ないとされていたイラク派遣自衛隊の日報が発見され、南スーダン日報問題に続いて、国民に嘘をついていたのかと批判されています。
しかし、シビリアンコントロールができていないという批判は的外れです。むしろシビリアンコントロールが利きすぎているというべきです。
 
イラクも南スーダンも、政権が危険な地域を危険でないと偽って派遣したので、日報に「戦闘」などと書いてあると政権の立場が悪くなります。自衛隊の一部か全部かわかりませんが、政権の意向を忖度して隠蔽したと思われます。
イラクや南スーダンへの自衛隊派遣は、自衛隊にとっても特別なことですから、その日報がどこかにまぎれてしまうなんていうことがあるはずありません。
そういう意味では、森友問題で交渉記録を全部廃棄したというのと同じです。
もしかすると、出てきた日報も改ざんされているかもしれません。
 
このように官僚が過剰に忖度するようになったのは、2014年に内閣人事局が設立され、官僚の幹部人事を政権が完全に支配するようになったためだといわれます。
 
もっとも、それに対して官僚主導よりも政治主導のほうがいいという反論もあります。
確かに官僚主導か政治主導かという二者択一なら政治主導のほうがいいはずです。政治家は選挙の洗礼を受けるからです。
 
しかし、いずれにしても、人事をする者は「公平」という原則を持たなければなりません。
ところが、自民党という政党は「公平」の原則からもっとも遠いところにある政党です。
地元への利益誘導、特定業種への補助金や税金控除、財界のための労働政策というのが自民党の政治です。先の名護市長選挙では与党寄りの候補が当選すると、とたんに米軍再編交付金の再開が表明されました。
「公平」とは真逆の「情実」の政治で、コネのある者、付け届けをした者のために政治が行われます。
 
自民党は昔から派閥の力が強い政党でした。派閥の論理も「公平」ではなく「情実」です。親分に忠誠を尽くす子分が出世します。派閥の親分が「カラスは白い」と言ったら、子分も「カラスは白い」と言わなければなりません。
これは封建時代に君主に臣下が忠誠を尽くしたのと同じです(社会党や共産党はまだ近代的なところがありました)
 
小選挙区制になって、自民党も党執行部の力が強くなり、派閥は衰退したといわれますが、派閥の論理はそのまま生き残って、自民党全体が巨大なひとつの派閥となったというのが実情です。
「安倍一強」とは、安倍総裁が「カラスは白い」と言ったら党の全員が「カラスは白い」という体制のことです。
 
そして、その政党が内閣人事局をつくって官僚を支配するようになったのです。

自民党式人事評価では、政権に批判的な者は干されます。
たとえば昨年6月、韓国・釜山の森本康敬総領事が更迭されましたが、その理由は、私的な会食の際に政府批判をしたからだということです。
 
そのため官僚は政権に過剰な忖度をするようになり、たとえばイラクや南スーダンの日報をそのまま公開したら自分は左遷されるのではないかと恐れた者がいたのでしょう。
 
 
たとえ上司と意見が違っていても実力のある部下を公平に評価する上司がいると、その組織は風通しがよくなり、みんなのびのびと働けるようになります。
しかし、自民党式人事評価では、官僚は国民のために働くのではなく、安倍政権に忠誠を示すために働くようになります。
いつのまにか日本は近代国家の仮面をかぶった封建主義国家になっていたのです。
これが安倍一強体制のいちばんの害悪ではないでしょうか。