上川陽子法相はオウム真理教の7人の死刑執行を発表するとき、国民の理解を得るために「ポア」という言葉を使うべきでした。
「本日、オウム真理教の7人をポアしました。目には目を、歯には歯を、ポアにはポアをです」
ふざけるなという声もありそうですが、上川法相も松本智津夫元死刑囚も同じ人間で、やったことも同じです。
さらに、もうひとつ同じことがあります。
 
オウム真理教はなぜあのような恐ろしい犯罪をしたのかということについていろいろと議論されますが、私の答えは単純です。オウムは疑似国家だったからです。
 
主権国家はどんな犯罪をしても罰せられません。
北朝鮮は拉致事件をみずから認めましたが、罰せられることはありません。アメリカは暗殺やらクーデターやら誤爆による殺人などをいっぱいやっています。ジェームズ・ボンドが殺しのライセンスを持っている設定になっていることを誰も怪しみません。
日本の戦争指導者は東京裁判で裁かれましたが、法的には疑義があります。
 
オウムは1990年の総選挙で惨敗してから国家転覆計画を実行に移し、鉄工所を乗っ取って自動小銃の製造を試みたり、サリンなどの化学兵器、生物兵器の製造をするようになります。1994年には省庁制を始め、科学技術省、自治省、厚生省、諜報省などをつくって疑似国家になります。
殺人を肯定する教義はその前からあったらしく、坂本弁護士一家殺人事件は1989年です。しかし、一家を拉致して山中で殺害するというのはヤクザでもやりそうな犯罪です。
地下鉄サリン事件はまったく違います。これは疑似国家としての行為で、日本国に対する戦争といってもいいでしょう。このスケールの大きさに日本国民はびっくりして、オウム事件は特別な事件になりました。
 
自分を国家と見なすことで、倫理のタガが外れてしまったのです。
 
オウムの教義はヨガや仏教からきているようですが、それだけなら普通の犯罪をする程度です。
しかし、教団が疑似国家となると、まったく違ってきます。
 
現在、オウムの後継団体にきびしい監視の目が向けられていますが、麻原を神格化する程度ではたいした危険はないでしょう。団体が疑似国家になるか否かという点に注意すればいいのではないでしょうか。
 
オウム事件に関しては、高学歴者がなぜあんな事件を起こしたのかということがよく言われます。
しかし、ウィキペディアによるとオウムの公称信徒数は1990年で5000人だということですから、ある程度高学歴者がいるのは当然です。疑似国家を運営するには高学歴者が適任なので抜擢されたのでしょう。
彼らにしてみれば、ヨガや仏教の修行をしようとしていたら、いつの間にか国家の運営をさせられ、犯罪をさせられていたというところです。

オウム事件は、疑似国家の疑似戦争だと理解すると、戦争指導者は松本元死刑囚だけです。ほかの人間は戦時下に国を裏切るわけにはいきません(国家の論理では)。それで死刑になるのは気の毒な気もします。
 
佐川宣寿氏も官僚になり、国家の運営をしていたら、虚偽答弁や公文書改ざんをさせられていました。
上川法相も国家運営の中枢に入ったために、7人もまとめてボアする執行命令をさせられました。
 
上川法相もオウムの死刑囚も、国家の運営に深く関わったために人をポアすることになった点では同じです。
 
もちろん疑似国家と本物の国家の違いはありますが、それだけの違いともいえます。