論になるはずです。
しかし、今のように中国韓国と歴史問題で対立していると、そういう議論にならず、ますますアメリカ依存が深まってしまうかもしれません。
 
そういうことを考えると、安倍政権が駐韓大使を一時帰国させたり、菅官房長官が中国韓国と対立をあおるようなコメントをしたりするのも、アメリカ依存を続けようという戦略に基づくものと思えます。
少女像問題で駐韓大使を一時帰国させるという強硬なやり方は、これまでの日本外交にはなかったもので、多くの人が意外に思いましたが、そういう戦略があると思えば納得できます。
 
ともかく、ネットの論調を見ていると、日米関係のことよりも中国韓国との関係に関心が向かっています。
安倍首相は当選直後のトランプ氏に会って、「信頼できる指導者だと確信した」とおバカ発言をしましたが、そのことも忘れられています。
中国韓国と対立してアメリカ依存を深めるという安倍政権の戦略は、今のところうまくいっているようです。