今年を振り返ってみると、トランプ政権に振り回された一年だったなあと思います。
 
北朝鮮問題にしても、北の核が脅威だというよりも、トランプ政権が武力行使をしそうなことのほうがよほど脅威でした。
パリ協定離脱とかイスラエルのエルサレム首都認定とか、トランプ政権は確実に世界を悪くしています。
 
すべてのもとは、トランプ大統領が「アメリカファースト」を掲げて世界に出てきたとき、誰もそれをたしなめなかったことです。
もし子どもが「自分第一だ」と言ったら、親や教師は「みんなが自分第一だと言ったらどうなると思う?」と言ってたしなめるはずです。
利己主義はよくないというのは倫理の基本です。
 
安倍首相が「じゃあ私はジャパンファーストで行く」と言うのもひとつの手です。これもトランプ大統領をたしなめることになります。
しかし、世界の首脳でそういうことを言う人はいなかったと思います。
 
もっとも、マクロン大統領が「トランプ大統領がアメリカファーストなら、われわれはフランスファーストだ」と言ったとしても、トランプ大統領はマクロン大統領を罵倒して終わりでしょう。
トランプ大統領は、アメリカは特別な国で、ほかの国とは比べものにならないと思っているに違いありません。
 
特別な国というのは、要するに「神の国」ということです。もともとアメリカはきわめて宗教的な国ですが、トランプ大統領の支持層はとくに宗教的です。
たとえば、最近アメリカではクリスマスに「メリークリスマス」ではなく「ハッピーホリデー」という言葉を使う傾向がありましたが、トランプ大統領は選挙中から「当選したらメリークリスマスを使う」と約束していて、ニュースによると、最近約束通り「メリークリスマス」という言葉を連発しているそうです。
 
それはアメリカの国内問題ですが、エルサレムをイスラエルの首都と認定してアメリカ大使館を移転するとなると、国際問題です。
日本のマスコミは、これはアメリカ国内の支持者向けの政策だと解説していますが、だったら国連総会に首都認定の撤回を求める決議案が出されたとき、法的拘束力のない決議案ですから、無視していればいいのです。ところが、トランプ政権は決議案に賛成した国には援助を削減すると脅しをかけました。
エルサレムはキリスト教にとっても聖地です。エルサレムはユダヤ・キリスト教のものだと世界に(とくにイスラム教徒に)認めさせたいのでしょう。
 
ともかく、アメリカは「神の国」で、ほかの国と違うのだから、アメリカファーストを主張するのは当然だというのがトランプ大統領の考えでしょう。
 
主権国家はどの国も国際法に従うべきで、これは法の支配の精神からも当然です。
「法の支配」の反対語は「人の支配」で、要するに王様が支配している状態です。
アメリカファーストの主張が通用する世界は、アメリカが王様としてわがままにふるまっている世界です。
 
前からアメリカは王様のようにふるまってきましたが、トランプ大統領が登場して、それが露骨になりました。
アメリカは相対的に世界における地位を下げ続けてきて、これが最後のあがきというところです。
誰かが「王様は裸だ」と叫んでもいいときです。