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菅義偉首相は衆院代表質問において立憲民主党の枝野幸男代表から新型コロナウイルス対策の遅れを追及されると、「根拠なき楽観論で対応が遅れたとは考えていない」と反論しました。
また、枝野代表が「リーダーの説得力と真剣さが備わった呼び掛けが必要だ」と指摘すると、菅首相は「節目節目で国民に説明している」と反論しました。

菅首相の言葉は空疎すぎます。大本営発表の「勝った。勝った」を連想させます。
安倍前首相が高支持率を背景にこうした言い方をしていたのを真似たのでしょう。
しかし、安倍前首相はコロナ対策で失敗して退陣したのですから、コロナ対策に関しては安倍前首相のやり方を真似てはいけません。

ところが、菅首相は施政方針演説で、東京オリンピックについて「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として」開催すると、安倍前首相と同じ表現を使いました。

菅首相はオリンピックを成功させて衆院の解散総選挙に持ち込むという政治日程を重視しているそうです。そうであるなら自分の頭で考えないといけません。

現在、ワクチン接種が始まっているのは先進国だけです。オリンピック開催の7月にアフリカや南アメリカにワクチンが十分に行き渡っているということはまったく考えられません。
そのときに「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証」などと言えば、「コロナ禍で苦しむ国の人たちを無視するのか」と批判されるに決まっています。
ですから、菅首相が言うとすれば、「コロナ禍で苦しむ国の人たちに夢と希望を届けるためにも大会開催を実現したい」ということでしょう。


新型コロナウイルスは最初は未知のウイルスでしたから、対応に右往左往しましたが、今ではかなり科学的に解明されてきたので、科学的知見と合理的思考力で十分に立ち向かえます。
菅首相がどうしても東京オリンピックを開催したいのなら、そのための方法も考えられます。

開催するか否かは3月末ごろには決めなければならないという説があります。
もしそうならば、そのころには日本国内の感染が十分に抑えられていなければいけません。
ところが、菅政権は緊急事態宣言は発出したものの、最初は一都三県に限定していましたし、飲食店の営業時短要請が主な内容で、期間も一か月となっていました。
あまりにも手ぬるいやり方で、オリンピック開催を目指すこととまったく矛盾しています。
神風が吹いてウイルスを吹き飛ばしてくれるとでも思っているのでしょうか。

本気でオリンピック開催を目指すなら、最初の緊急事態宣言並みのきびしい行動制限をして、期限も設けずに、たとえば一日の新規感染者百人以下という目標達成まで続けるというようにしなければなりません。
もちろんそれをすれば経済が痛みます。
経済を取るかオリンピックを取るかという問題です。

ただ、知恵を絞ればもう少しやり方があります。
オリンピックはマラソンやサッカーを別にすれば、ほぼ東京、神奈川、埼玉、千葉で行われます。この地域だけきびしい対策をして、感染を抑えればいいのです。
ダイヤモンドプリンセス号のとき、グリーンゾーンとレッドゾーンということが話題になりましたが、東京周辺だけグリーンゾーンにして、それ以外のレッドゾーンでは自由な経済活動を可能にし、ふたつのゾーンの往来は制限します。そうすればオリンピック開催は可能になります。

もっとも、東京で感染を抑えると、感染の広がった外国から選手団が入ってくるのは困ります。
また、一部の国が不参加を決めたことで大会の開催がとりやめになるのも困ります。
それに対処するには、人口10万人当たりの感染者が何人以下の国は参加可能とあらかじめ決めて、つまりグリーン国とレッド国に分けて、グリーン国だけ参加するようにすればいいわけです。

つまり国内と世界をグリーンゾーンとレッドゾーンに分けるわけです。そうすれば世界的に感染が続く中でもオリンピック開催が可能になります。

もっとも、そんなことをしていてはオリンピックが楽しくありません。そこまでやらなくてもという結論になりそうです。

つまり、オリンピック開催の可能性を探れば探るほど不可能に思えてくるのです。

大会関係者は私などよりも真剣に大会開催の可能性を考えています。そうすると、やはり不可能という結論に至っているはずです。

そう考えると、次の報道にも納得がいきます。

日本「五輪中止」非公式に結論と英紙報道、2032年目指す
【ロンドン=板東和正】英紙タイムズ(電子版)は21日、日本政府が新型コロナウイルスの感染拡大で、東京五輪・パラリンピックを中止せざるをえないと非公式に結論づけたと報じた。同紙によると、政府は次に可能な2032年大会の開催を確保することに焦点を当てているという。

 夏季五輪は24年がフランスのパリ、28年が米ロサンゼルスで開催することがすでに決まっている。

 タイムズは21日の記事で、日本の連立与党幹部の話として「既に1年延期された大会は絶望的だとの認識で一致している」と伝えた。同幹部は「誰もが最初にそう言いたくないが、総意は(開催は)難しすぎるということだ。個人的には開催はされないと思う」と同紙に語ったという。

 東京五輪をめぐっては、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長が同日、非公開のオンライン会議でIOC委員と意見交換し、東京五輪を予定通りに開催する考えを伝えた。
https://www.sankei.com/tokyo2020/news/210122/tko2101220003-n1.html
この報道に対して、政府関係者や大会関係者はこぞって否定する発言をしましたが、「火のないところに煙は立たない」です。
政府の中途半端な感染対策も、もう開催は諦めているからだと考えると納得がいきます。

日本政府もIOCも中止報道を否定するのは、先に中止を言い出すと費用の分担で不利になるというような思惑があるのかもしれません。


最終的に決めるのは菅首相です。
菅首相の言うことを聞いてもなにもわかりません。
菅首相は決定する最後の瞬間まで自分の考えを周囲に知らせないということをする人なので、周囲の人もわからないのかもしれません。
しかし、客観的には東京オリンピック開催はほとんど不可能です。