インターネットの普及とともにヘイトスピーチ、フェイクニュース、デマ、排外主義、反知性主義、弱者たたき、不謹慎狩りなどが横行し、言論のレベルは明らかに低下しました。
人間は基本的に「気持ちがよくなる情報」を求めます。明らかな嘘の情報は拒否しますが、真実か嘘かわかりにくいグレーゾーンでは、「不都合な真実」よりも「好都合な嘘」や「気持ちがよくなる嘘」を選択します。
そして、「気持ちがよくなる嘘」つまりフェイクニュースを意図的に提供する人も出てきます。
そうした結果、インターネットの言論はフェイクまみれの低レベルなものになるのです。
 
もちろんこれはインターネットの中だけにとどまりません。こうした言論がトランプ政権や安倍政権を生み出しています。
 
人間が「気持ちよくなる情報」を求めるのは生れ持った性質によるので、その克服は容易なことではありませんが、最近のネットの議論を見ていると、解決の方向性が見えてきました。
 
 
杉田水脈議員の「LGBTは生産性がない」に始まった議論は、「新潮45」が『そんなにおかしいか「杉田水脈」論文』という特集をしてさらに激化しましたが、議論の方向性は、杉田議員やその擁護者の主張を否定する方向で一致しています。
杉田議員の擁護者は、基本的に同性愛を趣味や嗜好(指向)ととらえていますが、今は同性愛者の科学的研究が進んで、同性愛は脳や遺伝子のあり方と関係していることがわかってきて、生まれつきのものとされるようになりました。ですから、杉田議員の擁護派の主張は出発点から科学的に間違っていて、一方的に批判されたのは当然です。
 
「親学」なるものがあって、保守勢力と深いつながりがある親学推進協会が推進していますが、子どもの発達障害の多くは親の育て方が原因なので育て方を変えれば発達障害は治せたり防げたりすると主張して、ネットで大炎上したことがあります。発達障害の多くは脳や遺伝子に原因のある先天的なものとされているので、炎上して当然です。以来、親学はトンデモ学説であるというイメージがつきました。
 
杉田議員の主張や親学の主張を思想的なものととらえて、右翼と左翼が議論すると、議論は堂々巡りになる可能性があります。しかし、科学的事実に対する認識の間違いととらえると、簡単に決着します。
科学の進歩によって、こうしたことがふえてきています。
 
最近、スポーツ界で体罰やパワハラが問題になっていますが、テレビのコメンテーターなどで体罰や暴力を肯定する人はいません。
昔は違いました。2012年、大阪市立桜宮高校の男子バスケットボール部で顧問教師による体罰があり、キャプテンが自殺するという事件が大きく騒がれましたが、このときはスポーツにおける体罰を肯定する声がかなりありました。桑田真澄氏がきっぱりと体罰を否定したのが目立ったぐらいです。
なぜ今は体罰が否定されるようになったかというと、やはり科学的研究が進んで、暴力をふるわれた子どもの脳は萎縮したり変形したりするということがわかってきたからです。
 
厚生労働省は「愛の鞭ゼロ作戦」と称して、子どもへの暴力がいかに子どもを害するかということを周知させようとしています。
 
厚生労働省「愛の鞭ゼロ作戦」
 
しつけのための体罰も、昔はむしろ肯定論のほうが優勢でしたが、今肯定論を言う人はいないでしょう。
松本人志氏はつねづね体罰肯定論を述べていて、2017年に日野皓正氏がドラム演奏をやめない中学生をビンタした事件や、日馬富士の貴ノ岩に対する暴行事件のときも、肯定的な意見を述べていましたが、今後もし同じようなことを言ったら炎上するはずです。
 
 
このように見てくると、ネットの言論はフェイクまみれの低レベルのようですが、科学的事実を尊重するということではまともです。
 
それを踏まえれば、ネットの言論をまともな方向に動かしていくこともできそうです。
たとえば、「韓国人は嘘つきだ、恩知らずだ、感謝しない、すぐ怒る」といったことがネットでよく言われていますが、日本人と韓国人では遺伝子も脳もそんなに違うはずはなく、文化的にもきわめて近いので、「韓国人はうそつきだ(日本人は嘘つきでない)」ということは容易に科学的に否定できるはずです。
 
インターネットの言論はこれから進歩していくのかもしれません。