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日本外国特派員協会オフィシャルサイトFCCJchannelチャンネルより


ジャーナリストの伊藤詩織さんが元TBS記者の山口敬之氏を訴えていた裁判で、東京地裁は12月18日、山口氏に330万円の賠償を命じる判決を下し、伊藤さんの勝訴となりました。
この裁判は、個人対個人の争いを超えて、ハルマゲドンのように、善と悪、光と闇が最終的に雌雄を決する戦いでもありました。


裁判の争点のひとつは、伊藤さんが山口氏にレイプされたという日の3日後に、山口氏にあてて〈山口さん、/お疲れ様です。/無事ワシントンへ戻られましたでしょうか?/VISAのことについてどのような対応を検討していただいているのか案を教えていただけると幸いです。〉というメールを送っていたことです。
山口氏はこれを性行為に合意があった証拠だとし、山口氏の応援団もこぞって、「レイプされた人間がこんなメールを送るはずがない。伊藤詩織はうそつきだ」と言い立てました。
しかし、人間の心理として、あまりにも衝撃的な出来事があって、心がそれを受け止められないとき、あたかもそれがなかったかのようにふるまうということがあるものです。これがひどくなると、解離性障害といって、記憶が飛んだり、人格が変わったりします。
伊藤さんも著書『Black Box』で、「これはすべて悪い夢なのだと思いたかった」「私さえ普通に振る舞い、忘れてしまえば、すべてはそのまま元通りになるかもしれない。苦しさと向き合い戦うより、その方がいいのだ。と、どこかで思ったのだろう」と書いています。
伊藤さんはこのメールを送ると同時に、医者に行ってアフターピルを処方してもらい、友人に相談したりもしているので、それがレイプの証拠になりました。

判決ではこのメールに関して、「同意のない性交渉をされた者が、その事実をにわかに受け入れられず、それ以前の日常生活と変わらない振る舞いをすることは十分にあり得る」「メールも、被告と性交渉を行ったという事実を受け入れられず、従前の就職活動に係るやり取りの延長として送られたものとみて不自然ではない」と明快に判断しています。

裁判官というのは、権威主義的性格の人が多く、人間心理の理解が浅くて、メールの文面だけを見て判断する可能性がありましたが、この裁判官はまともな判断のできる人でした。


この裁判は、伊藤詩織さんがレイプ被害者として名前と顔を出して訴えるという点できわめて異例でした。
本来この事件は、刑事事件として裁かれるべきものでしたが、警察が逮捕せず、検察が起訴しなかったために(検察審査会も不起訴相当としました)、伊藤さんは民事で訴えるしかなくなったのです。

警察は山口氏の逮捕状を取って、羽田空港で帰国したところの山口氏を逮捕する段取りをしていましたが、逮捕直前に中止となりました。週刊新潮は逮捕中止を命令したのは警視庁の中村格刑事部長だという記事を書きました。
山口氏は、安倍首相をヨイショする『総理』という本を出版し、その後テレビに出まくって安倍首相礼賛の解説やコメントをしてきた人物で、まさに「安倍友」です。中村部長は管義偉官房長官の元秘書官で、政権の意向を受けて逮捕中止に動いたというわけです。

判決の翌日、外国特派員協会で行われた記者会見で、山口氏は「逮捕が中止になったのは官邸の圧力があったのか」と質問され、「捜査が行われていることを知るよしもないから、誰にも頼めなかった」「このケースは、どの政治家にも、どの官僚にも一切、頼んでいません」と答えています。

しかし、山口氏は週刊新潮からメールで質問状を送付されたとき、間違ってこんなメールを週刊新潮に送りました。

〈北村さま、週刊新潮より質問状が来ました。
伊藤の件です。取り急ぎ転送します。
山口敬之〉
https://lite-ra.com/2019/12/post-5154.html

要するに「北村さま」にメールを「転送」しようとしたところ、間違って週刊新潮に「返信」してしまったようなのです。

この「北村さま」は誰かと言うと、内閣情報調査室のトップである北村滋内閣情報官(現・国家安全保障局長)だと想定されます。
山口氏はこの件で官邸と密接に関わっていたことになります。

