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「アクセルとブレーキを同時に踏むようなものだ」と批判されても、菅義偉首相はGoToトラベルを停止するつもりはないようです。

菅首相は「経済が疲弊すれば自殺者が増える」と主張します。
この主張には、GoToトラベルと経済全体をすり替えるというごまかしがあります。
菅首相の論理はごまかしだらけです。それを解明してみます。


キーワードは「エビデンス」です。

菅首相は「GoToトラベルが感染拡大の主要な原因であるとのエビデンスは存在しない」と繰り返し言っています。

「エビデンス」というのは要するに「証拠」のことです。
「有罪の証拠は存在しない」と言われると、「証拠がないからといって無罪とは限らない」とすぐさま反論できますが、「有罪のエビデンスは存在しない」と言われると、「エビデンス」という言葉にごまかされて、反論しにくいということがあるかもしれません。

人を裁く裁判では「疑わしきは罰せず」ですが、命や健康を守るためには「疑わしきは罰する」であるべきです。


そうしたところ、東大などの研究チームが12月7日、「GoToトラベル利用者のほうが利用しなかった人よりも多く嗅覚・味覚の異常など新型コロナウイルス感染を疑わせる症状を経験し、統計学上2倍もの差があり、利用者ほど感染リスクが高い」との研究結果を発表しました。
これはGoToトラベルが感染拡大の原因であるという「エビデンス」ではないでしょうか。

ところが、赤羽一嘉国交相は「この論文については正式に査読前という話もありましたし、現時点ではコメントする段階でないと思っている」と語りました。
そして、加藤勝信官房長官、田村憲久厚労相もそろって「査読前」という言葉を使ってその論文を否定しました。
ということは、これは菅政権の方針なのでしょう。
新型コロナウイルス感染症については緊急性が高いので、マスコミは査読前の論文もどんどん紹介しているのですが。

確かにこの研究結果は絶対的な証拠とは言えないかもしれません。
しかし、状況証拠のひとつではあります。


逆の証拠らしいものもあります。
菅首相は11月23日に都内で講演した際、「トラベルは延べ4000万人の方が利用している。その中で現時点での感染者数は約180人だ」と語りました。
観光庁は26日の時点で202人という数字を出しています。

しかし、この数字はあまりにも少なすぎます。
東京新聞の『新型コロナ Go Toトラベルで感染、本当に202人? 全て把握とは言い切れないのに「継続」』という記事にはこう書かれています。

 観光庁などによると、事業を利用した感染者数は、宿泊施設などに対し、保健所や利用者本人から連絡があった数字を積み上げて集計している。宿泊から日数がたって感染が確認される場合などは、保健所から宿泊施設に必ず連絡があるわけではないという。
 「Go To トラベル」で人の往来を後押しし、症状のない人が旅先で知らず知らずのうちに感染を広げてしまう恐れもある。こうした感染者を正確に集計するのは難しく、事業に伴う感染者数を正確につかめているとは言い切れない。

宿泊施設から聞いた数字を集計しているのです。
宿泊者が帰ってから発症した場合、わざわざ宿泊施設に連絡するとは思えません。保健所にしても同じです。そもそも本人もどこで感染したかよくわからないでしょう。
それに、宿泊施設はGo Toトラベルの恩恵を受けているので、正直に報告するとは限りません。
旅行者が電車の中やレストランなどで人に感染させた場合はまったく把握できないわけです。

そう考えると、ほとんど意味のない数字ですが、菅首相はその数字を繰り返し根拠として挙げています(さすがに「エビデンス」という言葉は使っていませんが)。


これはどういうことかというと、Go Toトラベルに不利な証拠は採用されず、Go Toトラベルに有利な証拠は採用されるということです。
「Go Toトラベル裁判」というものがあるとして、裁判官はすべての証拠を踏まえた上で判決を下すのではなく、最初から判決ありきで、判決に合わせて証拠を取捨選択しているのです。

しかも、その手口が全国民の目に見えています。内閣の支持率が急落するのも当然です。


Go Toトラベルが感染を拡大させていることは常識で考えてもわかります。
リモートワークをしていて、買い物に行くぐらいしか外出しない人が、Go Toトラベルで旅行にいくと、宿泊施設、観光施設、交通機関、飲食店、土産物店、街中などで人に接触するので、おそらく百倍以上、人と接触するでしょう。感染が拡大するのは当然です。
それに、会食は感染リスクが高いと言われていますが、旅行にいくと三食ほぼ会食になります。


菅首相はどうしてこのように見えすいたごまかしをするのかというと、安倍政権のときにモリカケ桜問題でごまかしをして、それが通用したという成功体験があるからでしょう。
学術会議任命拒否問題でも、政府に反対した学者の任命を拒否したことをごまかして、押し通してきました。
Go Toトラベルでも押し通せると思ったのでしょう。

モリカケ桜で騒ぐのは時間のむだだという人がいましたが、記録改ざんや虚偽答弁を許した害悪がこんな形で出てきました。


ともかく、ごまかしを押し通すというやり方は、人間相手なら通用するかもしれませんが、ウイルス相手には通用しません。
そのために安倍首相もトランプ大統領も失敗しました。
菅首相はそこは学習しなかったようです。


もともと菅首相はウイルスを軽視していたのでしょう。
普通だと、周りの人間が意見してくれて、間違った考えを修正できますが、菅首相は自分に諫言する人間を左遷するので、周りはイエスマンばかりなのでしょう。
権力者は最終的にイエスマンに取り囲まれることになりがちですが、菅首相は首相就任の最初から末期状態です。