村田基の逆転日記

進化倫理学の威力を試すブログ

カテゴリ: COVID-19

3392436_s

近くの駅前広場の植え込みに、サツキの花が盛りになっています。
天気もよくて、美しい光景のはずですが、見てもあまり美しいと感じません。
緊急事態宣言で、花を見て楽しむ心の余裕がなくなっているようです。

東日本大震災のあとも似たような感じでした。
あのときは大きな余震がしょっちゅうあって、原発事故もまだ収束していないので、心がずっと緊張状態でした(私は東京在住です)。
緊急事態宣言によって、あのころに引き戻された感じです。


緊急事態宣言以降、国民は緊張状態にあるのではないでしょうか。
飲食店はアルコール提供夜7時まで、営業夜8時までということになりました。居酒屋がこんな要請を守っていては商売にならないので、要請を無視するところがけっこうあるのではないかと思ったら、ほとんどの店が8時で閉めています。
休業する飲食店も多くあります。ということは、要請以上のことをしているわけです。
営業している飲食店にも客はあまり入っていないので、国民も十分に要請に応えています。
休業しないパチンコ店が問題になるのも、ほかの業種はみな要請に応えているからでしょう。
企業も出勤者をへらし、通勤電車はかなり空いています。
地元の商店街やスーパーが混雑するという問題はありますが、緊急事態宣言は想像以上にうまくいっています。

ところが、緊急事態宣言は1か月程度延長されることになりそうです。
確かに感染者はそれほど減少していません。
今のやり方では不十分なのです。なにが不十分かということは、専門家会議が指摘しています。
『「通勤続く限り、8割減無理」 専門家会議がデータ公開』という記事にはこう書かれています。

 また、端末所有者の居住地域別では、神奈川・千葉・埼玉の3県と、東京都との間の接触頻度の減少率は昼間、35~41%と小さかった。大阪を中心とする関西圏でも同様の傾向がみられた。これは東京と大阪のオフィス街への他府県からの移動を反映しているとみられ、提言は「都心等への通勤を続ける限り、生産年齢人口の接触頻度の減少度合いは少ない」と結論した。西浦教授は会見で、「都心との通勤を続ける限りは、(強制ではなく)自粛要請のレベルでは限界があることがデータからわかった」などと述べた。

企業は通勤者をへらしていますが、まだ不十分だということです。

政府はこれまで隠してきましたが、クラスターがいちばん多く生まれている場所は企業です。
「ITmediaビジネスONLINE」4月21日の『新型コロナが複数判明した場所、企業などの「事業所」が医療施設と並び最多――クラスター源か』という記事によると、『SNSの投稿データ分析などを手掛けるJX通信社(東京・千代田)が、公的情報を元に複数人の感染事例が判明している施設の数を集計したところ、「医療施設」と並んで「事業所」が感染者数トップになった』ということです。
事業所クラスター

ですから、人との接触機会8割削減という目標を達成するには、生活インフラを維持する以外の企業活動を停止すること、つまり欧米並みのロックダウンをするしかありません。
専門家会議の指摘を受け止めると、そういうことになります。


では、政府は強力なロックダウンに踏み切るのかというと、そんなことはありません。
安倍首相は4月30日、記者団に対して「5月7日からかつての日常に戻ることは困難だ。ある程度の持久戦を覚悟しなければならない」と語りました。
どうやら今のやり方を続けるつもりのようです。
いや、西村新型コロナ担当相は、経済活動の自粛を緩和し、経済活動再開の手順を検討していることを明らかにしました。

専門家会議の目指す方向と西村大臣の目指す方向が逆で、安倍首相はどちらを目指してるのかよくわかりません。
日本は針路の定まらない船みたいなものです。

欧米並みのロックダウンをすると経済がひどい打撃を受け、かといって安易に緩和すると、北海道のように第二波に襲われます。
その中間の道を行くと、安倍首相の言う「持久戦」になりますが、これとても長くは続けられません。
完全にジレンマです。


このジレンマから脱出する道があります。
それは韓国のやり方を学ぶことです。
だいたい日本人は欧米ばかり見ているので、ロックダウンか否かという発想になってしまいます。
韓国はロックダウンせずにウイルス対策を成功させ、最近では1日の感染者が10人前後に抑えられ、4月30日には感染者ゼロを記録しました。

韓国のやり方は、「徹底した検査と徹底した隔離」というものです。
たとえば大邱市では、新興宗教団体の集会で大規模なクラスターが発生しましたが、市当局は信者約1万人全員の検査を1か月以内に終わらせ、検査件数は約10万件に達しました。最終的に市全体で7000人近い感染者が出ましたが、軽症者用の生活治療センターをつくって隔離し、今では感染は抑え込まれ、市の中心部にある西門市場は買い物客でごった返しているということです。

現時点で日本の感染者数は1万4000人程度で、100万人越えのアメリカは別にして、スペイン、イタリア、イギリスは20万人前後ですから、まだまだ少ない数字です。感染者を徹底的に明らかにするという韓国方式はまだ可能なはずです。

「人との接触機会8割削減」という目標は、市中のどこに感染者がいるかわからないという状況が前提です。感染者が特定され、隔離されれば、外出自粛など必要なくなります。


ただ、日本ではPCR検査数がきわめて少ないという問題があります。
日本はオリンピックのためやら医療崩壊を防ぐためやらでPCR検査数を抑えるという初期対応をとり、検査を受けたいのに受けられないという状況が報道されても、安倍応援団は「検査をふやすと医療崩壊が起きる」「陽性とわかっても治療法がないので意味がない」などと言い、韓国がPCR検査数をふやしてドライブスルー方式を考案したりするのをずっとバカにしてきました。

