時代劇などの勧善懲悪の物語には、誰が見てもそうとわかる「典型的な悪人」が出てきます。
そんなものは物語の中だけのことかと思っていたら、最近の日本の韓国に対する態度が「典型的な悪人」です。
 
テレビの時代劇でもっともよく出てくる悪人は、善良な庶民をいじめる高利貸しです。高利貸しは証文をかざして善良な庶民に借金返済を迫り、金が返せないとなると、寝たきりの父親の布団をはぎ取ったり、娘を売り飛ばそうとしたりします。
昔は利息制限法がないので、借金の証文を持つ高利貸しのほうに正当性があります。水戸黄門や大岡越前や銭形平次もこの時点では手を出せません(高利貸しはほかにもっとあくどいことをしているために、最後はこらしめられます)
 
「ミナミの帝王」に出てくる悪徳業者も、法律にうとい善良な庶民をだまして金をむしり取ります。法律を盾にしているので、庶民は泣き寝入りするしかありません(萬田銀次郎は悪徳業者の上手をいく手口で悪徳業者をだまし、庶民を救います)
 
 
韓国の最高裁で日本企業に元徴用工への賠償金支払いを命じる判決が相次いで、日本では日韓請求権協定を盾に韓国を批判する声が高まっています。
これは、証文をかざしたり、法律を盾にしたりするという典型的な悪人の態度です。
 
もっとも、相手が不当な要求をしてきた場合は、証文をかざしたり、法律を盾にしたりして身を守らなければならないので、証文をかざしたり、法律を盾にしたりすることがつねに悪いとは限りません。
ただ、日韓請求権協定という証文をふりかざす態度が国際社会からどう見られるかということは知っておかなければなりません。
 
勧善懲悪の物語で、悪人は善良な庶民を苦しめます。これをもって悪人と判断されます。
日本は、戦時中に徴用工を苦しめたので、完全に悪人です。
もっとも、昔のことですから、ちゃんと謝罪と反省を示せば許されます。
ところが、今の日本は日韓請求権協定という証文をふりかざすだけで、謝罪と反省をまったく示しません。
しかもその証文は50年以上前のもので、相手は軍事クーデターで政権を得た朴正煕大統領でしたから、それほど値打ちがありません。
 
多くの日本人は韓国人に差別意識を持っているため、元徴用工への同情心がありません。そのため平気で証文をふりかざして、物語の典型的な悪人を演じてしまうのです。
 
今のところ、徴用工判決を巡る日韓の対立はほとんど世界から注目されていませんが、問題が大きくなって注目を浴びるようになると、日本が悪人と認定されます。
安倍首相、河野外相、菅官房長官らはこの問題について発言するとき、日本が悪人にならないように、枕詞のようにして必ず元徴用工に対する謝罪と同情の言葉を言わなければなりません。
韓国人への差別意識は急に改まらないとしても、それが政治家として当然の責務です。