小学校で2018年度から始まる道徳教育の検定教科書が出そろいましたが、すべての教科書に採用されているのが「かぼちゃのつる」という話です。
「ウサギとカメ」とか「アリとキリギリス」とかは知っていますが、「かぼちゃのつる」は聞いたことがないので調べてみたら、こんな話でした。


イメージ 1
イメージ 2
イメージ 3
イメージ 4

「第1学年道徳指導学習案」より



ウサギやカメを擬人化するのはまだわかりますが、かぼちゃのつるを擬人化したのでは、そこに感情移入するのはそうとうむずかしいのではないでしょうか。
 
話そのものも、まったくおもしろくありません。ただ教訓を引き出すためにつくられた話です。
 
で、どういう教訓が引き出されるかというと、文渓堂という教科書会社のサイトでは、次のことを勧めています。
 
 
「かぼちゃのつる」を読んで話し合う。
〇ぐんぐん伸びてきているとき、かぼちゃは心の中でどんなことを思っていたでしょう。
・どんどん伸ばすぞ。
・大きくなるぞ。
〇ミツバチやスイカ、子犬に注意されたかぼちゃはどんな気持ちだったでしょう。
・うるさいな。
・もっと伸ばしたいのに。
 
◎車のタイヤにつるを切られてしまったとき、かぼちゃはどんな気持ちだったでしょう。
・みんなの言うことを聞いていればよかったな。ごめんなさい。
・もう、わがままはやめよう。
 
 
「かぼちゃのつる」を教材とする指導法を書いたサイトはいっぱいありますが、どれも基本的にこれと同じです。
 
で、最終的には「今までの自分を振り返って、わがままな行いについて考える」というところに持っていくわけです。
 
 
これは指導法がまったく間違っています。
かぼちゃがつるを伸ばすのは当たり前のことで、かぼちゃは悪くありません。
むしろどんどん伸びていく元気なつるはよい実をつけるはずです。
子どもに考えさせるのは次のことです。
 
〇車が通る道路の近くにかぼちゃを植えた人はどういう気持ちだったでしょう。
・かぼちゃをたくさん植えて儲けるぞ。
・かぼちゃが痛い目にあってもかまわない。
 
〇つるをひいた車を運転していた人はどんな気持ちだったでしょう。
・つるをよけて運転するのはめんどうだ
・つるを切っても植えたやつが損するだけだ。
・かぼちゃが痛い目にあってもかまわない。
  
教科書に「かぼちゃのつる」を載せた人はどういう気持ちだったでしょうか。
・子どもがわがままになるのを防ぎたい。
・かぼちゃを植えた人や車を運転していた人のわがままには気づかせたくない。


道徳教育から見えてくるのは、道徳教育をするおとなのわがままです。