今はさすがにPCR検査数をふやすべきでないという人はいないでしょう。
安倍首相も「PCR検査体制を1日2万件に増やす」と表明しています。

ところが、安倍首相の表明にもかかわらず、PCR検査数の伸びは遅々としたものです。
4月28日時点の数字ですが、OECD36か国において、人口1000人当たり何人がPCR検査を受けたかという数字で、日本は下から2番目です。

oecd
https://www.oecd.org/coronavirus/policy-responses/testing-for-covid-19-a-way-to-lift-confinement-restrictions/

安倍首相が検査数をふやすと言ってもふえないのは、厚労省、国立感染症研究所、専門家会議などの人間が無能だからです(まさか悪質なサボタージュをしているということはないでしょう)。
そして、安倍首相や自民党は、官僚や専門家が無能なとき、なすすべを知りません。

原発事故のとき、菅直人首相は官僚や専門家が全員無能なことを知ると、どなりまくり、外部の専門家を呼んで、なんとか対処しました。
そこが安倍首相と菅首相の決定的な違いです。

安倍首相は無能の乗組員を従えた無能の船長です。
新型コロナウイルスの海を日本丸は漂うだけです。

human-1375479_1920

新型コロナウイルス感染症に乗じて、世界的に差別的言動がふえています。

中でも目立っているのがトランプ大統領です。
トランプ大統領はWHOのテドロス事務局長をしきりに非難しますが、これはテドロス事務局長がエチオピア出身の黒人だからです。トランプ大統領はオバマ元大統領のように黒人が高い地位につくことが許せません。
トランプ大統領はまた、新型コロナウイルスを“チャイナ・ウイルス”と呼び、「中国はウイルスの発生源で、素早く食い止められたはずだし、そうしていれば世界中に拡大しなかった」と言って、中国に損害賠償請求をする可能性に言及していますが、これも中国人への差別からです。
そして、テドロス事務局長は中国寄りだとして、両者をまとめて非難しています。

確かにWHOと中国はいろいろと間違いを犯しましたが、多くの国の政府も間違いを犯しています。
中でもひどいのがトランプ政権です。オバマ政権が強化したCDC(米疾病管理予防センター)の予算を大幅に削減し、今年1月末には武漢での状況を伝える報告書が上がっていたにもかかわらず、トランプ大統領は「暖かくなる4月にはウイルスは消えてなくなる」などと楽観論を述べて、中国からの入国を禁止する以外の手をほとんど打ちませんでした。トランプ政権が中国に対して損害賠償請求をすることが可能なら、アメリカ国民はトランプ政権に対してもっと巨額の損害賠償請求をすることが可能でしょう。


日本でも、トランプ大統領の尻馬に乗って、テドロス事務局長は中国寄りでけしからんと非難する人がいますが、これも差別意識からきた非難です。

日本人は欧米に対してコンプレックスを持っているので、たとえばWHOの事務局長がフランス人で、アメリカ寄りだったとしても、「あの事務局長はアメリカ寄りだからけしからん」という人はいません。テドロス氏がエチオピア人で、中国寄りだから非難しているのです。

日本人は国際機関のトップを批判したことはほとんどありませんが、例外が潘基文国連事務総長です。それまで国連事務総長批判などしたことのない日本人が、潘基文氏については任期中ずっと批判しっぱなしでした。もちろんこれは潘基文氏が韓国人だからです。潘基文氏がポルトガル人のアントニオ・グテーレス氏に替わると、批判はぱったりとやみました。

新型コロナウイルスは中国起源で、最初は日本と韓国に広がったことから、海外ではウイルスにからめて日本人も差別の対象になりました。
その日本人が“武漢ウイルス”などという言葉を使って、ウイルスと中国人を関連づけようとしているのは情けない限りで、それは日本人にも返ってくることになります。
中国政府の対応を批判するなら、“武漢ウイルス”などという言葉を使わずにするべきです。


新型コロナウイルスに関連した差別はいっぱい見られます。
休業要請に応じないパチンコ店に非難が集中し、店名をさらされたりしているのは、やはりパチンコ業界の社会的地位が低いからでしょう。
キャバレーやクラブなどもそうです。警察が夜の歌舞伎町をこれ見よがしにパトロールするのも公平ではありません。
湘南の海に集まるサーファーがやたら非難されるのも、スポーツ愛好家の中でもサーファーが低く見られているからではないでしょうか。
少なくともゴルフ練習場に集まるゴルファーと扱いが違うと思われます。


テドロス事務局長やパチンコ店を非難している人は、自分が差別感情から非難しているとは思っていないでしょうが、差別主義とはそういうものなので、注意が必要です。

coronavirus-4931452_1920

5月6日に緊急事態宣言を解除するか否かが焦点になってきました。
これを判断するには、とりあえず外国の状況を把握しておく必要があります。

世界でいちばん新型コロナウイルス対策に失敗している国はアメリカです。
現時点でアメリカの感染者数は約98万人、死亡者数は約5万5000人です。
その次がスペインで、感染者数は約22万人、死亡者数は約2万3000人ですから、アメリカの悪さは際立っています。

アメリカはいち早く2月2日に緊急事態宣言を発令し、中国からの入国を全面的に禁止しました。
アメリカのCDC(疾病予防管理センター)はきわめて強力な組織であるとされ、日本もそれを手本に同じような組織をつくるべきだとよくいわれます。
それでいてこの惨状です。

一方、新型コロナウイルス発祥の国である中国は、現時点で感染者数は約8万8000人、死亡者数は約4600人ですが、最近の感染者数は1日数十人です。
武漢でもロックダウンは解除され、全国的に経済活動も復活しつつあります。

アメリカ対中国でいえば、中国の完全な勝利です。
中国はすべて手探りで対策をしてきて成功し、アメリカは中国のやり方を見ていながら失敗しました。
トランプ大統領は“アメリカワースト”というべき状況にブチ切れて、中国やWHOに当たり散らしています。

もっとも、グローバルな視野で見ると、アメリカばかりが失敗しているとはいえません。
感染者数が多い順にいうと、アメリカのあとはスペイン、イタリア、フランス、ドイツ、イギリスと、ヨーロッパの主要国です。
WHOの調べでは、死亡者の約9割が米欧に集中しているということです。


