南青山の児童相談所建設に反対する地元住民の言い方に批判が集まっています。
 
「地元の小学校の皆さんは習い事や塾、たくさんしていてレベルも高いです。もしその子どもたちがお金がギリギリで、地元小学校にいらっしゃるってなった時には、とてもつらい思いをされるんではないかなと思います」
「外に出ると、あまりにも幸せな家族、着飾った両親、そういう場面と自分の家庭を見たときのギャップを私はすごく心配しております」
 
恵まれない子どもを見下すような言い方が批判されるのは当然です。
 
しかし、2人の子どもを持つお笑い芸人の松嶋尚美さんがフジテレビの「バイキング」でした発言はちょっと違います。
 
「もしも自分のところに来るとなったときには、引っ越しする可能性もあります。たとえば、親に暴行されて“キーッ”となって外に飛び出した子が、暴力振るったり、カツアゲしたりするかもしれないなという変な心配がまずあったりもするし。(自分の)子どもも流されそうなタイプやし。たとえば、学校で頭をグリグリで殴る子がいたんですって。それは親がそうしているから、そこまで悪いこととは思わなくて、友だちにしてしまうとか。そういう面では悩むことは正直ある」
 
暴力を振るわれた子どもは別の子どもに暴力を振るう――つまり“暴力の連鎖”を理由にしています。
しかも、「自分の子どもを守る」という目的があるので、この発言にけっこう賛同する声があるようです。
 
“暴力の連鎖”ということが一般論としてあることは事実です。
しかし、松嶋さんやその賛同者たちは肝心のことを見逃しています。
それは、暴力は力のある者が力のない者に対して振るうものだということです。
 
親から虐待され、一時保護所や児童養護施設に収容された子どもが学校に通うようになると、ほかの子に暴力を振るうかというと、そんなことはなく、逆にいじめられる可能性のほうが大です。
親から虐待された子どもは、自己評価が低く、基本的な生活習慣が身についていない場合もあり、それに、そもそも施設から通っているということ自体がいじめられる要素です。
ですから、松嶋さんが心配するべきは、自分の子どもと施設の子どもが同じ学校に通うようになった場合、自分の子が施設の子をいじめるのではないかということです。
 
なお、施設内部では、年長の子が年少の子をいじめるという“暴力の連鎖”がありがちなので、職員の配慮が必要です。
 

虐待、いじめ、暴力は、あくまで強者と弱者という権力関係で生じるもので、権力関係を抜きにした議論は意味がありません。
 
南青山の児童相談所建設に反対する人の論理も、東京の一等地に住む金持ちが恵まれない子どもを排除しようとしているわけで、弱い者いじめそのものです。
新自由主義に染まった日本のみにくい面が出た気がします。