会見ではこのメールについても質問がありました。

続いて、一部で山口氏が北村滋内閣情報官にメールを送ったということが報じられた件に関し、真偽を問う質問が出た。山口氏は「北村さんにメールを送ったかどうかすら、私は認める必要がないと思うんですが、メールを送っているのは事実」と語った。その上で「私の父は去年、亡くなったんですが弁護士をしておりまして。父は高齢だったので、法律的なことを父の友人というか知人の北村さんという方に(メールした)。これ以上は、その方にご迷惑がかかるので申し上げませんが、その方は北村滋さんとは全く別人の民間の方です」と否定した。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191219-12190359-nksports-soci
同姓の別人だというのですが、安倍政権からうんざりするほど聞かされてきた嘘と同じパターンです。


伊藤氏だけでなく山口氏も顔出しして自分の主張を訴えていますが、これも驚くべきことです。
山口氏は合意の上の性行為だったと主張しています。
そうすると、伊藤さんはそのときは合意したのに、あとになってレイプだと主張したのはなぜかということになります。
これを説明するために山口氏は、伊藤さんはうそつきだとか、訴え出ることで利益を得たなどと言わざるを得ませんでした。つまり人格攻撃をしました。
もっとも、安倍応援団は慰安婦問題で、元慰安婦はうそつきだとか、売春婦として多額のお金をもらっていたとか主張しているので、それと同じことをしているだけですが。

それに、山口氏は伊藤さんが泥酔して一人で家に帰れない状態だったのでホテルの部屋に連れていったと言っているのですが、そんな状態で「合意の上の性行為」ができるものでしょうか。
山口氏は一応次のように説明しています。
 酩酊状態にある人と性行為をしたことについてどう思うかという質問については、伊藤さんは自力で家に帰れないと判断し私のホテルに来てもらった。このことはいいことではなかったと反省しています。

 私の部屋に連れて行ったら、伊藤さんは部屋に入るなり嘔吐(おうと)しました。その後、私のベッドで2時間くらい寝ていました。そしてトイレに行って戻ってきて、ペットボトルの水を自分で飲んだ。その段階では伊藤さんは普通にしゃべっていて、普通に歩いていて、酔った様子はありませんでした。ですから、質問に答えるとすれば、泥酔している状態の伊藤さんと性行為が行われたわけではないので、質問自体が間違っている。
https://dot.asahi.com/wa/2019121900045.html?page=3

2時間眠ったら泥酔状態から普通の状態になったというありえない主張です。

百歩譲って、合意の上の性行為であるという山口氏の主張が正しいとしても、これはテレビ局の男が就職の世話を頼みにきた女子学生に対し、自分の立場を利用して性行為をしたということで、それ自体が許されません。
それに、山口氏は避妊具を使わなかったことを認めていますが、これについての合意はあるはずありません。
国によっては、性交の途中で男性が避妊具を外すと強姦とされます。
日本の場合はどうかわかりませんが、いずれにせよ、真剣な交際でないのに避妊具を使わないで性行為をしたことは非難されて当然です。
なお、山口氏には妻子がいるので、これはいわゆる不倫でもあります。
テレビで若い女性と性行為をしたことを堂々としゃべっている山口氏を家族はどう思って見たのでしょうか。

そうしたことを考えると、山口氏は破廉恥漢であって、とても人前に顔を出せる立場ではありせん。
しかし、山口氏には官邸と安倍応援団がバックにいるという自信があります。
そのため裁判で敗訴しても強気で、外国特派員協会で記者会見し自分の正当性を訴えましたが、これを海外から見ると、破廉恥漢が我が物顔でふるまっているわけで、日本はおかしな国だと思われたでしょう。


ともかく、山口氏の背後には安倍政権や安倍応援団がついているので、ハルマゲドンのような裁判であったわけです。
安倍応援団は伊藤氏に対して「落ち度があった」とか「枕営業をした」とか言ってセカンドレイプをする人ばかりなので、唖然とさせられます。

今回、まともな判決が出ましたが、山口氏は控訴すると言っているので、控訴審でおかしな判決が出ないとも限りません。
しかし、裁判官も世論の影響を受けます。
山口氏が顔を出せなくなるくらいに山口氏批判の世論が盛り上がれば、おかしな判決が出る可能性もなくなります。