ヒアリが5月に神戸港で見つかって以降、各地の港だけでなく内陸部でも見つかり、女王アリも3匹見つかっています。水際での撃退は失敗に終わるかもしれません。
 
ヒアリは毒性が強いとされますが、毎日新聞の記事によると、「被害が深刻な米国では年間1000万人以上が刺される。このうち8万人が、体が毒に過剰反応し呼吸困難や血圧低下などが急速に表れるアナフィラキシーショックを引き起こす。年間約100人が死亡しているとのデータもある」ということです。
 
年間100人の死亡というとたいへんなようですが、1000万人以上が刺されているので10万人に1人という致死率ですから、たいしたことはないとも言えます。
 
外来種に対しては、最初のうち過剰な危機感を抱きがちです。1995年に大阪府でセアカゴケグモが発見され、危険な毒グモがやってきたということでけっこう騒がれました。しかし、たいした被害もなくて、現在では42都道府県で確認されているのですが、ほとんど忘れられています。
 
環境省や国土交通省はこれからも水際での対策を強化する方針ですが、失敗に終わると、否応なくヒアリと共存していかなければなりません。
これまで駆除を目指していたのが受容へと180度転換するのですから、発想の切り替えがたいへんです。
 
 
自然界が相手だと、受け入れざるをえませんが、人間界のことだとなかなか納得がいきません。
たとえば北朝鮮の核兵器とミサイルです。
今となっては、北朝鮮が核ミサイル開発を諦めるということは、まったくありそうにありません。
かといって、アメリカが武力行使をして北の体制を転覆させるとなると、韓国や日本がたいへんな被害を受けますし、アメリカ軍も損害を受けます。それに、「北が核開発をやめないから攻撃したと」という理屈を国際社会が受け入れるかという問題もあります。
 
北の核兵器の“駆除”に失敗したのですから、受け入れて共存を目指すしかありません。
しかし、今は日本もアメリカも納得がいかなくて、ジタバタしている状況です。
 
 
対テロ戦争でも同じようなことが言えます。
どう考えても、今の状況はテロの“駆除”に失敗しています。
ISという“巣”をひとつつぶすことはできるかもしれませんが、それでテロがなくなるわけではありません。
 
北朝鮮の核といい、イスラム系のテロといい、アメリカの戦略は根本的に間違っています。
おそらくアメリカは、アメリカ先住民を“駆除”したという成功体験から、“駆除”一本やりの戦略から転換できなくなっているのでしょう。
 
人類は毒虫とも共存していかなければなりませんし、北朝鮮のような独裁体制ともイスラム過激派とも共存していかなければなりません。当たり前のことです。
 

 【追記】
「アメリカで年間100人以上死亡」というのは環境省のパンフレットにも載っているのですが、海外での死亡例は確認できなかったとして、この記述は削除されました。山本公一環境相が7月18日の会見で明らかにしました。