1130日、相撲協会の理事会が開かれ、貴乃花親方と八角理事長が向かい合って座っている様子がマスコミに公開されましたが、両者のにらみ合いがすごくて、「ゴッドファーザーみたい」とか、「無言のアウトレイジみたい」という声が上がりました。
相撲協会やマスコミの大半を敵に回しても屈しない貴乃花親方の精神力はたいしたものです。
 
貴乃花親方の知人が励ましのメールを送ったところ、返信に「今の状況、若い頃から慣れております」とあったそうです。
 
確かに貴乃花親方は、若いころは熱狂的な若貴ブームでマスコミに持ち上げられ、体調不良で休場が続くと一転してマスコミにバッシングされ、その落差がすごかったので、そのときにタフな精神を身につけたのでしょう。
 
安倍首相も似たところがあります。第一次政権のときは大人気で首相に就任し、政権を投げ出すや大バッシングされました。よくも悪くもそのときに鍛えられたので、今の長期政権があるのでしょう。
 
 
それにしても、貴乃花親方の態度は強硬です。相撲協会の改革を目指すなら、もっと穏健なやり方をして内部で賛同者をふやすようにしたほうがいいという意見があります。
その強硬姿勢には、貴乃花親方の幼少期からの人生の歩みが関わっているかもしれません。
 
貴乃花親方は大関貴ノ花利彰の子どもで、兄の元若乃花とともに小学生のときから相撲を始め、父親が親方であった藤島部屋(のち二子山部屋)に入門します。つまり父親が師匠になったわけです。
若貴ブームのときは、この一家は理想の家族のように喧伝されていましたが、そんなことはなかったでしょう。ブームが一転してバッシングに変わったころは、父親が貴乃花親方(当時横綱貴乃花)について「貴乃花は整体師から洗脳されている」と言って騒動になりましたし、貴乃花と若乃花も絶縁状態になり、両親も離婚しました。一家が崩壊したわけです。
 
貴乃花親方としても、父親に対して複雑な思いがあったでしょう。
息子と父親の間に確執があるというのは世間でありふれたことです。そういうことがあって息子は親離れして自立していきます。
しかし、父親が師匠であると、そうはいきません。師匠と喧嘩して部屋を辞めると、相撲が取れなくなります。
貴乃花親方は父親への複雑な思いを封印していたはずです。
 
そして今、父親への思いが相撲協会に向けられて、対立が深刻化しているのではないでしょうか。
 
こう言ったからといって、私は貴乃花親方の現在の行動を批判しているわけではありません。
親との葛藤をかかえている人間がそれを原動力として大きなことを成し遂げるというのはよくあることです。貴乃花親方には相撲協会の改革を成し遂げてほしいものです。

 
父親との葛藤ということでは、安倍首相にもあるはずです。
安倍首相が祖父の岸信介に特別な思い入れを持って政治を行っていることは、本人も公言しています。
しかし、安倍首相の父親の安倍晋太郎は自民党の有力政治家で、首相になる寸前に病にたおれ、安倍首相はそのとき父親の秘書として父親の無念を目の当たりにしました。安倍首相は政治家になったとき「父親の遺志を継ぐ」ということを公言してもいいはずですが、なぜか父親のことはほとんど語りません。
また、安倍首相の父方の祖父は安倍寛という政治家で、戦時中に東条英機の方針に反対し、大政翼賛会非推薦で国会議員に当選したという人ですが、安倍首相はやはりこの祖父のこともまったく語りません。
 
安倍首相もまた家族に対して複雑な思いを持っていることがうかがえます。
 
 
このような家族間の葛藤は誰でもかかえていることです。しかし、そのことを自分で把握していないと、感情のままに間違った方向に行ってしまう可能性があります。
貴乃花親方も安倍首相も危ういことです。