トランプ大統領は、イスラム圏7か国からの入国禁止令が突然だったと批判されたことに対して、ツイッターで「入国禁止が1週間前に発表されていたら、悪いやつらはその間に、この国になだれ込んでいただろう」と反論しました。
「悪いやつら」(the“bad”)という言葉を使ったところがトランプ流です。
テロリズムやテロリストという言葉に定義はないのですが、「悪いやつ」という言葉はもっと曖昧で、ほとんど無意味です。人間は誰でも悪いことをするし、悪い面を持っているからです。
ですから、政治の世界で「悪」という言葉が使われることはまずありません。事態を混乱させるだけだからです。
ブッシュ大統領が北朝鮮、イラン、イラクを指して「悪の枢軸」という言葉を使ったことがありますが、評判が悪く、すぐ使わなくなりました。
しかし、トランプ大統領の場合、「悪いやつら」という言葉を使うところが人気になっている気がします。要するにハリウッド映画の勧善懲悪の世界観です。
トランプ大統領は製薬大手首脳との会合で日本の為替政策を批判して、「中国がやっていること、日本がこの数年でやってきたことを見てみろ。彼らは金融市場を利用し、通貨の切り下げを利用してきたが、我々はバカみたいにじっとしていた」、「アメリカ企業が国内で薬を作らなくなったのは、他の国が通貨やマネーサプライ、通貨の切り下げを利用して我々を出し抜いているからだ」と語りました。
つまり、お人好しのアメリカは日本などずる賢いやつらに食いものにされてきたというわけです。
トランプ大統領は就任演説でも、「何十年もの間、私たちはアメリカの産業を犠牲にし、外国の産業を豊かにしてきました。他の国々の軍隊を援助してきました。一方で、アメリカの軍隊は、悲しくも枯渇しています」「他国の暴挙から国境を守らなければなりません。彼らは私たちの商品を生産し、私たちの会社を盗み、私たちの仕事を破壊しています」と同じようなことを語っています。
「善のアメリカ、悪の外国」という図式です。
そして、トランプ大統領が正義のヒーローとして現れ、悪い外国をやっつけ、アメリカを救うというのが、就任演説の実質的な内容です。
今のところトランプ大統領はそのシナリオに沿って行動しています。
ですから、アメリカ国民からそれなりの支持がありますし、本人も自分のやり方に自信を持っているようです。
国際政治学者などはトランプ大統領のやり方を保護主義だとか内向きだとか評しますが、まったく的外れです。
正義のヒーローが活躍するハリウッド映画だと考えると、よくわかります。
もちろんそれはトランプ大統領の書いたシナリオです。
今までアメリカはその強大な力でもってむしろ他国から奪い取ってきました。日米関係でいえば、日本は貿易摩擦でもプラザ合意でもアメリカにやられっ放しです。
トランプ大統領はそれをアメリカが食いものにされてきたと逆に読みかえて、さらに日本からむしり取ろうとしているのです。
正義のヒーローがトランプ大統領を退治するのが正しい結末です。
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