菅官房長官が「令和」の文字を示したとき、私はテレビを見ていましたが、記者たちは「ほう」とも「へえ」とも言わず、会見場は完全な沈黙に包まれました。
気持ちが引いたのだと思います。
私自身も同じです。
「令」という字は命令を意味しますし、「冷」にも近いので、気持ちを冷ます字です。
 
「令」には「姿形がよい」という意味もありますが、これは命令によって秩序立ったさまをいっているわけで、あくまで二次的な意味です。
ちなみに「令嬢」は親におとなしく従っている娘のことで、奔放な生き方をする娘は「令嬢」とはいいません。
 
「令和」の決定には安倍首相の意向が強く反映されたようです。しかも、安倍首相は発表のあとテレビに出まくって、「令和」の宣伝をしまくりましたから、ますます「令和」に安倍色がついてしまいました。そのため安倍支持の人は「令和」に好感を持ちますが、反安倍の人は「令和」に反感を持って、元号が国民を分断しているのは不幸なことです。
 
安倍首相にとっての「令和」とは、「命令のもとに国民が一丸となっている」というイメージでしょう。安倍首相の好きな「一億総○○」という言葉と同じです。
 
「令和」はまた、「力による平和」という意味にも取れます。
安倍首相の言う「積極的平和主義」と同じです。
トランプ政権は国家安全保障戦略において「力による平和」をうたっていますから、それとも同じです。
 
安倍首相はこれらのことを意識して「令和」を選んだと思われます。
 
それから、おそらくは無意識の思いも込められています。
 
日本は天照大神のつくった国で、「日出ずる国」です。日の丸、旭日旗も太陽を描いています。
「昭和」の「昭」という字は「明るく照らすさま」であって、やはり太陽と結びついています。
ところが、「令」は万葉集の序文の「令月」から取られていて、つまり月と結びついています。
 
「令和」は「昭和」と対置されていると思われます。
「昭和」は敗戦という大きなつまずきはありましたが、右肩上がりに発展してきた時代です。
「平成」はバブル崩壊とリーマン・ショックがあって、横ばいの時代でした。
そして、「令和」はというと、太陽に対する月、陽に対する陰であって、右肩下がりの時代を暗示しています。
 
安倍首相は、これからの日本が行き詰まることを予感していて、無意識のうちに陰のイメージの言葉を選んだのではないでしょうか。
 
ところで、「平成」の元号ができたときというと、あの額を掲げる小渕官房長官の顔ばかりが思い浮かびますが、竹下首相の時代でした。竹下首相は表に出なかったので、「平成」には政治色がなく、国民に共有されたと思います。
 
安倍首相は改元を政治利用して自分の顔を出し、もともと冷たい「令和」のイメージをさらに悪くしてしまいました。