このところ内閣支持率が上昇しています。検察が森友学園関係の国有地払下げや公文書改ざんを不起訴にしたからでしょう。
安倍首相は「国有地払下げに私や妻が関係していたら首相も議員も辞める」と言いましたが、これは国有地払下げが不正であることを前提としていたはずです。
検察審査会の決定でまだ起訴される可能性はありますが、とりあえず不正の程度は軽いということになって、国民も許す気分になったのでしょう。
安倍政権は検察と警察をコントロールしているのが圧倒的強みです。
 
こうなると、野党も攻め方を考えなければなりません。
「安倍首相は嘘をついた」と批判しても、嘘をつくこと自体は犯罪ではないので、無視されれば終わりです。
ですから、国民を動かして世論の力で安倍政権を追い詰めるように持っていかなければなりません。
その点で参考になるのはトランプ大統領です。トランプ大統領は人を言葉で攻撃する天才です。
 
 
ホワイトハウスのサンダース報道官はバージニア州レキシントンのレストランに食事に行ったところ、店の経営者にトランプ大統領のもとで働いていることを理由に入店を断られるという出来事がありました。これに対してトランプ大統領はツイッターで「サンダース報道官のような立派な人への接客を拒否するよりも、汚い扉や窓をきれいにすることに力を入れるべきだ。外観が汚ければ中身も汚い」と店を名指しで攻撃しました。
普通だと「サンダース報道官の入店を拒否するとはけしからん」とか「店は客を平等に扱うべきだ」とか言って批判するものです。
しかし、トランプ大統領の発想は違います。店にとっていちばん打撃になるのはなにかと考えて(おそらく店の写真を見て)、「店が汚い」という攻撃をしたのです。
「入店を拒否するのはけしからん」という批判では、店側も覚悟しているのでこたえないでしょう。「店が汚い」というのは、店側にしても予想していない方向からのパンチです。それに、「店が汚い」というのは店のイメージダウンになって経営にも響くかもしれません。
 
また、ハーレー・ダビッドソンがEUの関税を回避するために生産拠点を米国外に移すと発表しましたが、これに対してトランプ大統領はやはりツイッターで「ハーレー・ダビッドソンが全ての企業の中で白旗を振った最初の企業になろうとは驚きだ」「がまんしろ!」と批判しました。
「アメリカ国民への裏切りだ」という批判はありがちですが、「白旗を振った」というのは戦争中の裏切りですから、グレードが上です。
また、ハーレー側としては工場移転の経済合理性を主張したいはずですが、「がまんしろ!」という道徳的な批判に反論するのは困難です。
 
トランプ大統領は、普通の人の発想を上回る言葉を繰り出して人を攻撃する特別な才能を持っていて、この能力はインターネットの時代に絶大な効果を発揮します。
 
 
日本では「法の支配」が頼りにならなくなっているので、こうした言葉の力で国民世論を喚起するしかありません。
ところが、野党はこの点でも安倍首相に押されています。たとえば、安倍首相は「嘘つき」と言われると決まってキレるので、野党は「嘘つき」という言葉を封印しています。
しかし、嘘つきでない人間はいないので、「嘘つきを嘘つきと言ってどこが悪い」と開き直って攻撃すればいいのです。
「安倍首相は嘘をついた」と「安倍首相は嘘つきだ」とでは印象がぜんぜん違います。
 
また、「行政をゆがめた」ということもよく言われますが、表現が抽象的です。
安倍首相は佐川宣寿氏や柳瀬唯夫氏に嘘をつかせ、財務省職員に公文書改ざんをさせたのですから、「部下を犠牲にした」と言うべきです。
「部下を犠牲にする上司」というのは、犯罪でなくても世の中でもっとも嫌われるもののひとつです。
 
とはいえ、森友加計問題は「犯罪」にならなくなった時点で重要度が低下しました。納得いかなくても、検察が安倍政権の支配下にある現状では受け入れるしかありません。
野党もこれからは、外交や経済問題で安倍政権を追及する方向にシフトしていくべきではないでしょうか。