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アメリカ大統領選挙はトランプ大統領対ジョー・バイデン元副大統領の対決となりました。

バイデン候補は、無難ですが、これという魅力がありません。
一方、トランプ大統領は、よくも悪くも人を引きつけます。

トランプ大統領の強みは、なんといっても人を攻撃する言語能力がずば抜けていることです。この点で対抗できる人は誰もいません。

そして、自分自身が人から攻撃されても平気です。カエルの面にションベン状態です。
2月、3月ごろ、トランプ大統領は「暖かくなればウイルスは奇跡のように消えてなくなる」とか「4月になればウイルスはなくなると思う」などと言っていました。そのことは当然批判されましたが、トランプ大統領は平気です。7月になっても「ウイルスは消える。最後に正しいのは私だ」と言っています。

人を攻撃する力は強くて、人から攻撃されても平気――これは戦う上では最強です。
トランプ大統領はこの能力でライバル候補を全部なぎ倒して大統領になったのです。

ですから、現時点の世論調査ではバイデン候補がトランプ大統領をリードしていますが、これから選挙運動が本格化していくと、トランプ大統領が巻き返すということが十分にありえます。


トランプ大統領を一言でいえば、「ウルトラ利己主義者」です。
ひたすら自分の利益を追求し、(不正な手段も含めて)それを実現してきました。
普通の人は利己主義者とはつきあいませんが、トランプ大統領が利益を得ると、その周辺にいる人間も利益を得ることができるので、寄ってくる人間もいます。


トランプ大統領のスローガンは「アメリカ・ファースト」です。
これは「アメリカ利己主義宣言」みたいなものです。

トランプ大統領は「公正」とか「公平」とか「対等」とか「平等」とかいう言葉を言ったことがありません(どこかで言っているのでしょうが、私は聞いたことがない)。

トランプ大統領がいつも言うのは、中国や日本やメキシコに「アメリカは食い物にされてきた」ということです。
「今度はアメリカが食い物にする番だ」とは言いませんが、心の中ではそう思っているに違いありません。
ウルトラ利己主義者の辞書に「平等互恵」とか「共存共栄」という言葉はなく、あるのは食うか食われるかだけです。


日本とアメリカの関係でいうと、アメリカはTPPを離脱し、日米で二国間の貿易協定を昨年末に改定し、今年1月1日から発効しました。
これによって日本はアメリカ産の牛肉や乳製品の関税を引き下げる一方、日本が要求していたアメリカにおける自動車関税の引き下げは先送りとなりました。
日本側も合意した以上、「不平等だ」とは言いませんが、二国間協議では力のあるほうが有利なので、実質は不平等に違いありません。

アメリカはカナダ、メキシコとの自由貿易協定NAFTAを再交渉してUSMCAを締結し、今年7月1日に発効しました。
アメリカはまた、韓国との自由貿易協定(米韓FTA)を改定し、2019年1月に発効しました。

トランプ政権が「アメリカ・ファースト」を掲げている以上、これらはすべてアメリカの利益になるように改定されたに違いありません。
ということは、これらはトランプ政権の実績です。

大統領選の最大の争点は、トランプ大統領があおってきた人種差別的な分断の評価であるかのような報道がされていますが、有権者の最大の関心は経済です。
トランプ政権によりアメリカ国民も利益を得ています。トランプ政権がある程度の支持を得ているのもそのためです。


「アメリカ・ファースト」というスローガンは、1940年にアメリカが対ドイツ戦に参戦するのを阻止するために唱えられたのが最初だということです。
 1992年の大統領選挙の予備選挙では、共和党右派のパトリック・ブキャナンが主張しました。

自国第一とか国益優先というのは、どこの国の政治でも言われることですが、基本的には国内向けに言うことです。
しかし、トランプ大統領の「アメリカ・ファースト」は、「アメリカを再び偉大に」とともに基本戦略ですから、対外的にも主張されていると見るべきです。
ですから、2016年の大統領選の段階で、世界各国は「アメリカといえども法の支配に従うべきで、われわれは『アメリカ・ファースト』など認めない」と言うべきでした。
トランプ大統領が当選してからは、安倍首相みたいにトランプ大統領にすり寄る国家指導者もいて、国際社会はまとまることができませんでした。


結局、ウルトラ利己主義者がアメリカ大統領になったので、アメリカはウルトラ利己主義国家になり、世界が迷惑をしています。
以前からアメリカは利己主義国家だったとはいえますが、表向きは「法の支配」とか「自由と民主主義」ということを押し立てていたので、そうひどいことはしませんでした。
トランプ大統領にそうした理念はなく、露骨な利己主義があるだけです。


これまでは経済のことばかり言ってきましたが、トランプ大統領はパリ協定離脱、イラン核合意離脱、中距離核戦力(INF)全廃条約離脱などを行ってきました。
これも「アメリカ・ファースト」の一環のようですが、果してアメリカの利益になっているのかはわかりません。
ただ、世界の不利益であるのは間違いありません。


バイデン候補は「アメリカ・ファースト」の否定を選挙の争点に持っていくということはしていないようですが、実質的には大きな争点でしょう。
バイデン候補が当選すれば、アメリカは「アメリカ・ファースト」を捨てて、まっとうな国として国際社会に復帰するはずです。

日本のメディアがアメリカの分断に比重を置いて報道しているのはおかしなことです。アメリカの分断はあくまでアメリカの国内問題です。
アメリカが「アメリカ・ファースト」を捨てるか否かは、世界にとっても日本にとっても重大事です。

それにしても、日本で「アメリカ・ファースト」を批判する人をほとんど見かけないのは、なんとも不思議なことです。