共謀罪法が7月11日に施行されました。成立から施行まで、あっというまです。
テロ対策にはほとんど役に立たず、国際組織犯罪防止条約(パレルモ条約)に参加するために必要だという説明も多くの専門家が否定しています。どうしてごり押しで成立させたのでしょうか。
 
これについては、刑法学の高山佳奈子京大教授の説がいちばん納得いきました。
高山教授によると、統計的に犯罪はこのところ激減しており、それに危機感を持った警察司法組織が「犯罪のないところに犯罪を創り出し、取締権限を保持するため」と、アメリカの圧力があって、警察が市民を監視して得た情報をアメリカに提供するためだということです。
この説はこのブログでも紹介しました。
 
共謀罪反対が盛り上がらない理由
 
共謀法成立を喜ぶアメリカ
 
しかし、このふたつの理由はまったく別物です。このふたつの関係を整理してみました。
 
共謀罪の最初の法案は2003年に提出され、3度廃案になっています。このころは、警察の権限拡大だけが目的だったのではないかと思われます。そのため、野党はもちろん与党の政治家も成立させる熱意がなかったのでしょう。
 
そこで、法務官僚は、「アメリカの要請」という理由を持ち出しました。
嘘ではありません。前からアメリカの要請はあったからです。
 
アメリカがなにを求めたかというと、イスラム系テロリストに関する情報です。
 
2010年に警視庁公安部の国際テロリズムに関するデータがネット上に流出するという事件があり、それによって警察が在日イスラム教徒600人以上の個人情報を集めていたことが明らかになりました。もちろんこれは問題になり、訴訟も起きました。
しかし、凶暴罪があれば、誰にでも犯罪の嫌疑をかけて、情報収集や捜査をすることが可能になります。
 
法務官僚がアメリカが共謀罪の成立を求めているというと、安倍政権にとって共謀罪成立は至上命令となりました。
テロ対策はアメリカにとって重要なことですから、安倍政権としても協力しがいがあります。
 
このように考えると、安倍首相、菅官房長官、金田法務相らが「一般人は対象にならない」と繰り返したのが理解できます。あれはまんざら嘘ではなかったのです。彼らとしては、「外国人イスラム教徒が対象の法律だから、一般の日本人は対象にならない」という意味で言っていたのです。
ですから、共謀罪に反対する人はよく「治安維持法と同じで、戦前の日本みたいになる」と言いますが、安倍政権の意図とはちょっと違います。
 
「共謀罪法は外国人イスラム教徒を対象にした法律だ」ということを、賛成派も含めて誰も言わないのは不思議です。
 
ただ、成立した法律をどう使うかは、警察や政権の考えひとつですが。