日本における北朝鮮関係の報道は“北朝鮮悪玉論”一色に塗りつぶされているのがあまりにも異様なので、私は北朝鮮にも生存権や自衛権があるという観点から、アメリカや日本の対応を批判してきましたが、歴史的観点から批判する人がいました。
 
朝鮮戦争の休戦協定は1953年に署名されましたが、それがそのままになっていて、ですから今も休戦状態です。これが異様な事態であることは誰もが感じているでしょうが、なぜそうなっているのかということはほとんどの人が知らないのではないでしょうか(私も知りませんでした)
 
9月13日のテレビ朝日系午前の「ワイド!スクランブル」を見ていたら、遠藤誉筑波大学名誉教授が「このような複雑な問題は出発点からひもとかないとわかりません」と言って、朝鮮戦争の休戦協定のことを解説しておられましたが、これが目からうろこの話でした。
遠藤氏は前からこのことをインターネットで発信して、著作でも書いておられたそうですが、あまり注目されていなかったようです。
 
遠藤氏の次の記事にもその話が書かれています。
 
失敗し続けるアメリカの戦略――真実から逃げているツケ
 
この記事から休戦協定に関する部分を引用しておきます。
 
 
◆アメリカが休戦協定を破っていることが根源的原因
 何度も繰り返すが、北朝鮮問題の根源的理由はアメリカが朝鮮戦争(1950625日~1953727日)の休戦協定(1953727日)を破っていることにある。
 休戦協定第60項では、休戦協定締結から3ヵ月以内に、朝鮮半島にいるすべての他国軍は撤退することとなっているが、アメリカを除くすべての軍隊が撤退したというのに、アメリカだけは撤退せずに今日まで至っている。休戦協定はアメリカが暫定的に提案したので、休戦協定の冒頭および第60項では、「終戦のための平和条約を結ぶこと」が大前提となっている。
 そのため平和条約締結と他国軍撤退のためのハイレベル政治会議を迅速に開催することが休戦協定60項には書いてある。それを実行するために195310月にジュネーブで開催された「ハイレベル政治会議招集のための予備会談」をアメリカだけがボイコット。
 しかし朝鮮戦争に参戦したのはアメリカが主導した「国連軍」である。
 朝鮮戦争を始めたのは北朝鮮で、金日成(キム・イルソン)の朝鮮半島統一の野心から始まった。だから、もちろん最初の原因を作ったのは北朝鮮であることは言うまでもない。悪いのは北朝鮮だ。その事実は動かない。
 しかし形勢不利と見て休戦を呼び掛けたのはアメリカだ。
 つまりアメリカが主導した国連軍なのである。国連加盟国のうち、アメリカ、イギリス、フランス、オランダ、カナダなど、22カ国に及ぶ。
 したがって、アメリカのボイコットは国際法違反だということで、当時の国際社会の非難の的となった。そこでやむなくアメリカは544月にジュネーブで開催されたハイレベル政治会議に出席したが、「休戦協定60項に基づく外国軍隊の撤去と平和条約締結」に関する話し合いはアメリカの反対により決裂した。
 なぜならアメリカは、休戦協定に署名しながら、同時に韓国との「米韓相互防衛条約」にも署名しているからだ。米韓相互防衛条約第二条には「いずれか一方の締約国の政治的独立又は安全が外部からの武力攻撃によって脅かされているといずれか一方の締約国が認めたときは、(中略)武力攻撃を阻止するための適当な手段を維持し発展させ、並びに協議と合意とによる適当な措置を執るものとする」となっている。つまり米韓軍事同盟を結んだことになる。
 そして米韓相互防衛条約第四条では概ね「アメリカの陸空海軍を、大韓民国の領域内及びその附近に配備する権利を大韓民国は許与し、アメリカ合衆国は、これを受諾する」となっており、さらに第六条では「この条約は、無期限に効力を有する」となっている。
 すなわち、完全に休戦協定第60項に反する条約に、アメリカはサインしているのだ。
 最初から休戦協定に違反しているのだから、「休戦協定を遵守すること」を考慮しない限り、北朝鮮問題など解決できるはずがない。
 
◆思考停止――なぜ日米はアメリカの国際法違反に目をつぶるのか
 忖度という言葉が日本では話題になった。
 主として、権力を持っている相手の意向を考慮して、それに沿うような形の選択をする行為として注目された。
 第二次世界大戦後、ほぼアメリカ一強でこんにちまで来た西側諸国や日本にとって、「アメリカに都合の悪い事実に触れてはいけない」というのが暗黙の了解で、見てみぬ振りをしてきた。それが習性となって、今では「アメリカが休戦協定違反をすることが正義」という錯覚に染まり、「そもそもアメリカが休戦協定違反をしていることさえ知らない」という思考停止状態にさえなっている。
 
 
アメリカが休戦協定違反をしている――こんな基本的なことを知らずにほとんどの日本人は北朝鮮問題を論じているのです。
 
もっとも、アメリカにも言い分はあるでしょう。米軍が半島から撤退すると半島が全部共産化されるので、それを阻止するのがアメリカの使命というわけです。
しかし、冷戦が終わったので、もうその理屈は成り立ちません。
 
今や北朝鮮を承認する国は百六十何か国もあり、ヨーロッパのほとんどの国が承認しています。
日本も、小泉首相が訪朝して署名した平壌宣言は国交正常化を目指すものでした。しかし、拉致問題があまりにも問題化したためにいまだに国交正常化ができていません。
 
今、日本とアメリカだけが北朝鮮に対して特殊な立場にいるのです。
 
 
もちろん北朝鮮は異様な独裁国家です。
しかし、撤退せず、平和条約への話し合いも拒否してきたアメリカがそうさせたという面も否定できません。
アメリカは毎年2回の大規模な米韓合同軍事演習をして北朝鮮にプレッシャーをかけ続けてきました。話し合いを拒否された北朝鮮が軍事力に頼る国家になったのはある意味必然です(北朝鮮は戦車と航空機を実質的に放棄しているので、韓国へ侵攻する能力はなく、もっぱら抑止力を強化しています)
 
アメリカは、北朝鮮には対話より圧力という態度です。
なぜアメリカはいまだに国交正常化と平和条約への話し合いを拒否するのでしょうか。
アメリカの対北朝鮮政策を問いただすことが先決と思われます。