安倍政権は「共謀罪」の名前を変えた「テロ等準備罪」の法案を今国会に提出し、成立させる方針です。
テロの定義は存在しないのに、テロという言葉を使った法律ができるのは不思議だなと思っていたら、「テロ等準備罪」は法案を説明するための呼称で、条文にテロの言葉は出てこない見込みだということです。
「共謀罪」はイメージが悪く、テロ対策を前面に打ち出せば賛同が得やすいということで適当な名前をつけたようです。
 
しかし、今の日本でわざわざテロ対策の新法をつくる必要があるとは思えません。というのは、日本では年々テロの発生件数がへっているからです。
世界でのテロはふえていますし、日本人がテロの被害にあうケースもふえていますが、日本国内で発生するテロ件数はへっています。
 
テロは定義がないので公式の統計もありませんが、件数そのものが少ないので、ウィキペディアの「テロ事件の一覧」を見れば十分でしょう。
 
テロ事件の一覧
 
昔は浅沼稲次郎暗殺事件、三島由紀夫事件、あさま山荘事件、三菱重工爆破事件、連続企業爆破事件、赤報隊事件、オウム真理教事件など世間を震撼させる事件がいくつもありましたが、2000年以降は、目ぼしいものとしては、実弾入りの脅迫状を送ったり施設への発砲をしたりした建国義勇軍事件があるぐらいです。あとは新しい歴史教科書をつくる会事務所放火事件、加藤紘一宅放火事件、防衛省火炎瓶投擲事件、それから中核派による金属弾発射事件がいくつかありますが、テロ事件はきわめて少なくなっているといえます。
 
当然、日本は世界でテロ事件の少ない国です。
 
 
「世界テロ指数」日本は124カ国で最も安全 インド、タイ、英国への出張は要注意
 豪シンクタンクの経済平和研究所(IEP)が発表した2015年度版の「世界テロ指数(GTI)」で、日本は最下位の124位となったことが分かった。気になる上位の順位は1位イラク、2位アフガニスタン、3位ナイジェリア、4位パキスタン、5位シリアと中東・アフリカが並んだ。
(後略)
 
 
ところが、マスコミも政府もこうした事実には触れないので、なんとなくテロは怖いとか、テロ対策をやらねばというムードが醸成されていて、それに乗じて「テロ等準備罪」が出されるわけです。
 
テロ対策の成功している日本がテロ対策に失敗した外国のまねをするのは間違っています。むしろ外国に対して、日本を見習えと言うべきです。
 
では、日本のテロ対策のどこがよかったかというと、なにも対策をしなかったところです。
たとえば、中核派に対して破防法を適用するべきだという議論がありましたが、結局見送られました。その結果、中核派は金属弾発射というまるで伝統芸能みたいなことをするだけの組織になりました。
また、オウム真理教に対しては、破防法適用寸前まで行きましたが、結局適用されませんでした。その結果、オウム真理教の後継組織はなにも事件を起こしていません。もし破防法を適用していたら、なにか事件を起こしていた可能性があります。
 
逆に、かつて全共闘運動が盛り上がって多くの大学でバリケード封鎖がされたことに対して、政府は「大学の運営に関する臨時措置法(大管法)」を制定して、大学に機動隊を導入してバリケード封鎖を実力で解除するという対策を取りました。その結果、日本赤軍など大量のテロリストが出現し、よど号ハイジャック事件、テルアビブ空港乱射事件、三菱重工爆破事件、連続企業爆破事件などが起きました(三島由紀夫事件もこの流れにあるといえます)
 
アメリカは9.11テロに対して対テロ戦争を始めましたが、その結果、世界中でテロがふえました。
 
つまり、テロ対策はやればやるほどテロがふえるのです。
これは子どもが反抗期だからといって反抗をやめさせようとすると、ますます反抗するのに似ています。放っておけば、そのうち反抗は収まるのです。
 
日本はテロがどんどんへっているのに、なぜ外国と同じテロ対策をやろうとしているかというと、表向きの説明は国際組織犯罪防止条約批准に必要だからということですが、実際は警察司法組織の利権のために違いありません。
日本では刑法犯も13年連続でへり続けていて、今では最盛期の4割弱になっています。このままでは予算も組織も縮小されてしまうため、刑法改正で厳罰化を進めてきました。「共謀罪」新設もその流れにあるわけです。
とりわけ公安警察は、破防法が無意味になって組織の存在価値が問われる状況ですから、「共謀罪」がどうしても必要なのでしょう。
 
安倍首相は2020年の東京オリンピックのテロ対策まで「共謀罪」新設の理由に挙げていますが、日本がアメリカの対テロ戦争に協力しなければ、日本がテロの標的になることはありません。
 
国民は法務省や警察司法組織のたくらみをしっかり監視していく必要があります。