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来春、改正児童虐待防止法が施行されるにあたり、厚生労働省はどんな行為が禁止される体罰に当たるかを示すガイドラインを作成しました。

朝日新聞の「たたく、正座、食事抜き…しつけでなく体罰 厚労省案」という記事によると、「しつけのためだと親が思っても、身体に苦痛または不快感を引き起こす行為(罰)は、どんなに軽いものであっても体罰に該当し、法律で禁止される」ということで、その記事の図解を示しておきます。

体罰の線引き


体罰や暴力はどんな軽いものであってもだめと、基準が明快です。

ところが、やはりというか、これに反対する人もいます。
さすがに有識者などで公然と反対する人はいないようですが、ネットではいまだに体罰肯定論が盛んです。

『尻をたたく、正座もダメ。厚労省「体罰ガイドライン」に批判殺到』という記事から、個人のツイートの部分だけ引用します。


もんきー@Z900RS卍 なまらめんこい🐾
@momochyan415
体罰禁止法って2020年4月かららしいのだが、
親は「児童のしつけに際して体罰を加えてはならない」となるらしい。
何か違う方向に行っていませんか??


だいこん
@MouseChrome
何度注意しても人を殴る、物を盗むとかの犯罪に直結するものを更生する為には体罰は仕方ないと思うけどね。
それ以外なら、子供の将来を台無しにする為に虞犯少年として少年院に打ち込む?

一瞬の体罰か生涯経歴に苦しむかの二択かと思うけど

冷たい世の中だな#児童虐待


一 一
@ninomae_haji_me
わざわざガイドラインを作らないといけないことじたいが問題だろ

理想論ばかりの体罰禁止ガイドラインやなぁ#体罰


暗黒世界から現世へと舞い戻った復活のW@絶対フィード取れないマン
@Allegro1018
親の体罰禁止ガイドラインとかクソみたいなもの作ることよりやることあるだろ。道を逸れる前にしつけするのが親の仕事だろ。国家が家庭事情に干渉するな。


オールドボーイ@コミケ2〜4日
@oldboy1899
体罰禁止ガイドライン案のお尻ぺんぺんや聞かないからビンタ、他の子殴ったから自分の子を殴ったが禁止!?殴りたくて殴ってる保護者なんてほとんどいないと思うてけど、より保護者に難題を求められるようになるな。


「体罰」という言葉を使うので、こういう意見も成立しているかのようですが、「体罰」を「暴力」や「虐待」という言葉に言い換えると、実態が見えます。
幼児虐待事件で逮捕された親がよく「しつけのためにやった」と言いますが、それと同じです。
こういうツイートをした人は、幼児虐待の予備軍です。
いや、もしかして今もわが子を虐待しているかもしれません。
そういう意味で、こういう意見を放置しておくわけにいきません。


体罰肯定論者の主張は共通していて、「子どもが悪いことをしたら罰するべきだ。罰しないと子どもはどんどん悪くなる」ということです。
子どもは悪なので、自分の暴力は正義だということになります。
「しつけのためにやった」と言う人は、自分が正義だと思っているので、逮捕されたことが不満です。
こういうことを考える人は、頭の中に道徳がいっぱいあって、その分愛情が足りません。

また、子どもの発達について無知ということもあります。まだ所有の観念のない子どもの行為を「物を盗んだ」と見なすなどがそれです。
子どもの喧嘩を「暴力」と見なすのも同じです。子どもは喧嘩しながら人間関係を学んでいくもので、昔から「子どもの喧嘩に親が出る」ことは戒められています。

「自分は正しい人間だが、自分の育てている子どもは悪い」というのは論理的に成り立ちがたく、これは少し考えればわかるはずです。


もっとも、キリスト教には原罪というものがあって、子どもには生まれながらの悪があるとされます。そのため、西洋キリスト教社会では「鞭を惜しめば子どもがだめになる」ということわざがあるように、体罰が当たり前のこととして行われていました。
日本では、「七歳までは神のうち」という言葉もあって、子どもはたいせつにされていましたが、明治政府は、列強と対抗するために西洋の父権主義とともに体罰を輸入し、広めたのです。
もっとも、今は時代が変わって、ヨーロッパでは体罰禁止がかなり進んでいるようで、逆に日本のほうが体罰が盛んかもしれません。


以上は、倫理学的な面から体罰について述べましたが、今は科学的研究が進んで、こうした議論はほとんど無意味になっています。

体罰・暴言は子どもの脳の萎縮・変形を招くことが科学的に明らかになっていて、厚生労働省も「愛の鞭ゼロ作戦」と名づけたキャンペーンをやっています。
今回のガイドラインが明快なのも、そうした科学的裏づけがあるからでしょう。

なお、厚生労働省は10月21日に職場におけるパワハラの定義や基準を定めたガイドラインの素案を示しましたが、これはむしろパワハラを正当化するものだという批判が巻き起こっています。パワハラには「脳の萎縮・変形」のような科学的な基準がないので、経団連などの意向に寄せてしまったのです。

今は体罰肯定論をぶっている人も、「そんなことをしたら子どもの脳が萎縮・変形しますよ」と言われると、それ以上主張できないでしょうから、体罰肯定論もここ1、2年で消滅するに違いありません。