11月19日、新型コロナについてなぜか笑顔で記者会見する菅首相
新型コロナの新規感染者数が急増していますが、西村康稔新型コロナ担当相は11月19日、「感染がどうなるかっていうのは、本当に神のみぞ知る」と言いました。
信じがたい無責任な発言です。
西村大臣は13日の記者会見では、GoToトラベルを活用して旅行することを推奨するのかと問われて、「活用して旅行するかどうかは国民の判断だ」と語り、GoToキャンペーンの責任を国民に押しつけました。
東京都はコロナ警戒レベルを「最高」に引き上げましたが、飲食店の営業自粛要請などはせず、小池百合子都知事は記者会見で「5つの小」と書かれたボードを掲げ、「会食はぜひ『小人数』。できれば『小一時間』。『小声」で楽しんで、料理は『小皿』に分けて、『小まめ』に換気や消毒をしていただく。5つの小を合言葉にして、感染防止対策の徹底をお願いします」と語りました。
神奈川県の黒岩祐治知事は報道ステーションに出演した際、5人以上の会食を禁止する動きがあることについて、「4人なら大丈夫ですか? 3人なら大丈夫ですか? 私は違うと思います。それよりも、マスクをしたまま会食すれば、これは大丈夫ですね」「マスクをしながら会食するというのは、ちょっと鬱陶しいと最初思われるかもしれないけど、やってってください。これをやると安心に繋がりますから」などと語りました。
奇妙な混乱が起きているのは、感染拡大の中でも政府がGoToキャンペーンを継続しているからです。
この判断は菅義偉首相がしたものでしょう。GoToキャンペーンは菅首相の肝いりの政策です。
黒岩知事が言った「マスク会食」も、もとは菅首相が言ったことです。
菅首相は19日のぶらさがり記者会見で、「ぜひ皆さん、静かなマスク会食、これをぜひお願いしたい、このように思います。私も今日から徹底をしたいと思います」と語りました。
そして、そう言った直後、なぜか珍しく笑みを浮かべました。自嘲の笑みだったのでしょうか(その動画はこちら)。
考えてみれば、GoToトラベルキャンペーンが始まったときも似たような混乱がありました。
GoToトラベルは本来なら8月中旬に開始される予定でしたが、前倒しして7月22日から実施されることになりました。それがちょうど第二波の感染拡大期に当たっていて、「なぜ今やるのか」と批判されましたが、菅官房長官は東京発着をキャンペーンから除外するという中途半端な対応で押し切りました。
菅首相は自分の思い入れのある政策については融通がきかないようです。ふるさと納税制度も、返礼品競争が過熱化するという忠告を無視して実施し、案の定過熱化しました。
GoToキャンペーンをめぐって混乱が起きるのは、最初にキャンペーンの目的が明示されなかったからです。
GoToトラベルは、苦境にある観光業界を救済するのが目的です。
ですから、最初に安倍首相か、少なくとも菅官房長官が国民に向かって、「今、観光業界は苦境にあります。観光業界を救うため、国民のみなさんは感染予防対策を十分にした上で、積極的に旅行をしてください」と呼びかけるべきでした。
本来はここに「リスクを取って」という言葉も入れるべきですが、この程度のごまかしはしかたがないでしょう。
呼びかけだけで国民がどんどん旅行をするようになるとは思えないので、そこでGoToトラベルを実施すればいいわけです。
旅行費用の半額が税金で支払われるのですから、当然多くの人が旅行します。税金投入の効果が目に見えるので、国民も税金投入に納得がいくはずです。
最初の呼びかけによってある程度旅行者がふえれば、税金の投入を5割でなく3割にするというように、税金の節約ができるかもしれません。
GoToイートも同じです。
菅首相が国民に「飲食業界を救うために積極的に外食をしてください」と呼びかけ、その呼びかけをより効果的にするために税金を投入します。
これまで政府関係者から国民に対して「旅行をしましょう」「外食をしましょう」という呼びかけが行われたことはないのではないでしょうか。
「経済を回す」「旅行業界を救済しないと」「飲食業界は持たない」などの言葉でGoToキャンペーンの必要性を主張する声があるだけです。
国民への呼びかけをせずにGoToキャンペーンだけやるというのは、「政府はGoToキャンペーンをするだけで、参加するか否かは国民の判断だ」というスタンスで、感染の責任を追及されないようにしているのでしょう。
西村大臣が「活用して旅行するかどうかは国民の判断だ」と言ったのは、まさにそのスタンスを表現したものです。
「外食をしましょう」という呼びかけをしていれば、呼びかけた責任があるので、感染が急拡大したときには、「これまでは外食するよう呼びかけてきましたが、昨今の感染状況に鑑みて、これからは外食を控えてくださるようお願いします。GoToイートも一時中止します」と機敏に方針転換もできます。
今は無責任体制でGoToキャンペーンを始めたので、感染が拡大しても平気で続けていられます。
もちろん菅首相もなにも考えていないはずがありません。
週刊文春の最新号に『菅 放言録「GoTo継続は当然」「専門家は慎重すぎる」』という記事が載っています。
確かに新規感染者数は急増していますが、死亡者数はそれほどふえていませんし、アメリカやヨーロッパと比べるとぜんぜん大したことはありません。
マスコミや医師会は騒ぎすぎです。
菅首相がほんとうに経済を回していくべきだと考えているなら、「この程度の感染を恐れる必要はありません。旅行も外食も続けてください」と国民に訴えるべきです。
賛否両論巻き起こるでしょうが、そうした中を突き進んでいくのがリーダーシップのある政治家というものです。
しかし、菅首相にそんな覚悟はありません。
結局、経済は回したいが、責任は取りたくないという無責任政治家ばかりなので、国民は「マスク会食」などというへんなものを押しつけられる羽目になっています。
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