安倍首相は年頭記者会見で「憲法改正に向けた国民的な議論を一層深めていく」と語り、マスコミ各社は「安倍首相、改憲に意欲」といった報道をしました。
憲法施行から71年たって、まだ「議論を一層深めていく」のですから、まるで底なし沼に沈んでいくようです。
 
そもそも安倍首相は昨年の憲法記念日に、憲法九条の1項と2項は残し、自衛隊を明記する3項を追加するという案を示し、年内にまとめると明言しました。しかし、まだまとまっていません。
この記者会見の質疑応答では、その加憲論について、「停滞していた議論の活性化を図るために一石を投じました」「具体的な検討は党に全てお任せしたいと考えています」と言っただけです。
「年内にまとめる」と言ったのは嘘ですし、今はもうまとめるつもりもないようです。
 
2項に「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」とあるのに、3項に「自衛隊を保持する」と明記したら、もろに矛盾しますから、もともとありえない案でした。
 
改憲派は改憲に向けて活発に動きますが、改憲案が具体化すると、とたんにやる気をなくすようです。
自民党は2012年に改憲草案をつくりましたが、今は反故になっています。読売新聞も産経新聞も力を入れた改憲案を発表していますが、ほとんど無視されています。
改憲派は「理想の憲法」という青い鳥を追い続けているだけです。
私はこれを「改憲するする詐欺」と言ったことがあります。
 
 
ところが、マスコミや護憲派はつねに過剰反応します。
年頭記者会見で安倍首相は、北朝鮮問題、明治百五十年、一億総活躍社会、アベノミクス、働き方改革、教育への投資などを語りましたが、改憲については「この国の形、理想の姿を示すものは憲法であります。戌年の今年こそ、新しい時代への希望を生み出すような憲法のあるべき姿を国民にしっかりと提示し、憲法改正に向けた国民的な議論を一層深めていく。自由民主党総裁として、私はそのような1年にしたいと考えております」と言っただけです。
 
平成3014
安倍内閣総理大臣年頭記者会見
 
具体的なことを言っていませんし、あまりやる気もなさそうです。
しかし、記者の最初の質問は改憲についてですし、記事は「安倍首相、改憲に意欲」みたいになります。
 
これは五十五年体制の惰性です。
五十五年体制では、社会党、共産党はみずからを護憲勢力と規定し、改憲への危機感をあおり、改憲勢力に国会の三分の二を取らせてはいけないということを有権者にアピールしました。
国民の多数は改憲反対ですから、このアピールがある程度有効でしたし、マスコミもそれに乗っかっていました。
いまだにそれが続いているのではないでしょうか。
 
具体的な改憲案もないのに改憲論議をするのは時間のむだです。
護憲派もマスコミも、改憲派が具体的な改憲案を出すのを待つべきです。
 
それに、解釈改憲で安保法制をつくったので、すでに改憲する意味は失われました。
むしろこれからの争点は、安保法制廃止でしょう。
安倍首相は「日米同盟の深化」をつねに言っていて、これも底なし沼に沈んでいくようです。
あまり「日米同盟の深化」をすると日本の独立性が損なわれます。これからは「日米の適正な距離感」を追求するときです。