安倍首相
新型コロナウイルス感染症対策本部 令和2年2月27日(首相官邸ホームページより)

2月26日ごろからスーパーや薬局の店頭にトイレットペーパーがなくなりました。
オイルショックのときにトイレットペーパーがなくなりましたが、そのときの記憶で、パニックになると条件反射でトイレットペーパーを買ってしまう人がいるのでしょうか。

今回はSNS上のデマが原因のようですが、そういうデマにひっかかるのはやはり不安心理があるからです。
どうして不安心理があるかというと、どう考えても安倍首相のせいです。

政府は2月25日、新型コロナウイルス対策本部の会合を開き、「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針 」を発表しました。
この基本方針には、緊急の対策などはなにもなく「イベント等の開催について、現時点で全国一律の自粛 要請を行うものではない」となっていました。
これまで安倍首相はウイルス対策について、閣僚に対して「先手先手の対応」を指示し、「きちっとやっている。世界保健機関(WHO)も評価している」と自画自賛して「やってる感」を演出してきましたから、その流れを受けたものです。

ところが、基本方針を出した翌日に安倍首相は、全国的なスポーツ・文化イベントの開催を自粛するよう要請しました。
一夜にして基本方針を反故にしたのです。
そして、その翌日に、全国の小中高の臨時休校を要請しました。

一国のリーダーにまったく定見がないことを見た人が不安になって、トイレットペーパー騒動が起きたのかと思われます。


とはいえ、小中高の一斉休校を思い切った決断であるとして支持する声もあります。
確かに思い切った決断ではありますが、実効性はあるでしょうか。

これを書いている時点で、新型コロナウイルス感染者が出ているのは23都道府県ですから、24県では一人も感染者が出ていないことになります。感染者の確認されていないところで一斉休校するのはほとんど無意味です。
それに、文部科学省は2月25日に通達を出し、感染した児童や生徒がいた場合は、臨時休校をすみやかに行い、さらに地域全体の感染を抑えるため感染者のいない学校も積極的に臨時休校することも考えられるとしました。
つまり各地域や各学校が自主的に休校できる体制を整えていたのです。
安倍首相の一斉休校要請がいっそう無意味であることがわかります。


感染拡大を防ぐ実効性のある対策は、多くの人が集まって濃厚接触する場面をつくらないようにすることです。
そのためにすでにイベントや会合の自粛要請がされています。
あと、人が濃厚接触する場面といえば、満員電車を初めとする通勤通学の人混みです。
通勤時の混雑緩和のために、時差出勤やテレワークが推奨されていますが、まだ十分とはいえません。
ですから、今するべきことは、通勤時の混雑緩和です。
単純化していうと、「満員電車をなくす」ことです。

北海道の鈴木直道知事は「緊急事態宣言」を出して、この週末の外出を控えるよう道民に呼びかけました。
しかし、週末だけ外出を控えても、週明けから通勤のために満員電車に乗るのでは、あまり意味がありません。
とはいえ、知事が企業に対して休業要請をするのはむりでしょう。

ここは安倍首相の出番です。
安倍首相がもし実効性のある対策をしたいのなら、大都市圏の企業に対して休業要請をするべきです。
一斉休業の必要はなく、地域の半分の企業が休むというような計画休業でいいわけです。
もっとも、それでも休業補償をどうするかという問題がありますし、経済にも大打撃です。


そこまでする必要があるのかというと、たぶんないでしょう。少なくともしばらく様子見でいいのではないかと思います。

ただ、安倍首相としてはどうしても東京オリンピックを開催したいはずで、そのためには5月中には終息宣言を出さねばならず、実効性のあることはなんでもやるというなら、企業に休業要請をするしかないと思います。

考えてみれば、小中高の一斉休校は大して経済的打撃にならないので、安倍首相としては「やってる感」を出すのに都合がよかったのでしょう。

国民のことより政権維持を優先させる安倍首相は、今や百害あって一利なしの存在です。