中国周辺の国はどうかというと、韓国、台湾、ベトナム、モンゴルは感染の抑え込みに成功しています。
韓国はロックダウンせずに感染を抑え込み、今では飲食店も普通に営業しています。台湾は無観客ながらプロ野球が開幕しました。ベトナムはいまだに死者0人ですし、モンゴルの感染者は100人以下です(北朝鮮は0人?)。

ということは、「新型コロナウイルスは欧米で猛威をふるっているが、東アジアではほぼ抑え込まれた」ということです。

これはどういうことかというと、BCG接種で新型コロナウイルスにある程度免疫ができるので、BCG接種を実施している国ではあまり感染が広がらないのだという仮説があります。
その仮説もありそうなのですが、もうひとつの仮説として、東アジアではCOVID-19に似たコロナウイルスによる病気(インフルエンザや風邪など)が流行したことがあり、そのため東アジアではCOVID-19に対する集団免疫がある程度できているのだという考え方もあります。
「週刊現代」5月2・9日合併号で経済産業研究所上席研究員の藤和彦氏もこの説を述べています。
ユーラシア大陸では、東から西に行くほどCOVID-19が猛威をふるうという傾向があるので、この仮説も有力だと思われます(とすると、今後南米やアフリカで猛威をふるうことになります)。


そうすると、日本は東アジアで唯一、感染対策に失敗した国ということになります。
その理由は簡単です。日本は東京オリンピック開催のために感染者を少なく見せようとし、PCR検査数を少なくしたからです。クラスターを追跡するという方針は間違っていないと思いますが、検査数が少ないために見逃したクラスターがあって、クラスターといえない個人から個人への感染もあって、市中感染が拡大し、それがここにきて表面化してきたわけです。

とはいえ、まだ日本の感染者数は約1万3000人、死亡者数は約400人です。
東アジアでは劣等生ですが、欧米と比べると優等生です。

最近、日本は医療崩壊の瀬戸際だと言われますが、おそらく勘違いです。
たとえばニューヨーク州(人口約1900万人)の感染者数は約28万8000人、死亡者数は1万7000人です。
東京都(人口約1400万人)の感染者数は約3900人、死亡者数は約100人です。
ニューヨークは医療崩壊の瀬戸際だと言われますが、今のところ持ちこたえています。
2ケタ少ない東京都で医療崩壊が起きたら、世界の物笑いです。
今、医療崩壊が言われるのは、医師会などが利権のためにあおっているのではないでしょうか。


日本は緊急事態宣言以来、欧米のやり方を真似て“準ロックダウン”ともいうべき状態にあります。
しかし、感染者数、死亡者数を見れば、日本は欧米とはぜんぜん違います。
ちょっと前の韓国と同じような状態です。

日本人は明治維新以来、欧米を崇拝し、アジアを軽蔑し、もっぱら欧米から学んできましたが、こと新型コロナウイルスで参考になるのは、韓国や台湾のやり方です。
“準ロックダウン”みたいなことはやめて、経済活動を続けながら、徹底した検査と徹底した隔離で感染を阻止できるのではないでしょうか。

1954327

新型インフル特措法に基づく緊急事態宣言では、外出禁止命令は出せず、外出自粛要請しかできませんが、国民は協力的ですから、外出自粛要請でもちゃんとやればうまくいくはずです。

安倍首相は4月22日、「緊急事態を早期に終息に向かわせるためには、いまが非常に重要な時期だ」と語りましたが、2月25日にも「今がまさに感染の流行を早期に収束するために極めて重要な時期」と語っていたので、まったく進歩がありません。
今回の発言は、詳しくは次のようなものです。
安倍総理「ゴールデンウィークは“オンライン帰省”で」人との接触を減らす「10のポイント」
 22日夕方、安倍総理は「専門家会議で2週間の行動変容を踏まえた現状分析と提言をいただいた。例えば都市部では平日で概ね6割以上、休日では7割以上の減少率となっており、接触機会の“8割削減”を目指すためには、より一層の努力が必要な状況だ。今回、専門家会議で示された、8割を減らすための“10のポイント”には様々な工夫が詰まっている。ゴールデンウィークについても帰省するのではなく、“オンライン帰省”を行うなど、行動を見直していただき、“8割削減“にご協力をお願いしたい」と述べた。
(後略)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200422-00010020-abema-soci
現状は6割、7割の削減で、8割削減の目標に届いていません。

そこで安倍首相が言ったのは「オンライン帰省」です。
マスコミもこの言葉を大きく報じました。
そのため、「オンライン帰省」さえすれば、8割削減の目標が達成できるような雰囲気になっています。


「オンライン帰省」というのはおそらく新語でしょう。
「帰省する代わりにビデオ通話(テレビ電話)の活用を」というのを一言で表現したわけですが、ビデオ通話は活用する人はすでにしているので、今さら言っても意味はありません。

この言葉は安倍首相が考えたのではなく、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議のメンバーが考えたもののようです。
今回、専門家会議は人と人の接触を8割へらすための「10のポイント」というのを作成しました。「オンライン帰省」というのは、その一番目にあります。

・ビデオ通話でオンライン帰省
・スーパーは1人または少人数ですいている時間に
・ジョギングは少人数で。公園はすいた時間、場所を選ぶ
・待てる買い物は通販で
・飲み会はオンラインで
・定期受診は間隔を調整。診療は遠隔診療
・筋トレやヨガは自宅で動画を活用
・飲食は持ち帰り、宅配も
・仕事は在宅勤務。通勤は医療・インフラ・物流など社会機能維持のために
・会話はマスクをつけて

ありきたりのことばかりです。

「筋トレやヨガは自宅で動画を活用」などは、わざわざ言われることではありません。
「飲み会はオンラインで」というのも同じです。
なにか“生活指導”をされているような感じです。
感染症の専門家が言うことではありません。

