平昌冬季五輪で韓国と北朝鮮は開会式で統一旗を掲げて合同入場し、女子アイスホッケーで合同チームをつくるなどが決まりましたが、韓国内の世論は意外ときびしい反応です。
かつて2000年のシドニー、2004年のアテネの夏季五輪で両国が統一旗で合同入場をしたときは、韓国世論はもっと歓迎していた気がします。
当時の北朝鮮は韓国からしたら「できの悪い弟」みたいなものでしたが、今の北朝鮮は核保有もして、金正恩という若くて元気のいい指導者もいるので、「ライバル」になってきたのかもしれません。
 
いずれ韓国と北朝鮮が統一される日がきたら、そのときの苦労は合同チームをつくることの比ではありません。韓国にその覚悟はあるのでしょうか。
 
もっとも最近、南北朝鮮の統一ということは少しも語られません。
経済制裁で北朝鮮に圧力を加えるということばかり語られますが、北朝鮮に核放棄させるには、そのあとのビジョンを示す必要があります。
 
それができるのはアメリカだけです。
今の休戦状態をどこまでも続けるのか、平和条約を締結して休戦状態を終わらせるのか、韓国と北朝鮮の話し合いで南北統一をするのかとか、さまざまな選択肢がありますし、それとは別に、軍事力で北の体制崩壊を目指すというのもあります。
しかし、こういう根本的なことは誰も語りません。
 
トランプ政権は昨年12月に「国家安全保障戦略」をまとめています。これはアメリカのいちばん根本的な戦略です。
 
在日米国大使館のホームページにその概略が発表されています。
 

国家安全保障戦略ファクトシート

 
この戦略は「4本柱」から成り立っています。
 

I.国土と国民、米国の生活様式を守る

II.米国の繁栄を促進する

III.力による平和を維持する

IV.米国の影響力を向上する

 
まさにアメリカファーストになっていますが、問題は「III. 力による平和を維持する」のところです。
これはこのように説明されています。
 
・我々は米国の軍事力を再建し、最強の軍隊を堅持する。
・米国は戦略的競争という新たな時代において、外交、情報、軍事、経済といった分野で国家として持つあらゆる手段を用い、国益を守る。
・米国は宇宙やサイバーを含む多くの分野で能力を強化し、これまで軽視されてきた能力も再生させる。
・米国の同盟国とパートナー国は、米国の力を拡大させ共通の利害を守る。米国はこうした国々が、共通の脅威に対応するためにより大きな責任を負うことを期待する。
・我々は世界の主要地域である、インド太平洋、ヨーロッパ、および中東において、勢力の均衡が米国を利するものになるよう努める。
 
「平和」という言葉も概念もありません。
「公正」も「法の支配」もありません。
同盟国ですら下僕扱いです。
 
ここまで露骨にトランプ政権がアメリカファーストを公言しているのに、安倍政権や親米右翼はいまだに対米追従を続けています。
いや、この「国家安全保障戦略」自体あまり報道されていない気がします。日本が頼りにする同盟国がこんなお粗末な国であることをマスコミも隠したいのでしょうか。
 
トランプ政権がこういう戦略なら、北朝鮮と話し合いをして核放棄をさせるのはまったく不可能に思えます。
金正恩氏がまともな判断力を持っていたら、トランプ政権に対するには核抑止力が絶対に必要だと思うでしょう。
 
この「国家安全保障戦略」を読むと、トランプ政権では北朝鮮の核問題を解決することは不可能だし、世界を平和にすることも不可能なことがよくわかります。