森友関係の公文書改ざんについて、麻生財務相は「理財局の一部の職員」がやったと何度も繰り返しました。
これは「トカゲのしっぽ切り」だと批判されて、麻生財務相が辞任するべきだという声が高まっています。
しかし、麻生財務相が「トカゲの頭」かというと、そうではありません。「トカゲの頭」はやはり安倍首相です。
 
安倍首相は「私や妻が関係していれば間違いなく総理大臣も国会議員も辞める」と国会で言ったのですから、改ざん前の文書に昭恵夫人の関与が書かれているので、辞めるはずだ――と思ったのですが、ことはそう単純ではありませんでした。
森友問題はひじょうに複雑で、1年以上も続いているので、全貌が見えなくなっていました。
 
そもそもの始まりは、昨年2月9日、朝日新聞が、森友学園への国有地払下げの価格が例外的に非公表になっていて、朝日新聞の調べでは実質1割程度で、また森友学園と日本会議とのつながりや昭恵夫人が名誉校長を務めていることなどを報じたことです。
これが国会で取り上げられましたが、財務省は適正価格だと主張していました。
この段階では、それほど注目される事案ではなかったのですが、安倍首相が突然「私や妻が関係していれば総理大臣も国会議員も辞める」と言ったことで、俄然世の中の注目を浴びました。また、野党はこれで首相のクビが取れると思って勢いづきました。
 
安倍首相の発言は、国有地の払下げが不正であればという前提です。もし不正でなければ、いくら関係していても問題ない理屈です。
 
とはいえ、タダ同然の価格や、価格交渉の過程や、10年分割払いの特例とかを見ると、不正としか考えられません。
 
ただ、それから森友学園の幼稚園で教育勅語を暗唱させていたり、「安倍首相がんばれ」と唱和させていたりという教育内容に注目が集まりました。
また、籠池夫妻もキャラが立っていて、昭恵夫人との関係も、寄付金100万円の問題などもあって、注目されました。
そして、籠池夫妻が詐欺容疑で逮捕され、さらに今回、財務省の公文書改ざんが発覚して大騒ぎになっています。
そのため、どこが頭でどこがしっぽかわからなくなっているのではないでしょうか。
 
本体は国有地の不正払下げ問題です。
これが犯罪として立件されないと、安倍首相のクビは取れません。
 
これについては市民団体が「近畿財務局が土地を不当に安く売って国に損害を与えた」と背任容疑で告発し、大阪地検特捜部が4月5日に告発を受理しました(ほかに証拠隠滅などの告発も受理)
ですから、捜査は行われているのですが、まだ結果が出ていません。
籠池夫妻は早々と逮捕されているので、違いが際立ちます。
 
大阪地検特捜部が財務省に強制捜査に入ったり、財務省の職員を逮捕したりしてもいいはずです。
ただ、それをすれば安倍政権はそれだけで崩壊してもおかしくありません。
大阪地検はそれが怖くてできないのではないでしょうか。
まさに“忖度捜査”です。
 
ですから、ここは世論が検察の尻をたたかなければなりません。
検察は世論の動向に左右されるものです。
1992年、東京佐川急便事件のとき東京地検特捜部は、自民党副総裁だった金丸信に略式起訴で罰金20万円という軽い処分をしたため、世論が激怒しました。そうすると、特捜部はむりやり脱税容疑で金丸信を逮捕したのです(結果、それによって不正蓄財が発見されました)
 
公文書改ざんは大きな問題ですが、これはあくまで犯罪の証拠隠滅のために行われたものです。
今は証拠隠滅ばかり問題にして、本体の犯罪を見逃すような展開になっています。
 
みんなで「大阪地検特捜部はなにをしているのだ」という声を上げて、特捜部を動かさなければ、森友問題はいつまでたっても終わりません。