安倍首相は、この「10のポイント」の中から「オンライン帰省」という言葉を取り上げて、強調しました。そのためネットでは「80代の夫婦にはむり」とか「タブレットがない。配布してくれないか」などという声が上がっているそうです。
帰省をやめてほしいなら、「オンライン帰省」などという言葉を使わずに、「今年のゴールデンウイークは帰省はやめてください」と直接的に言うべきでした。

いや、「帰省をやめてください」というのも、すでに的を外しています。
というのは、帰省を完全にやめたところで、目標の8割削減には届かないからです。
安倍首相としては、たとえば次のように言うべきでした。

「現状からさらに1割か2割の削減をしなければ、緊急事態宣言の解除はできません。今後、外出するのは一日一回にしてください。帰省などはもってのほかです」

「一日一回」というのは、あくまでたとえばの話ですが、このように具体的に言ったほうが伝わります。

これまでは「不要不急の外出は控えてください」と言ってきました。
この言い方はあいまいだという批判もありましたが、各自が都合よく判断できるので、あまり不満はありませんでした。
しかし、「外出は一日一回にしてください」と言われると、束縛感がひじょうに強くなるので、不満も強くなります。
安倍首相にはそれを言うだけの覚悟がなかったのでしょう。

その点、小池東京都知事は「ステイホーム週間」という言葉を使って、外出自粛を強く打ち出しています。
安倍首相と小池都知事を比較すると、安倍首相がここにいたっても問題を把握していないし、国民に訴える力もないことがわかります(考えてみると、安倍首相は昭恵夫人の桜の見えるレストランでの会食や大分県の神社へのツアーなどを正当化してきたので、国民に向かってだめだとは言えないのかもしれません)。


現在、休業要請に応えないパチンコ店とか、サーファーでにぎわう湘南の海などが問題になっていますが、これは小さな問題です。
外出自粛という元栓を閉めないで、パチンコ店とかサーファーとかの小さな蛇口を閉めようとしているようなものです。
蛇口はほかにもいっぱいあるので、その蛇口だけ閉めても、ほかの蛇口の水圧が高まるのがおちです。

罰則のない外出自粛要請でも、リーダーの強い意志と論理的な説得力があれば、しかるべき効果を上げることができるはずですが、安倍首相も専門家も「オンライン帰省」などという言葉遊びに逃げていてはむりです。

face-1294558_1280

新型コロナウイルス対策に成功しているのは女性リーダーの国だ――という説があります。
「Forbes JAPAN」の「コロナ対策に成功した国々、共通点は女性リーダーの存在」という記事が指摘しました(4月18日のTBS系「新・情報7daysニュースキャスター」でもやっていました)。

その記事によると、アンゲラ・メルケル首相のドイツ、蔡英文総統の台湾、ジャシンダ・アーダーン首相のニュージーランド、カトリン・ヤコブスドッティル首相のアイスランド、サンナ・マリン首相のフィンランド、アーナ・ソールバルグ首相のノルウェーは、いずれも感染拡大を抑え込んで、国民の支持も得ているということです。

女性リーダーと男性リーダーでそんな違いがあるのかというと、ある可能性は十分にあります。


狩猟採集生活をしている未開社会では、採集は男女ともにしますが、狩猟はもっぱら男性が担うという性別役割分業があります(ですから、性別役割分業はジェンダーばかりとはいえません)。
その延長線上と思われますが、戦争ももっぱら男性が担ってきました。
そのため男性の頭には戦争の文化がいっぱい詰まっています。


男は、新型コロナウイルス対策をどうしても戦争になぞらえてしまいます。
戦争というのは、攻撃は最大の防御なので、敵を識別し、攻撃するというのが基本です。

ウイルスが国内に侵入していないときは、ウイルスは敵として認識することができ、ウイルスの侵入を防ぐ水際作戦を行うことができます。
これでうまくいけばよかったのですが、世界でうまくいった国はないようです。

ウイルスが国内に入り込んで広がれば、敵がどこにいるかわからないので、攻撃のしようがありません。
もちろん感染者は敵ではありません。
ただ、勘違いして、感染者を差別したり、発熱しているのに旅行したり会社に行ったりした人を非難する人はいますが。

ウイルスが国内に広がった時点でフェーズが変わり、戦争にたとえるなら、国が戦場ではなく野戦病院になったようなものです。
戦うことよりも、医療崩壊を招かないように病床と医療スタッフをふやすとか、マスクや防護服や人工呼吸器を確保するとか、隔離施設を別につくるといったことが最優先の課題になります。
感染拡大を防ぐ手段も、要するに家にじっとしていることですから、“戦う”というイメージではありません。

ところが、男の頭はなかなか“戦う”モードから切り替わることができません。
その典型がトランプ大統領です。最初に中国からの全面入国禁止やEUからの入国禁止という水際作戦を行い、それが失敗したあとも、いまだに中国を攻撃し、WHOを攻撃しています。
安倍首相も、外出自粛を呼びかけながら、「動き回る若者」や「夜の繁華街」を敵視して攻撃しています。


武漢で医療崩壊が起こったとき、日本でも同じことが起こるかもしれないと思って、早めに医療体制を強化することもできましたし、都市封鎖のやり方を参考にすることもできました。
しかし、中国を敵国ととらえている男は、中国から学ぼうとはしません。
韓国もドライブスルー方式のPCR検査などを考えだし、感染拡大を抑え込むことに成功しましたが、日本の男は韓国を敵視しているので、かたくなに韓国から学ぼうとしませんでした。
敵味方を分ける発想はウイルス対策の足かせです。

もちろん日本の男がみんなそうだというのではありません。右翼とか自称保守の男がそういう“戦争脳”なのです。

女性にはそういう“戦争脳”はまずありません。
そのため女性リーダーの国はウイルス対策に成功しているようです。
台湾の蔡英文総統は、中台は敵対関係にあるのに、中国からの情報収集に努めて、いち早く正しい対策を打ち出しました。
それによって台湾の感染者は今でも400人台です。


