6月9日に新幹線車内で1人を殺害、2人にケガを負わせた小島一朗容疑者(22歳)は「誰でもよかった」と供述しているそうです。
こういう犯罪は防ぎようがありません。新幹線にも持ち物検査を導入すべきだという議論が起きていますが、小島容疑者は新幹線にこだわったわけではないので、的外れの反応です(社会不安を起こすことが目的のテロリストは新幹線を標的にする可能性があるので、その対策としてなら意味があります)。
対策があるとすれば、「誰でもよかった」という動機はどうして生じたかを解明することです。
小島容疑者は中学2年生のときに家を出て自立支援施設に入り、その後は祖母の家にいました。どうして親といっしょに暮さなかったのでしょうか。
母親が報道機関に発表したコメントにはこんな記述があります。
「一朗は小さい頃から発達障害があり大変育てにくい子でしたが、私なりに愛情をかけて育ててきました」
「中学生の時、不登校になり、家庭内での生活が乱れ、将来を心配して定時制高校に入れること、また自立支援施設に入れることを本人に提案したら、素直に応じてくれ」
「昔から岡崎のおばあちゃんに懐いており、一緒に暮らしたいと本人も希望していたので、岡崎へ行かせました。私の提案で岡崎のおばあちゃんと養子縁組をし、居場所を確保しました」
母親は本人のためにやったように書いていますが、ほとんど子どもを捨てたのに近いのではないでしょうか。
父親はマスコミの前に出て、いろいろなことをしゃべっています。
「(小島容疑者が14歳の時)しつけに関しては、何も私はしなくなりました」
また、(愛知県)一宮市に住む容疑者の父親は、「水筒が欲しいというので、中古の水筒を与えたら、「なんで中古の水筒なんだ」と言って刃物を持って私の方へやってきた。
取り押さえて、警察が来るのを待った。
思ったことはまげない」などと話していました。
自立支援施設代表は小島容疑者について、「うちにいたころは非常に真面目で、何か問題をおこすとか一切なかった」と語っています。
父親に対して刃物を持ち出したのは、どちらに問題があったのでしょうか。
小島容疑者が家を出たのは14歳のときです。まだ一人で生きていけない年齢ですから、親と対等ではありません。なにか問題があったら、すべて親に原因があるといってもいいぐらいです。
ところが、マスコミの報道は、まるで親子が対等であるかのような書き方です。
「父親とは中学時代から折り合いが悪く、愛知県岡崎市の祖母に引き取られ」
「親族によると、小島容疑者は小学校卒業まで、同県一宮市で両親と同居。ただ、中学生の頃から両親らと不仲になり」
「実家の両親とトラブルがあったため、2016年4月ごろから愛知県岡崎市の伯父方で暮らすように」
「父親とは折り合いが悪く」「両親らと不仲になり」「両親とトラブルがあった」という表現は、すべて対等の関係におけるものです。中学生の子どもと親のものとは思えません。
男と女の関係でセクハラやレイプがあったとき、「二人は折り合いが悪く」と書くみたいなものです。
マスコミはセクハラについては認識を深めてきているようでが、幼児虐待についてはいまだに隠蔽しています。
おりから東京目黒区で両親から虐待されて死亡した船戸結愛ちゃん(5歳)がノートに「もうおねがいゆるして」などと書いていたことが人々の涙をさそっていますが、結愛ちゃんの父親は「しつけ」と称して虐待をしていました。小島容疑者の父親が「しつけ」という言葉を使っているのも同じようなものだったのではないでしょうか。
結愛ちゃんが死ななくて成人していたら、そして結愛ちゃんが男の子だったら、いつたいどんな男になるだろうと想像してみたら、小島容疑者のことも理解できるのではないでしょうか。
あらゆる出来事には原因があります。
小島容疑者が子どものときに父親に刃物を持ち出したのにも原因があります。
新幹線の中で刃物をふるったのにも原因があります。
それを知ることが対策の第一歩です。
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