安倍政権は外国人労働者を増やす入管法改正をゴリ押ししています。
安倍政権がなにかの法案をゴリ押しするときは、たいてい背後にアメリカの要請があるものですが、今回その可能性はなさそうです。
もっぱら財界の要請に応えているのでしょう。
経団連は2016年に23億円余りの献金を自民党にしているので、自民党としてはその要請を無視するわけにいきません。
 
新聞各社が入管法改正についてどのような論調であるかということを次の記事が書いていました。
 
【論調比較・入管法】 外国人の人権案ずる朝毎・東京 治安悪化懸念の産経
 
日経と読売は入管法改正に基本的に賛成です。日経は企業側に立って、読売は自民党側に立っているので、当然でしょう。
 
朝日、毎日、東京は入管法案に反対です。その主な理由は、外国人労働者の受け入れ環境整備が不十分だということです。
 
産経も反対ですが、その理由は「日本社会の変質」への懸念です。外国人が増えると地方参政権を求める声が強まり、社会の混乱や治安の悪化が生じるということです。

朝日、毎日、東京は外国人労働者を思いやり、産経は外国人労働者をヘイトしています。
しかし、日本人単純労働者のことを無視しているのはどちらも同じです。
 
外国人労働者がふえると、それと競合する日本人単純労働者の賃金が上がりません。
これからやってくる外国人労働者の待遇を心配するより、今いる日本人労働者の待遇を心配するほうが先でしょう。
 
安倍政権は「アベノミクスにより最低賃金・失業率・株価は軒並み改善しており、これからアベノミクスの果実が全国津々浦々に届けられ、実質賃金も上昇し、デフレから脱却できる」と繰り返してきました。しかし、外国人労働者を大量に入れれば、日本人労働者の賃金は上がりませんし、デフレからの脱却もできません。
入管法改正は、アベノミクスの恩恵がしたたり落ちてくるのを待っていた日本人労働者への裏切りです。
 
日本の新聞がこの問題を無視する理由はわかります。日本人の低所得層はほとんど新聞を読まないからです。
低所得層は自民党に献金もしないし、新聞も購読しないので、誰も味方がいないというわけです。
 
低所得層の中心をなすのは、バブル崩壊後の就職氷河期世代、いわゆるロストジェネレーションです。正社員になれないまま、今では「中年フリーター」と呼ばれています。
彼らが貧困なのは自分のせいではありません。しかし、ちょうど社会主義思想が力を失った時代で、彼らの味方をする思想がありませんでした。
そのため彼らは新自由主義思想を頼り、在日特権批判、生活保護受給者批判、自己責任論が横行しました。“弱者がより弱者をたたく”というパターンです。
 
低所得層や単純労働者はみんな入管法改正に反対しているはずですが、その声はまったく聞こえてきません。「弱者が団結して世の中を変える」という発想がなくて、自己責任論ばかり言ってきたので、今さら声を上げられないのでしょう。
 
では、彼らの不満はどこに向かうかというと、外国人労働者への憎悪でしょう。
産経がもうその道筋をつけています。
産経は入管法改正に反対する主な理由に治安悪化を挙げています。
 
実際は外国人犯罪はへっていて、このブログの「日本人を分断する移民政策」という記事でも「来日外国人の検挙件数は2005年が4万7865件とピークで、2015年には1万4267件と三分の一以下にへっています」と書いたことがあります。
 
ところが、産経系列の「FNNプライムニュース」の「来日ベトナム人による事件急増! 技能実習生が犯罪者へ転落する日本」という記事では、2017年のベトナム人の検挙件数が5140件になって中国人の検挙件数の4701件を抜いたということを取り上げて、こう主張しています。
 
外国人が増えると、犯罪も増える。
残念ながら、それは事実だ。
不安払しょくのため、国会では、しっかりとした議論を求めたい。
 
外国人犯罪の総検挙件数は大幅にへっているのに、ベトナム人の検挙件数が中国人の検挙件数よりもふえたということだけをとり上げて、あたかも外国人犯罪がふえたかのように思わせているのです。
 
とはいえ、産経は低所得層の不満を認識して、不満のはけ口をつくっているということもいえます。
朝日、毎日、東京は低所得層への配慮がありません。
こうしたことも世の中の右傾化やヘイトスピーチの増大を生んでいると思えます。