安倍首相は4月10日に田原総一朗氏と面会した際、「実は私自身、第三次世界大戦は、おそらく核戦争になるであろうと考えていた。だが、コロナウイルス拡大こそ第3次世界大戦であると認識している」と語ったそうです。田原氏が自身のブログで明らかにしました。

今の状況を第三次世界大戦になぞらえる感覚もどうかと思いますが、安倍首相はおそらく戦争の指揮官のつもりでしょう。
ウイルス対策を戦争だととらえると、迷走するしかありません。
それに、戦争の指揮官は野戦病院の内部のことなど考えないので、そのために日本は医療崩壊の瀬戸際になっています。

今の日本に必要なのは、戦争の指揮官でも兵士でもなく、野戦病院の運営をするナイチンゲールです。

星野源と安倍首相

星野源さんの「うちで踊ろう」という曲に、安倍首相が勝手にコラボして、自宅で犬を抱いたり、飲み物を飲んだり、本を読んだりする動画をアップしたことが批判され、炎上しました。

これはすでに十分に批判されているので、あまり付け加えることはありませんが、私が思うのは、安倍首相は人気取りのことばかり考えているのだなということです。
よい政治を行って人気を得るという王道を行くのではなく、印象操作やメディア支配で人気を得るという安易な道を行くことを覚えてしまって(しかも記録改ざんなどで批判をかわすことも覚えてしまって)、星野源さんとのコラボ動画もその延長線上です。

「星野源は若者に人気だそうだから、私が降臨すれば、『安倍さんは私たち若者の気持ちがわかっている』となって、若者の支持率がアップするだろう」みたいに考えたのでしょう。




安倍首相はコラボ動画に添えて、こんなコメントもツイートしていたので、私はこのコメントについて論じたいと思います。

安倍ツイッター

安倍首相は、「友達と会えない。飲み会もできない」というのが若者の平均的な気持ちだと思っています。
「遊びのことばっかり考えているチャライ若者」というのが安倍首相の若者観です。
現在の緊急事態宣言下の状況では「収入がなくなってどうしよう」とか「いつになったら学校が始まるのだろう」といった不安をかかえている若者も多いはずですが、安倍首相の頭にはないようです。

安倍首相は4月7日の記者会見でも「既に自分は感染者かもしれないという意識を、特に若い皆さんを中心に全ての皆さんに持っていただきたい」と、若者を特別視した言い方をしています。まるで若者がペストを媒介するネズミみたいです(正確には媒介するのはネズミのノミです)。

新型コロナウイルスに感染すると、若者であっても命の危険があります。
星野源さんの「うちで踊ろう」にも「生きて踊ろう」「生きてまた会おう」という歌詞があり、お互いの命をたいせつにしようというメッセージが根底にあります。

安倍首相はこのツイッターで若者に呼びかけているのに、若者の命を気遣う言葉がまったくありません。
「多くの命が確実に救われています」や「医療従事者の皆さんの負担の軽減につながります」というように、若者以外の人のことばかり言っています。
これは「お国のために」と言って若者を戦争に送り出すときの論理と同じです。



そうしたところ、夫の東出昌大さんの不倫問題でなにかとお騒がせの杏さんが、星野源さんと同じようにギターの弾き語りをする動画をアップして、話題となりました。
弾き語りしている曲は加川良さん作詞作曲の「教訓Ⅰ」です。
タイミングからして、安倍首相のコラボ動画とツイッターの言葉に反応したものではないかと想像されます。


この動画には、

「自分のことを守ることが、外に出ざるを得ない人を守ることになる。利己と利他が循環するように、一人ひとりが今、できることを」

というコメントがつけられています。
このコメントは、安倍首相のコメントに対しての思いでしょう。

「教訓Ⅰ」の歌詞の最後だけ引用します。
死んで神様と 言われるよりも
生きてバカだと いわれましょうヨネ
きれいごと ならべられた時も
この命を すてないようにネ
青くなって しりごみなさい
にげなさい かくれなさい
https://www.uta-net.com/movie/43159/

安倍首相のコメントと比べると、その違いがよくわかります。
若者の命をたいせつにするかしないかの違いです。


「教訓Ⅰ」は1970年に発表された歌で、ベトナム戦争を背景にした反戦歌です。
アナクロな首相がいるために、50年前の歌が今も歌われます。

monalisa-4893660_1920


若者は感染しても気づかないまま動き回って感染を広げる――そんなことが言われてきました。
まるで若者が感染を広げる犯人みたいです。

厚生労働省は4月13日、新型コロナウイルスの年代別の感染者数と死亡率を初めて公表しました。
それによると、感染者数は20代から50代がもっとも多くなっています。

年代別感染者数
日経新聞4月13日「80~90代死亡率、平均の6倍超 新型コロナで厚労省」より

若者が感染を広げているのなら、20代をピークにした山が形成されそうなものですが、そうはならずに、20代から50代までが同じ高さの高台を形成しています。
要するに「働く世代」が感染し、感染させているのです。

これは考えてみれば当然のことです。
働く人は満員電車に乗り、職場では閉ざされた部屋に机を並べて仕事をし、接客したり、営業活動をしたり、取引先と会ったりしています。働いているだけで、どんな活動的な若者よりも多くの人と接触するわけです。

ところが、働くことが感染拡大の大きな原因であるということがこれまであまり言われませんでした。

厚生労働省は3月1日、新型コロナウイルスの集団感染が確認された場の共通点として、「換気が悪く」「人が密に集まって過ごすような空間」「不特定多数の人が接触するおそれが高い場所」の三条件を挙げ、具体的にスポーツジム、屋形船、ビュッフェスタイルの会食、雀荘、スキーのゲストハウス、密閉された仮設テントなどを示しました。
この中に満員電車が入っていないのはおかしいという声が上がりましたが、厚労省や専門家会議の人間は満員電車の危険性はずっと認めてきませんでした。

