トランプ大統領が就任して1年7か月、世界は加速度的に混迷を深めています。
 
米朝合意は成立したものの、非核化がどうなるのかもわからないし、米朝合意がいつ破棄されるかもわかりません。
これは、北朝鮮がどう出るかわからないというよりも、主にトランプ大統領がどう出るかがわからないということによります。
 
トランプ大統領の保護貿易主義が世界各国と摩擦を起こし、とりわけ米中間の貿易戦争が激化しています。
最初のうちは、米中間の争いがこれからどうなるかという予測記事がけっこうありましたが、最近そういうものは見ません。誰も予測がつかなくなったからでしょう。
 
トランプ大統領はトルコとの対立もどんどん激化させていますが、同盟国であるトルコとこれほど対立するとは、誰も予想しなかったでしょう。
 
私も最初のうちはトランプ氏の心理を推測し、行動を予想していましたが、最近はやめています。
 
そうした中、8月22日に安倍首相とトランプ大統領との電話会談が行われました。朝鮮半島の非核化と拉致問題について話し合ったということで、安倍首相は例によって「朝鮮半島の完全な非核化を実現するとの方針において、日米は完全に一致をしている」という得意のセリフを言いました。
今、トランプ大統領と一致していることを自慢するのは、世界中で安倍首相ぐらいのものでしょう。
 
トランプ大統領の行動がなぜ予測しにくいかは、次のニュースからもある程度理解できます。
 
 
トランプ氏、南アを刺激 人種隔離政策の傷痕に踏み込む
トランプ米大統領が南アフリカの土地政策にツイッターで「介入」し、波紋を呼んでいる。南ア政府が少数派の白人が所有する農地を収用できるようにする方針だと懸念を示し、ポンペオ国務長官に調査を命じたことを明らかにした。アパルトヘイト(人種隔離)政策の傷痕に踏み込む発言に、南ア政府は強く反発している。
 トランプ氏は22日夜、「ポンペオ国務長官に、南アの土地農地の収用問題と大規模な農家殺害について詳しく調査するよう頼んだ」とツイート。これに対し、南アフリカ政府は23日、公式ツイッターで「かつての植民地時代を思い起こさせる狭い見方を拒否する」と反発した。
 南アフリカでは1991年、少数派の白人が大半の土地を所有する結果を生んだアパルトヘイト関連法が廃止されたが、土地所有の現状は大きく変わっていない。ラマポーザ大統領は「不平等を是正する」とし、白人所有の土地を補償金なしで収用し黒人に再配分する方針を提示。7月には、これを可能にするための憲法改正を進めるとした。
 トランプ氏のツイートの直前、保守系の米FOXテレビがこの動きを取り上げ「人種差別的な土地没収だ」と報道。「トランプ政権はこの人権の悲劇にどう対処すべきか」と、経済制裁などの可能性に言及した。トランプ氏はこの報道に反応したとみられる。
(後略)
 
 
南アフリカは長年の白人支配によって今でも「白人の人口比率は全体の8%に過ぎないが、現在も農地の72%を白人農家が所有している」とのことです。
 
南アフリカの政策は戦後日本の農地解放のようなものだと思えば、アメリカが文句を言うのはおかしなものです。
それに、トランプ大統領が文句を言ったのは、明らかに黒人対白人の問題で白人に肩入れするためであり、黒人への差別感情からです。
 
そして、これはなによりも南アフリカに対する内政干渉です。
今の時点では国務長官に調査を命じただけですが、南アフリカの政策に言及しただけで立派に内政干渉になります。
 
しかも、そのきっかけがFOXテレビの報道であるようです。
トランプ大統領はひとつのテレビ番組を見ただけで行動を起こすのです。
 
行動のきっかけはテレビ番組で、動機は人種差別――トランプ大統領の行動が予測しにくいのは当然です。
 
アメリカでは「トランプが次になにをするのかわからない」「トランプがいつか核のボタンを押すのではないかと心配」という不安から精神を病む人がふえていて、「トランプ不安障害(TAD=Trump Anxiety Disorder)」という名前がついているそうです。
 
 
不安障害から逃れるひとつの手は、私みたいにトランプ氏の行動を予測するのをやめることですが、安倍首相のようにつねに「アメリカと完全に一致」と考える(思考放棄する)ことも、もうひとつの手かもしれません。