韓国の特使と金正恩委員長が会談し、その合意内容がかなりのサプライズでした。
中でも「北朝鮮側は、朝鮮半島非核化の意志を明確にし、北朝鮮に対する軍事的脅威が解消されて体制の安全が保障されれば、核を保有する理由がないという点を明確にした」ということについて、北朝鮮はどこまで本気かということが議論されています。
 
しかし、朝鮮半島の問題に関しては、アメリカが最強のプレーヤーとしてゲームを支配しています。ですから、北朝鮮の考えよりアメリカの考えのほうが重要です。
 
北朝鮮の「体制の安全が保障されれば、核を保有する理由がない」というのは嘘ではないでしょう。
問題は、アメリカのほうに北朝鮮の体制の安全を保障する意志があるかどうかですし、さらにはそれを北朝鮮にわからせることができるかどうかです。
 
まずアメリカが在韓米軍をすべて撤収することは最低限必要ですが、まだ在日米軍もあり、空母や戦略爆撃機やミサイルもあるので、北朝鮮は安全が保障されたとはとても思えないでしょう。
ですから、アメリカと北朝鮮の間に平和条約か不可侵条約みたいなものを締結する必要がありますが、それには北朝鮮が核放棄をすることが前提になります。北朝鮮はアメリカの目の前で核兵器を処分することになりますが、ほかに隠し持っているのではないかという疑いがありますから、アメリカは北朝鮮のあらゆる場所を査察する権利を主張します。
これはフセイン体制のイラクが大量破壊兵器保有の疑いをかけられ、アメリカ(名目は国連査察団)がさんざん査察した挙句、イラクは査察を拒否したから大量破壊兵器を保有していると主張して戦争に踏み切った状況を想起させます。
 
リビアのカダフィ大佐は、アメリカなどの圧力で核開発を断念しましたが、その見返りが得られずに体制崩壊に追い込まれたために後悔したといわれます。
 
そういうことを考えると、アメリカは北朝鮮にとって信頼できない相手なので、 話し合いの成否は、アメリカがいかに北朝鮮に誠意を示せるかにかかっています(アメリカサイドから見ていると、こういう発想は出てきません。物事を公平に見る視点が必要です)
 
しかし、アメリカはあくまで自己中心的なので、きっとうまくいかないでしょう。
 
 
トランプ大統領は「韓国と北朝鮮の声明は非常に前向きだった。世界にとって良いことだろう」「北朝鮮は誠実だと思うし、そう願う」などと述べて北朝鮮の態度を歓迎していますが、アメリカ政府の専門スタッフはまったく別の考えです。
 
 
北朝鮮が核放棄の兆候なし
米情報長官「私は懐疑的」
【ワシントン共同】コーツ米国家情報長官は6日、上院軍事委員会の公聴会で証言し、非核化に向けた北朝鮮との対話進展の可能性について「非常に懐疑的だ」と述べ、「北朝鮮が核放棄に応じることを示す兆候はない」と指摘した。
 コーツ氏は歴代米政権の交渉努力は北朝鮮が核開発をさらに進展させるための時間稼ぎに使われただけで「全て失敗に終わった」と楽観論にくぎを刺した。
 アシュレー国防情報局長も、北朝鮮に「核・ミサイル開発を停止する意向はない」と断言した。
 コーツ氏らは北朝鮮が対米攻撃能力の獲得を急いでいる現状に変化はないと述べた。
 
 
今回の韓国特使と金正恩委員長の会談に続いて、4月には南北首脳会談が行われる予定ですが、これこそが「対話のための対話」です。
しかし、対話を続けていれば戦争は起こらない理屈ですから、ずっと「対話のための対話」を続けていればいいのです。
 
今、東アジアが直面しているのは、「核放棄のための戦争」か「核保有のある平和」かの二者択一です。