イベント自粛やライブハウス、カラオケ、スポーツジムなどの営業自粛が行われるようになると、あとは出社して仕事をすることが最大の感染原因になりました。
在宅勤務が勧められましたが、在宅勤務が可能な仕事は限られています。

しかし、感染防止に「出勤自粛」がいいとはわかっていても、経済のことを考えると、なかなか言えません。
寅さんが「それを言っちゃあおしまいよ」と言うやつです。


そこで、「出勤自粛」を言わない代わりに、ほかのことがターゲットになりました。
本丸を攻めるのはむずかしいので、代わりに手薄な出城を攻めようということです。

安倍首相は2月27日、全国の小中高が臨時休校するように要請しました。まったく唐突な要請で、今となっては感染防止の効果もほとんどなかったことが明らかですが、学校は休みにしても経済的損失がほとんどないので、「出勤自粛」の代わりには好都合でした。

それから、若者がターゲットになりました。
さらに、安倍首相は「夜の繁華街の接客を伴う飲食店の利用自粛」を全国的に呼びかけ、キャバレーやナイトクラブをターゲットにしました。
若者や水商売には社会的な力がないので、攻めるのは容易です。

「夜の繁華街」をターゲットにしたため、夜の繁華街から人はいなくなりましたが、逆に「昼間の商店街」に人があふれるという現象が起きました。


スクリーンショット (15)
夜の歌舞伎町で外出自粛を呼びかける警官(ANNnews20/04/11)

警察は夜の歌舞伎町などを警棒を持ってパトロールし、外出自粛を呼びかけました。
しかし、夜の歌舞伎町にはほとんど人がいないのですから、感染拡大のリスクはほとんどなく、そんなところで外出自粛を呼びかけても意味がありません。
外出自粛を呼びかけるなら、混雑している昼間の商店街でするべきです。
それと、通勤客で混雑している品川駅とか東京駅などでするべきです。


そうしたところ、安倍首相は11日、オフィスでの仕事は「原則として自宅でできるようにする。どうしても出勤が必要な場合でも出勤者は最低7割は減らす」と語り、とうとう本丸への攻めを開始したようです。
厚労省が13日に年代別感染者数を公表したのも、この首相発言を支援する意味でしょう。

もっとも、安倍首相が「出勤者7割減」を言っただけでうまくいくものではありません。
休業補償を求める声がさらに強くなっていますし、安倍首相の本気度が試されます。

ともあれ、感染拡大の最大の原因が明らかになったことで、対策もやりやすくなりました。
警察も、なにか役立つことがしたいなら、夜の歌舞伎町などは放っておいて、丸の内とか新橋とかでサラリーマンに向かって「出勤自粛」を呼びかけるべきです。

chris-barbalis-DHEItlrjOQk-unsplash
(外出自粛中の猫)

緊急事態宣言を受けて、休業要請する範囲について国と都が合意しましたが、その内容がきわめて不可解です。

たとえば百貨店です。
当初、東京都は百貨店にも休業要請する方針と伝えられていましたが、国と都の合意では百貨店は除外されました。
すでにいくつかの百貨店は全面休業を決めていましたが、合意成立によりデパ地下の食料品売場だけ営業再開するところがありました。
百貨店はどこも閑古鳥が鳴いていて、客よりも店員のほうが多いのではないかと思えるぐらいですが、デパ地下の食料品売場は人気で、いつも人がいっぱいです。いちばん感染リスクの高いところを営業するわけです。デパ地下で売られているのは高級品ばかりで、生活必需品ともいえません。

どういうことかと思ったら、朝日新聞の『「なんて勝手」国が百貨店を非難 デパ地下休業で板挟み』という記事にこんなことが書かれていました。

 宣言が出る前の6日夜に公表された東京都の対応案で、要請範囲に百貨店が含まれていたこともあり、百貨店大手は7日に早々と当面の臨時休業を相次ぎ発表した。食料品フロアを含めて全面的に休むところも出た。
 これに、政府側がすぐさま反応した。「なんて勝手なことをしてくれるんだ」。宣言が出た7日夜、大手4社のトップが東京・霞が関の経済産業省の庁舎に呼ばれ、宣言前に当面の休業を決めたことをそう非難された。関係者によると、経産省がこだわっていたのは食料品を売る「デパ地下」だ。

 緊急事態宣言では、各知事が使用制限を要請できる施設に百貨店も含まれている。ただ、食品や医薬品といった生活必需品は除外されており、政府は「『デパ地下』は営業を続けてほしい」(経産省幹部)との立場だった。都心にはタワーマンションに住んでいる人も多くなり、「都心回帰が進み、デパ地下をスーパーのかわりに使う人も多い」(同)との理由からだ。 
https://digital.asahi.com/articles/ASN4B64C6N4BULFA033.html?pn=9

「デパ地下をスーパーのかわりに使う人」とはまさに“上級国民”です。
安倍政権は感染防止よりも上級国民への配慮を優先させていたのです。


居酒屋についても、都は休業要請の対象にしようとしましたが、国は居酒屋の定義があいまいなどとして難色を示し、結局、居酒屋に限らずすべての飲食店は朝5時から夜8時までの営業、アルコールの提供は夜7時までということで合意しました。
まさに足して二で割るという典型的な妥協案です。

飲食店は人と人が接触しやすい場なので、全面的に休業にするか、営業するなら席と席の間隔を開けるとか、店舗の広さに合わせて人数を制限するといった対策が考えられます。
営業時間やアルコール提供の規制は、ウイルスにはまったく関係ないので、意味不明です。

