10月2日に発足した第4次安倍改造内閣を安倍首相は「全員野球内閣」と名づけました。
思わず失笑しかけたのですが、失笑するほどおかしくもありません。
なにも目標がないから「全員野球」と言ったのでしょう。
新閣僚の顔ぶれを見ても、入閣待望組の中から安倍首相に近い考えの人間を入れただけです。やるべきことがあれば実力者を配置するはずです。
「目標喪失内閣」とか「やる気なし内閣」と名づけたいところです。
 
党役員には改憲に向けた人間を配置したと言われ、安倍首相も改憲を口にしていますが、これはポーズだけだと思います。解釈改憲をして安保法制を成立させたので、改憲する実質的な理由がなくなっています。
そもそも安倍首相は去年の憲法記念日に、憲法九条に第三項を加えて自衛隊を明記するという「加憲案」を提示し、年内にまとめると表明しました。ところが、年内どころか今になってもまとまっていません。
改憲派は改憲案が具体化しそうになると方針を転換するということを繰り返してきました。「理想の改憲案」という青い鳥を追いかけているのです。
 
安倍政権は安保法制、共謀罪、カジノ法、裁量労働制など、やるべきことをほとんどやりました。すべてアメリカと財界のためです。これ以上やることがなくなって、目標喪失になったのはわからないでもありません。
 
それから、森友加計問題が影響していることも考えられます。
安倍首相は国民に嘘をつき通したため国民に顔が向けられなくなって、なにか目標を提示して国民を引っ張っていくということができなくなったのでしょう(とすると安倍首相にも多少の良心があったことになります)
 
国民に顔が向けられないということでは、外交もそうです。
安倍首相は昨年9月に国連総会で演説したときは、演説の8割を北朝鮮問題に割いて、制裁と圧力の必要性を説きました。ところが、今年の国連総会の演説では、北朝鮮問題にはわずかに触れただけで、制裁も圧力も言わず、代わりに「金正恩委員長と直接向き合う用意があります」と言いました。もちろんトランプ政権に追随したためですが、安倍首相はそのことを説明していません。
北方領土問題についても、安倍首相はプーチン大統領との個人的信頼関係でうまくいくようなイメージをふりまいていましたが、まったくうまくいっていないことが明らかになりました。
トランプ大統領との個人的信頼関係もアピールしてきましたが、日本が通商問題で二国間交渉に応じることについてトランプ大統領は、「『交渉しようとしないならあなたの国からの車にものすごい関税をかける』と言った。そうしたら日本は『すぐに交渉を始めたい』と言ってきた」と語り、恫喝されている実態がバレてしまいました。
これまで「外交の安倍」を誇ってきましたが、そういう顔もできなくなったわけです。
 
これまで経済が比較的好調だったことも安倍政権の支持率の高さにつながってきましたが、経済の好調さは異常な低金利と財政赤字拡大のたまものです。これはいつまでも続けられないので、安倍政権が終わるまでに金融政策の出口と財政再建の道筋を示すべきだというプレッシャーが強まりつつありますが、安倍首相は具体的な方針を示していないので、これについても国民に合わす顔がありません。
 
朝日新聞は今回の内閣改造について「組閣内向き」という見出しを掲げていましたが、国民に合わす顔がないために内向きになったのです。
 
考えてみれば、安倍政権はこれまで嘘とメディア操作で人気を保ってきたわけで、ここにきてさすがにそれが通用しなくなったのでしょう。
そして、安倍首相にその事態を打開する気力もアイデアもないようです。
「全員野球内閣」という言葉にそれが表れています。