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本書は同じ著者矢部宏治氏の「日本はなぜ、『基地』と『原発』を止められないのか」の続編であり、また、矢部氏がプロデュースする「<戦後再発見>双書」という歴史シリーズの一冊でもあります。
このシリーズを読んでいる人と読んでいない人では、戦後日本の見方がまったく違うのではないかというほど重要なシリーズです。
 
「日本はなぜ、『戦争のできる国』になったのか」では、「基地権」と「指揮権」というふたつの概念を使って複雑な問題を解き明かしていきます。
 
沖縄の基地問題がまったく解決しないのを見て、「日本はまだ占領状態だ」と言うのは「基地権」のことを言っているわけです。
日米安保条約+日米地位協定+密約によって、アメリカは「日本中のどこにでも、必要な期間、必要なだけの軍隊をおく権利」を有していると矢部氏は言います。
事実、北方領土返還交渉において日本政府はロシアに「北方領土が返還されるとそこに米軍基地ができる可能性がある」と述べたために、プーチン大統領は返還をやめてしまいました。このことを見ただけで、アメリカが基地権を持っていて、日本が拒否できないことがわかります。
 
なお、細かい密約を決めるのは日米合同委員会という組織です。これはアメリカの軍人と日本の高級官僚によって構成されるという、まさに占領状態を示す組織となっています。
 
矢部氏の本を読んだ田原総一朗氏は「日経ビジネスオンライン」にこんなことを書いています。
 
 
 先日、僕はBS朝日の「激論!クロスファイア」で、ゲストとして本書の著者である矢部氏と石破茂元防衛大臣を招き、日米地位協定について議論をした。石破氏は、「この協定に少しでも触れたことを言おうとすると、『そんな話はしてはいけない』という空気がある」と述べた。いわば、この話はタブー視されているというわけだ。
 あるテレビ番組の取材で、外務省の元北米局長に日米合同委員会について尋ねると、「日米合同委員会については、何も知りません。そんなものがあるのかすら知りません」と答えた。
 北米局長は、同委員会の日本側の代表だ。何も知らないわけがない。しかし、何か知っていることを認めれば、日本国内で信用をなくし、誰からも相手にされなくなってしまうから言えなかったのだろう。
 
 
日米合同委員会については、外務省のホームページでその組織図が公表されていますから、元北米局長が「何も知りません」と言ったのは、あまりにも苦しい嘘です。
 
なお、「密約」といっても、多くはアメリカ側で公開された公文書を証拠としているので、説得力があります。
 
 
こうした基地権の問題はかなり知られるようになってきましたが、矢部氏はほかに指揮権の問題もあると言います。
 
指揮権の問題は朝鮮戦争と密接に関連しています。
 
朝鮮戦争において国連軍が組織されますが、これは国連憲章43条に基づかない非正規なもので、アメリカに「統一指揮権」と「国連旗の使用」が認められます。
「アメリカが指揮する国連軍」というのはおかしなものですが、ともかくアメリカは“錦の御旗”を手にしたわけです。
 
日本にいたアメリカ軍が朝鮮に出撃したあと、米軍基地を守るためにつくられたのが警察予備隊です。このときから「憲法破壊」が始まりました。
 
そして、アメリカから朝鮮半島近海に海上保安庁の掃海艇部隊を出すように要請がきます。吉田首相は「国連軍に協力するのは、日本政府の方針である」と言って、出動を許可します。
掃海艇部隊は日本近海の機雷除去を任務としていたのですが、朝鮮半島近海で敵が敷設した機雷を除去するのは戦争行為です。まだ占領下の日本とはいえ、これもまた「憲法破壊」でした。
 
なお、この掃海艇部隊は、1隻が機雷に触れて爆発、沈没し、1人の「戦死者」を出します。このことは長く秘密にされてきました。
このとき、25隻の部隊のうち、3隻が船長の判断によって戦場を離脱し日本に帰還したといいますから、そうとうなドラマがあったのでしょう。
 
このとき組織された国連軍は今も存在していて、板門店などの警備をしていますし、沖縄と横田基地にも国連軍後方司令部が置かれています。
そして、在日米軍というのは、「頭部は国連軍司令部、体は在日米軍というキメラ(複合生物)」であると矢部氏は言います。
そして、さまざまな法的トリックにより、戦時には自衛隊は米軍の指揮下に入る密約があるのだと言います。
現実に自衛隊はほとんど米軍と一体化しているので、そうなるに違いないと私も思います。

新安保法制はその具体化であったわけです。
 
 
韓国での有事指揮権はアメリカ軍(米韓連合軍)が握っていますが、文在寅大統領は韓国軍に移管させる方針で、交渉しています。
戦争になったら韓国軍よりアメリカ軍が指揮したほうがうまくいくと思いますが、少なくとも韓国では指揮権のことが議論になっています。
 
ところが、日本では指揮権のことはまったく話題にもなりません。
平和勢力は戦争のことを具体的に考えようとしない傾向がありますが、自衛隊が“参戦”するときに自衛隊の指揮権はどうなるのかということを安倍首相に問いただしてもらいたい気がします。
 
 
国連軍が一度組織されたのに二度目がないのは不思議ですし、その一度目がいまだに存在し続けているのも不思議でしたが、要はアメリカが国連をないがしろにしつつ国連軍という“錦の御旗”だけは手放したくないからだと考えると納得がいきます。
また、アメリカが決して北朝鮮と平和条約を締結せずに休戦状態を続けているわけもわかります。

憲法や安保法制について考えている人には必読の本です。