夜8時までというのは、「夜遊びはやめましょう」ということでしょう。
これは「感染防止」ではなくて「道徳」です。


今回の休業要請先リストを見ていると、「遊び」を標的にしていることが見てとれます。
普通の喫茶店は営業できるのに(夜8時まで)、マンガ喫茶とネットカフェは休業要請の対象です。
普通の喫茶店では客同士がしゃべることがありますが、マンガ喫茶やネットカフェでは、客は静かにマンガやネットを見ているだけですから、規制は逆であってもいいはずです。なぜマンガ喫茶やネットカフェが規制の対象になったかというと、マンガやネットという「遊び」があるからとしか考えられません。

ゲームセンターも休業要請されますが、ダンスをしたり太鼓をたたいたりするゲームさえ休止すれば、たいていのゲームは指先だけでやりますから、たいして感染リスクがあるとは思えません。パチンコも同じです。要するに「遊び」だから規制されるのでしょう。

キャバレー、ナイトクラブ、バーも休業要請の対象です。
安倍首相は11日、新型コロナウイルス感染症対策本部で、「夜の繁華街の接客を伴う飲食店の利用自粛」を全国に広げることを表明しましたが、「夜の繁華街」というのもウイルスと関係のないことで、要するに「夜遊び」だからいけないのでしょう。


全国的に青少年健全育成条例というのがあって、夜遊びする青少年はこの条例を根拠に補導されますが、今回の休業要請はそれに似ています。
おとなの夜遊びを取り締まろうというのです。

前から政府の専門家会議が「若者は感染しても気づかないまま動き回って感染を広げている可能性がある」と言って、若者に対して行動を抑制するように求めていましたが、動き回れば感染を広げるのは中高年も同じです。
専門家会議も「感染防止」の中に「青少年健全化」を紛れ込ませています。


要するに政府も専門家も「健康」と「健全」の区別がついていないのです。
そのため「夜遊び」や「若者」を取り締まるほうに行って、肝心の「人と人の接触をへらす」という目的が見えにくくなっています。

3b3f68ca4e80d98397ede86f85b976bf_m

4月7日に緊急事態宣言が出されたものの、休業要請の対象に百貨店、理髪店、ホームセンター、居酒屋などを含めるかどうかで国と都が対立し、発表は10日以降にずれ込みそうです。
これでは「緊急」の意味がありませんし、国民の緊張感もなくなってしまいます。

緊急事態宣言が出された翌日、都心のターミナルはさすがに人出は少なかったようですが、私の地元の商店街(東京都内)はいつもと同じくらいの人出でした。
安倍首相は「人と人との接触機会を最低7割、極力8割削減」という目標を掲げましたが、とうていむりです。

小池都知事や吉村大阪府知事、日本医師会などは政府に対して早く緊急事態宣言を出すように求めていましたが、彼らは緊急事態宣言を出せば魔法の呪文のように効果があると勘違いしていたのではないでしょうか。

日本人は長期戦とか持久戦が苦手で、短期決戦を好みます。
たぶん国土が狭くて山の多い地形が関係しているのでしょう。国土の広いロシア人とか中国人は持久戦が得意です。
また、日本海海戦と奉天会戦で決着した日露戦争の成功体験も影響しているかもしれません。
太平洋戦争でも日本軍はやたら決戦の機会を求め、すぐにバンザイ突撃をして玉砕しました。

安倍首相は記者会見で「ゴールデンウイークが終わる5月6日までの1か月に限定して」外出自粛をお願いすると言いました。そのため、5月6日に緊急事態宣言が終わると思っている人がいるかもしれません。
しかし、安倍首相はそのあとに「この緊急事態を1か月で脱出するためには、人と人との接触を7割から8割削減することが前提です。これは並大抵のことではありません」と言っています。
つまり目標を達成できなければ、あるいは感染者の増加が止まらなければ、緊急事態宣言は継続されるわけです(いったん解除されてもまたすぐ復活するはずです)。

そういう長期戦を想定すれば、休業要請で国と都が対立しているのは、国に分があります。理髪店やホームセンターの休業を主張する都は、短期決戦で勝利できると思っているのです。


武漢市は4月8日、都市封鎖が解除されました。1月23日から2か月半ぶりです。
徹底した外出禁止、企業活動の全面的停止という最強の都市封鎖をしてもこれだけの時間がかかりました。
しかも、封鎖解除といっても、もとに戻れたわけではありません。今でも外出規制は続いて、街にはあまり人影がありません。

イタリアも強力な外出禁止を1か月続けて、最近ようやく新規感染者数が横ばいになり、ピークに達したといわれています。
しかし、これで終わったわけではなく、これからまだまだ都市封鎖は続くことになります。

中国は感染の封じ込めに成功したようですが、そう単純なことではありません。
山中伸弥教授にインタビューした日経新聞の「コロナ禍はいつ収まるのか 京大・山中氏が出した答え」という記事によると、中国の最近の感染者の状況は次のようなものです。

(中国では)ピーク時は1日に1000人以上の新規感染者が発生していましたが、3月中旬から100人未満となり、下旬には1日の新規感染者数が10人から20人台の日が続いていました。ところが、3月末から再び100人を超える日が増えてきたのです。
中国政府は人民に対して厳しい外出規制を課してきましたが、3月に入ってから状況に応じて都市ごとに規制を緩めました。その結果、週末になると商業施設や観光施設が混雑するようになりました。感染の第2波がやってくるリスクが、ひたひたと高まっているのです。
世界保健機関(WHO)の基準ではウイルスの潜伏期間の2倍の期間、感染者が新たに発生しなければ終息宣言となります。新型コロナウイルスの潜伏期間は2週間とみられていることから、少なくとも4週間、感染者数がゼロにならない限り、ウイルスとの闘いは終わりません。
独裁的な中国共産党をもってしても、感染者数をゼロにするのは至難の業です。21世紀の世界では、人の往来を完全にシャットアウトすることは誰にもできません。
つまり緊急事態宣言を出して感染拡大の第1波を乗り越えられたとしても、新型コロナウイルスを完全に封じ込めるには相当長い期間がかかるのは(残念ながら)間違いありません。山中教授が「1年は続く」と指摘したのは、感染力の極めて高い新型コロナウイルスの本質を見抜いているからです。
もちろん、バイオテクノロジーを駆使すれば、効果的なワクチンや治療薬も開発できるでしょう。ただ、その未来がやってくるには年単位の時間がかかります。それまでの間、私たちは医療崩壊を防ぎながら、何とかしのいでいくしかありません。山中教授は、ウイルスとの闘いをマラソンに例えました。もはや、長期戦で臨むことを覚悟するしかありません。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57816670Y0A400C2000000/
北海道ではいち早く独自に緊急事態宣言を出して、一時は感染を抑え込みましたが、9日の発表では過去最高の18人の感染者が出たということで、またぶり返しています。


