トランプ大統領は選挙中に「安倍は頭が切れる。キャロライン・ケネディは安倍に飲まされ食わされ、日本が望むことを何でもするようになった」と語っていました。
これはかなり悪意のある言葉です。
安倍首相はトランプ大統領に夕食をごちそうになるとき、「まさか私がケネディ大使にしたのと同じことをするつもりじゃないでしょうね」くらいの皮肉を言うべきですが、安倍首相にはむりでしょう。
 
日米首脳会談において、アメリカ側は貿易赤字問題を持ち出さなかったということで、日本側は安堵しましたが、これもおかしな話です。
トランプ大統領は「日本では、我々の車の販売を難しくしているのに数十万台の車が大きな船で米国に入ってくる」「公平ではなく、話し合わなければならない」と語っていました。これについては日本のほうから議題にして、「われわれは不公平なことはしていない。アメリカの貿易赤字は公平な貿易の結果だ」と主張するべきです。なにも言わないと、トランプ大統領の言ったことを認めたことになります。
 
日本がアメリカにものが言えないのは異常なほどです。安保法制にしても、日本はアメリカに言われたことをやるだけです。
 
ただ、これらは国益の問題です。もっと大きな、世界史的な問題もあります。
 
 
トランプ大統領は1月28日、イギリスのメイ首相との共同記者会見の場で、「(米英の)特別な関係は正義と平和にとって偉大な力の一つとなってきた」と語りました。
「正義」という言葉を持ち出したのは、第二次世界大戦で枢軸国を相手に戦ったことを念頭に置いているのでしょう。英米が正義で、枢軸国は悪だというわけです。
 
日本の左翼は、日本軍国主義を悪だと思っているので、この発言に反発はしないでしょうが、日本の右翼は、日本軍国主義を悪とするのは東京裁判史観であり、日本人に罪悪感を植え付ける洗脳プログラム(WGIP)のせいだと主張しているので、この言葉には反発しなければなりません。
しかし、日本でこの言葉はまったく問題にされていません。
右翼は慰安婦や南京事件で中国韓国にはものが言えますが、アメリカにはまったく言えないのです。
 
 
また、メイ首相は1月26日、フィラデルフィアでのアメリカ共和党の集会で演説し、「英米が、世界を自らのイメージに合わせて作りかえるために主権国家に介入した時代は終わった」と語りました。
「時代は終わった」と言っているだけで、主家国家に介入してきたことについて謝罪も反省もしていません。
いや、メイ首相はその言葉のあと、「だが、脅威が本物であり介入がわれわれ自身の利益になる場合においては、手をこまぬいているわけにはいかない」と述べています。つまりこれからも主権国家に介入するぞと言っているのです。
現にアメリカはアフガニスタンやイラクで主権国家を自分のイメージに合わせてつくりかえています。
民族自決権なんか完全に無視です。こうした米英の傲慢な態度こそがテロを生み出しており、世界平和にとって最大の脅威となっています。
 
しかし、こうしたことにも右翼はなにも言いません。
左翼にはまだ言う人がいますが、ごく少数です。
 
日本とアメリカでは圧倒的に国力の差があるので、二国間交渉ではどうしても不利になります。安倍政権は一国安全保障主義なので、軍事に関してはアメリカの言いなりです。
しかし、トランプ政権はアメリカファーストですから、日本が世界的な視野に立てば、有利になる可能性があります。
一国安全保障主義から世界平和主義への転換が急がれます。