トランプ大統領がイスラエルの首都をエルサレムと認めてアメリカ大使館の移転を表明してから、パレスチナはじめ中東各国で反発が高まっています。
 
かつての十字軍の目的は聖地エルサレムの奪還でした。トランプ大統領は十字軍が果たせなかったことをやろうとしているわけです。
少なくとも聖地にアメリカ大使館を置こうという宗教的な決定であることは明らかです。
ユダヤ・キリスト教対イスラム教の対立が深刻化するのは当然です。
 
しかし、日本のマスコミはトランプ大統領の決定を報じるのに、「十字軍」や「反イスラム主義」というキーワードをまったく使いません。
 
朝日新聞はこのような解説を載せています。
 
朝日新聞
■<考論>米国内の支持基盤へアピール ジョエル・ミグダル教授(ワシントン大学〈国際関係〉)
トランプ氏は就任以降、選挙公約の達成に次々と失敗している。メキシコ国境の壁の建設もできていない。「医療保険制度改革(オバマケア)」の撤廃も進んでいない。そんな中、エルサレムの問題は、完全に一存で公約を達成できる。国内の支持者、特に(ユダヤ人のエルサレム帰還を支持する)キリスト教の保守派に示す狙いがあったと考える。
 
要するに「公約」と「支持者」のためだというわけです。
「公約」と「支持者」のためなら、トランプ大統領は民主主義的な決定をしたことになります。
しかし、「公約」は支持者にアピールするようにつくられますし、トランプ大統領の支持者の多くは「反イスラム主義」で「十字軍」意識の持ち主です。
 
この教授はトランプ大統領とアメリカ人を悪く言わないために、「反イスラム主義」と「十字軍」を隠して、代わりに「公約」と「支持者」を持ち出しているのです。
 
アメリカ人の政治学者がそのように言うのはわかりますが、驚いたことに日本のマスコミのほとんどすべてが同じ論調です。
 
 
日テレNEWS24
 エルサレムを首都と認めることは中東情勢を緊迫化させる引き金を引くことになるが、トランプ大統領はそうしたことより、「公約の実現だ」と支持者固めを優先させた。
 
NHKNEWSWEB
ワシントン支局の西河記者が指摘するポイントは:
▼トランプ大統領は「国際社会からどう見られるか」よりも「国内の支持者にどうアピールするか」を優先させたということ。
▼トランプ大統領の強い支持層は国際的な評価よりもいかにトランプ大統領が既存の政治家とは異なる取り組みを行っているかを重視する傾向にある。
 
毎日新聞
トランプ米大統領がエルサレムをイスラエルの首都と認定したことを受け、米議会からは称賛する声が相次いでいる。支持者向けの公約実現に固執するトランプ氏の特異性が強調される今回の問題だが、米政界に根強い親イスラエルの姿勢も改めて浮き彫りにしたといえそうだ。
 
TBSNEWS
今回の決定は、中東和平やアメリカの利益より、大統領が自らの政権公約を最優先に考えたいわば「トランプ政権第一主義」に基づくものといえます。背景には、「選挙中の公約を守る」姿勢を支持者に強く訴えるとともに、イスラエル寄りの姿勢を鮮明にすることで、「親イスラエル」のキリスト教右派やユダヤ系ロビー団体の支持を得る狙いがあるとみられます。
 
JPNEWS
トランプ氏の動きは親トランプを鮮明にしているイスラエル政府や、イスラエル寄りのトランプ氏支持者を意識したものとみられますが、トランプ氏がエルサレムを「イスラエルの不可分の首都」だと認めると、東エルサレムを将来のパレスチナ国家の首都と位置づけるパレスチナ自治政府をはじめとするアラブ世界からの反発は必至で、トランプ氏の娘婿でユダヤ人のクシュナー大統領上級顧問が関わる中東和平交渉にも影響を与えます。
 
 
すべて「公約」と「支持者」で説明しています。
「聖地にアメリカ大使館を置く」という宗教的行為であることがまったく説明されていません。
これではなぜ中東の緊張が激化するのかわかりませんし、トランプ氏の決定に反発するイスラム教徒のほうが悪いということにもなりかねません。
 
安倍政権は無条件でアメリカに追随していますが、日本のマスコミも同じです。

トランプ政権は「反イスラム主義」です。 
同盟国の正しい姿を知らなければ日本の安全保障も成り立ちません。