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安倍首相の小中高の全国一斉休校要請が混乱を生んでいます。

本来は新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐという目的があって、休校はその手段です。感染防止という目的がわかっていれば、周辺に感染者の出ていない地方の学校を休校にする必要はほとんどないことがわかりますし、学校に行かない子どもが学童保育の施設に集まって濃厚接触するのではむしろマイナスになることもわかります。

ところが、安倍首相はおそらく感染防止よりも支持率回復のために休校を打ち出したので、日本中がなんのための休校かわからなくなっています。

朝日新聞の「休校の中高生、居場所は 部活休み・娯楽施設も制限… 新型コロナ」という記事によると、「文部科学省は2月末、全国の都道府県教育委員会に、3月2日から春休みまで小中高校などの臨時休校を求めた。人の集まるところへの外出を避け、基本的に自宅で過ごすよう求めた。部活動も自粛だ」ということです。
つまり単なる休校ではなく、小中高生は自宅に謹慎していなければならないのです。
記事は、それに合わせたさまざまな動きも書いています。

 ゲームセンターを展開する「セガ エンタテインメント」は2~13日、平日は午後3時まで小中高生の入場を制限している。店を出るよう言われたという中学2年の男子(14)は「親は勉強しろと言うが、ずっとは勉強できない。気晴らしになるかなと思ったのに」。
(中略)
レジャー施設「ラウンドワン」も、系列の店舗で2~13日の平日は午後3時まで、小中高校生だけでの入場を規制する。東京都世田谷区のカラオケ店「カラオケALL桜新町店」も2~13日、高校生以下の利用自粛を求める。
 図書館ですら、高校生以下の利用を制限するところも。埼玉県久喜市は3~31日、市内にある四つの市立図書館で児童・生徒の利用を禁止した。同県入間市でも小中高校生の図書館利用を4日から禁じている。

映画界では、すでにTOHOシネマズが休校期間中の小中高校生の鑑賞について「ご遠慮いただく場合がございます」と表明しており、さらにイオンシネマも公式サイトで「休校期間中の小中高生のお客さまのご鑑賞につきましては、ご遠慮いただく場合が御座います」と表明しました。
映画館はむしろ行き場のない小中高生のために入場料を割り引いてもいいぐらいですが、逆のことをしています。


要するに小中高生は自宅でじっとしていろということです。
その間、父親は会社に行き、母親はパートに行き、さらにカルチャースクールに行ったりママ友と会ったりすることにはなんの制限もありません。
感染防止という点からはまったくちぐはぐです。


厚生労働省も若者をターゲットにしています。

新型コロナウイルス感染症対策専門家会議のメンバーが3月2日に会見を開き、感染しても症状の軽い若年層が、気づかないままに感染を拡大させている可能性があるという見解を示しました。
このことは厚生労働省のサイトにも載っています。


新型コロナウイルス感染症対策専門家会議
「新型コロナウイルス感染症対策の見解」
(1)症状の軽い人からの感染拡大
これまでは症状の軽い人からも感染する可能性があると考えられていましたが、この一両日中に北海道などのデータの分析から明らかになってきたことは、症状の軽い人も、気がつかないうちに、感染拡大に重要な役割を果たしてしまっていると考えられることです。なかでも、若年層は重症化する割合が非常に低く、感染拡大の状況が見えないため、結果として多くの中高年層に感染が及んでいると考えられます。
(中略)
(3)現状に至った理由
都市部においては、社会・経済活動が活発な人々が、感染のリスクが高い場所に多く集まりやすく、気づかないうちに感染していたと考えられます。なかでも、若年層に、症状の軽い人が多いと考えられ、そうした人々の一部の人が他の圏域に移動することで、北海道の複数の地域に感染が拡大し、感染した高齢者のなかから症状が出たことが報告されたことによって、感染の拡大状況がはじめて把握できたと考えられます。
(中略)
6.全国の若者の皆さんへのお願い
10代、20代、30代の皆さん。
若者世代は、新型コロナウイルス感染による重症化リスクは低いです。
でも、このウイルスの特徴のせいで、こうした症状の軽い人が、
重症化するリスクの高い人に感染を広めてしまう可能性があります。
皆さんが、人が集まる風通しが悪い場所を避けるだけで、
多くの人々の重症化を食い止め、命を救えます。
以上
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/newpage_00011.html

若者の行動抑制こそが感染防止の決め手であるかのような主張です。

若者対老人という問題の立て方をすれば、老人の感染者の死亡率が高いので、いかにして老人への感染を防ぐかが課題です。
そして、老人に感染させるのは、若者だけでなく壮年も同じですし、老人同士の感染もあります。
現に名古屋市ではデイサービス施設で集団感染が起き、この事態を受けて名古屋市は緑区と南区のデイサービス126施設に2週間の休業を要請しました。

もっとも、この専門家会議には「老人の命を守る」という問題意識はなく、「社会への感染拡大を防ぐ」ということをもっぱら考えているようです。
しかし、「社会への感染拡大を防ぐ」ということについても、若者をターゲットにするのは間違っています。

若者が主に接触する人というのは、家族と少数の友人ぐらいです。
しかし、営業マンとか宅配便の配達員とか商店や飲食店の店員は多数の人と接触します。
いや、会社員が会社に行くだけでも多くの人と接触します。
「社会への感染拡大を防ぐ」ということなら、経済活動の自粛を要請しなければなりません。


そもそも安倍首相も、感染拡大を防止したいならば、一斉休校を要請するよりも先に、経済活動の自粛を要請するべきです。
それをするとあまりにも影響が大きいので、ビビッてできず、代わりに一斉休校要請に逃げたわけです。

専門家会議も、「都市部においては、社会・経済活動が活発な人々が、感染のリスクが高い場所に多く集まりやすく、気づかないうちに感染していたと考えられます」と言いながら、「社会・経済活動が活発な人々」を規制するのではなく、「若者」を規制するほうに逃げたわけです。

現実には、企業も外回りの営業活動は大幅に縮小していますし、飲食店の多くは閑古鳥が鳴いています。
現実のほうが先に行っているのです。

安倍政権はいち早く中国人の全面入国禁止を打ち出せなかったときから、後手後手の対応を続けて、ここにいたっても後手です。
そのとばっちりが小中高生や若者に向かったというわけです。


安倍首相は非常事態宣言にこだわっていますが、非常事態宣言がウイルスに効くわけではありません。
一斉休校と同じような混乱が起こりそうです。