トランプ大統領は11月初めに予定されている訪韓の際に、南北軍事境界線の板門店を視察することを検討していると報じられていましたが、結局トランプ大統領の安全を考慮して視察はしないことになりました。
トランプ大統領の訪韓は1泊2日の日程なのに、そこに板門店視察を押し込もうとしたのは、よほど板門店を見たかったのでしょう。
 
代わりにというわけではないでしょうが、トランプ大統領に先立って訪韓したマティス国防長官は1027日、韓国の宋永武国防相とともに板門店を訪問しました。
 
トランプ政権高官は板門店訪問が好きなようです。
ティラーソン国務長官は3月17日に、ペンス副大統領は4月17日に板門店を訪問しています。
 
非武装地帯をはさんで両軍がにらみ合っているという休戦状態のところは、世界で朝鮮半島にしかありません。
ですから、ここは一種の観光名所になっています。
 
私も数年前に板門店ツアーに参加したことがあります。
「なにがあっても責任を問いません」みたいな文書に署名させられ、手を振ってはいけないとか笑ってはいけないとかの注意を受けます。
軍事境界線のちょうど上に会議場があって、周囲には両軍の警備兵がいて、緊張感があります。会議場の中に入ることもできますが、向こう側のドアに近づくなと注意されます。急にドアが開いて向こう側に拉致されるかもしれないというのです。
非武装地帯は野生動物の楽園になっているということです。
 
あたりを見物していると、軍事境界線の向こうのほうに人の集団が見えます。ガイドが言うには、やはり板門店見物にきた中国人観光客だそうです。北朝鮮も板門店ツアーをやって外貨稼ぎをしているのです。彼らもこちらを見ていて、観光客の見物の対象になるのは妙な気分です。
 
トランプ政権の高官たちはどういうつもりで板門店を訪れるのでしょうか。外交的に意味がある行為とも思えません。やはり休戦状態なるものを一度見物しておきたいということでしょう。
 
朝鮮休戦協定が成立したのは1953年ですから、もう64年も休戦状態のままです。なぜこんなことになったのかというと、アメリカが朝鮮半島から撤退するという約束を破って平和条約を締結しなかったからです。このことは前に書いたことがあります。
 
知らなかった朝鮮休戦協定の話
 
ですから、いつまでも休戦状態が続いているのはアメリカが望んだことなのです。
アメリカ政府高官たちも、それが望ましい状態だから見にくるのでしょう。
 
なぜアメリカはそんなことを望むかというと、覇権主義のためというしかありません。
アメリカは世界の70以上の国と地域に約800の軍事基地を有しています。
朝鮮半島の基地は、アメリカから見て西方の最前線です。アメリカは建国以来、西へ西へと開拓を進めてきて、とうとうここまでたどり着いたのです。
 
アメリカが軍事基地を置いておくには一定の軍事的緊張が必要です。休戦状態というのは実に好都合で、そのため64年も続いてきたのでしょう。
ただ、その結果、北朝鮮の開発したICBMがアメリカ本土に届くかもしれないという事態になり、アメリカも少々あわてているというところでしょう。
 
現在、アメリカが北朝鮮を攻撃するかしないかという話になっていますが、そもそもアメリカは朝鮮半島をどうしたいのかということが問われないといけません。
平和条約を締結して朝鮮半島を平和にしたいのか、それとも軍事的緊張状態を続けたいのか、どちらかということです。
 
本来なら安倍首相がトランプ大統領に会ったときに問いただすべきですが、トランプ大統領に追随するだけの安倍首相にできるわけがありません。