桜を見る会
平成31年4月13日  総理主催「桜を見る会」の開催(官邸HPより)

安倍首相の「桜を見る会」の私物化を見ていると、スケールは小さくても、モリカケ問題と構造がまったく同じです。

①安倍首相に近い人間に不当に利益が与えられる。
②それを指摘されると「まったく問題はない」と主張する。
③さらに追及されると、嘘や証拠廃棄を重ねて逃げ切る。

そして、今回も証拠の廃棄が行われました。

桜見る会「招待は適正」 内閣府幹部、名簿を廃棄
内閣府の大塚幸寛官房長は12日の衆院地方創生特別委員会で、安倍晋三首相の地元後援会員が多数招待された疑惑が指摘されている首相主催の「桜を見る会」をめぐり、政府の招待客選定に問題はないとの認識を示した。「プロセスは適正だと考えている」と述べた。
 招待客名簿について「保存期間1年未満の文書と位置付けており、会の終了後、遅滞なく速やかに廃棄している」と語った。「事実上もう、今は調べることはできない」とも強調した。
 招待客は、内閣府と内閣官房が各省庁の意見を踏まえて決定していると説明。「取りまとめの過程はこれまでのやり方で引き続き行いたい」として、改める考えがないことを強調した。
https://www.iza.ne.jp/kiji/politics/news/191112/plt19111213300010-n1.html

「保存期間1年未満」というのは、ありえない日本語です。
森友問題のときにもこの言葉が出てきて、頭が痛くなったのを覚えています。

「保存期間1年未満」という言葉は、正しくは「即日廃棄可」ないしは「保存不要」と言わなければなりません。
つまり「1年」という言葉に意味はないのです。
もし「1年」という言葉に意味を持たせようとしたら、「廃棄期限1年未満」ないし「1年以上の保存不可」と言わねばなりませんが、これは意味が変わってきます。
頭のいい官僚が「保存期間1年未満」というおかしな言葉を使っているのはきわめて不可解です。

ちなみに各省庁が「桜を見る会」出席者の推薦名簿を作成しますが、文科省と総務省は推薦名簿の保存期間を10年としているそうです。
この「10年」はもちろん「10年以上」ないし「最低10年」という意味です。
「保存期間10年未満」という規定などあるわけがありません。


そうしたところ、今日の朝日新聞の『桜を見る会名簿破棄、石破氏も批判「残しておかなきゃ」』という記事の中にこう書かれていました。

管理が問題になっている名簿には、各省庁がつくった「推薦名簿」と、内閣官房と内閣府が推薦名簿から取りまとめた「招待名簿」がある。いずれの名簿も保存期間は各省庁が文書管理規則を定めて管理。内閣府の場合は、2018年4月から保存期間を「1年」から「1年未満」に変えた。
https://www.asahi.com/articles/ASMCG52YYMCGUTFK00W.html

「保存期間1年以上」を「保存期間1年未満」に書き換えていたのです。
官僚による規則改ざんです。
森友問題で佐川氏が文書の保存期間を「1年未満」としていたのも「1年以上」を書き換えたのでしょう(佐川氏のやり方を内閣府の官僚が真似たわけです)。
「保存不要」とするのが“正しい改ざん”の文章ですが、それでは目立つからやめたのでしょう。

「保存期間1年未満」という不可解な日本語の秘密がやっと解けました。



内閣府の大塚幸寛官房長は「会の終了後、遅滞なく速やかに廃棄している」と答弁しましたが、これは明らかな虚偽です。
「桜を見る会」は毎年開かれるのですから、前年の名簿を元に新しい名簿を作成するはずです。前年の名簿を捨ててしまったら、一から名前を積み上げていかなければなりません。

さらに、内閣府は名簿の廃棄について「紙媒体は5月9日、電子媒体はその前後に破棄した」と発表しましたが、5月9日は共産党の宮本徹衆院議員が内閣府などに資料要求をした日でした。
つまり意図的な証拠隠滅です。

もちろん大塚幸寛官房長が自分の判断で証拠隠滅をしたのではなく、もっと上の人間、政治家が指示をしたということはありえますが、そのへんの事情はわかりません。
今わかっているのは、明らかに大塚幸寛官房長が虚偽答弁をしているということです。

大塚官房長
11月14日の参院内閣委員会で虚偽答弁をする大塚幸寛官房長

森友学園問題では財務省の佐川宣寿氏が文書廃棄を指示し、国会で虚偽答弁をし、問題の隠蔽をはかりました。森友問題がうやむやになった最大の原因は佐川氏の“活躍”です。
しかし、佐川氏は刑事責任を問われることはなく、退職金をわずかに減額されただけでした。
マスコミは官僚から情報をもらうので、官僚批判はほとんどしません。そのことが佐川氏の逃げ切りを許したといえます。

今回の大塚幸寛官房長の名簿を廃棄したという答弁についても、マスコミは「内閣府の担当者」という書き方をして、大塚幸寛官房長の名前を出さないところもあります。
マスコミが官僚批判をしないので、安倍政権は官僚を前面に立てて証拠隠滅をはかれば逃げ切れるという計算でしょう。

政治家の手足となって虚偽や不正を行う官僚は当然批判されるべきです。


ともかく、「保存期間1年未満」というおかしな日本語から、文書管理という国の根幹が恣意的にゆがめられている実態が見えてきました。