私は今の新型インフルエンザ等対策特別措置法による緊急事態宣言では外出自粛要請しかできないので、法律を改正して罰則つきの外出禁止命令を出せるようにするべきだと考えていましたが、そうしたところで長期戦になります。苦しい戦いが長く続くのはたいへんです。
長期戦が可能なようにゆるいやり方をするのが賢明です
ただ、そうすると感染者は増えていきます。


現時点で日本における新型コロナウイルス感染者の数は約5500人です。
日本の人口を計算しやすいように1億1000万人とすると、10万人に5人がかかる病気です。
死亡者は100人をちょっと越えたところで、死亡率は約2%ですから、今のところ10万人に0.1人が死ぬ病気です。
今後、この数字が10倍、さらには100倍になったところで、それほど恐れることはないのではないでしょうか。

ちなみに日本では2018年に9万4654人が肺炎で亡くなっています。


テレビの解説で、「緊急事態宣言をした以上、対策を小出しにするという戦力の逐次投入はやめるべきだ」と語っている人がいました。
短期決戦の勝利があると思っているのです。
小池都知事や安倍首相もそうかもしれません。
“休業補償なき休業”も短期決戦を前提としています。

しかし、この戦いに早い勝利はありません。
長期戦、持久戦に持ち込んで、医療崩壊を防ぎながら特効薬かワクチンの開発を待つというのが正しい戦略です。

cbf894363193ca989202440b5d4b8489_m

このところ新型コロナウイルス感染者数が増大し、「緊急事態宣言」が出される雲行きです。

しかし、感染者率のもっとも高い東京でも、感染者は1000人をちょっと越えたところです。東京の人口が1千万人強であることを考えると、1万人に1人の割合です。死亡率は数パーセントですから、私自身はまったく脅威に感じません。
脆弱な医療システムに合わせた緊急事態宣言かなと思います。

ただ、感染者数が正確に把握できているかという問題があります。
感染者数の増大は、3月24日にオリンピック延期が決まってから始まったという印象があります。意図的にPCR検査数を増やしたということはないでしょうか。

「新型コロナウイルス国内感染の状況」というサイトから、毎日の新規感染者数のグラフ(約2か月間)と、毎日のPCR検査実施数のグラフ(1か月間)を引用します。

感染者数新規

検査人数

PCR検査数はバラツキが大きくてわかりにくいですが、増大する傾向にはあるものの、オリンピック延期決定後にとくに増えたとはいえないようです。
一方、日々の感染者数は着実に増えているので、「感染が拡大している」ということはいえます(オリンピック延長決定後に急に感染者が増えたような印象があるのは、安倍首相や小池都知事の態度が変わったためかもしれません)。

むしろ問題は、検査数がまだ低い水準にあることです。
世界各国と比べても低すぎます。

正確な感染者数を把握しないまま緊急事態宣言を出すと、困ったことになります。
普通は新規感染者数がへってくれば宣言を解除することになりますが、もともと感染者数を低く抑えていると、ほんとうにへったかどうかわかりません。
つまり緊急事態宣言を出す以上は、感染者数をある程度正しく把握していないといけないのです。

これからしばらくは検査要求に対してキャパいっぱいに応えて検査し、できる限り正しい感染者数を出して、緊急事態宣言はそのあとにするべきだと思います。


緊急事態宣言を出すとどうなるのでしょうか。
都市封鎖、ロックダウンという言葉があります。武漢市では都市封鎖が行われ、その直前には多数の人が武漢市から脱出するという事態がありましたし、イタリア北部からも多数の人が駅に詰めかけ、南部に脱出しようとしました。
一部の都市が汚染された場合は、こうした文字通りの都市封鎖をしなければなりませんが、今の日本は東京だけというわけではないので、文字通りの都市封鎖は無意味です。

もうひとつの都市封鎖の意味は、強力な外出禁止措置です。
たとえばフランスでは、1日1度の買い物や運動や犬の散歩のため以外の外出は禁止され、街角に警官が立っていて、違反者は罰金刑です。

感染防止には人と人が接触する機会をできる限りへらすことですから、外出禁止がいちばん有効です。
多くの商店や飲食店も休業です。武漢では企業活動も停止しましたが、ヨーロッパでは企業はある程度営業をしているようです。生活必需品の物流とライフラインの維持はされます。

しかし、日本の非常事態宣言では法的に外出禁止をすることはできません。
ということは、これまで行われてきた外出自粛要請が続くだけです。
要するにいちばん肝心のことができないのです。
ザル法という言葉がありますが、ザルの真ん中に大きな穴が空いているという法律です。
武漢市で強力な外出禁止措置がとられているのを横目で見ながら、日本の国会では外出禁止のできない欠陥法をつくっていたのです。


ただ、緊急事態宣言が出ると、「政府が法律に基づく緊急事態宣言を出した」という緊張感から、しばらくは外出自粛が広く行われるでしょう。
しかし、長期化すると気がゆるんできて、外出する人が増えてきます。
最初は自粛している人は自粛しない人を非難するでしょう。人は不公平だと思うと、不公平なことをする人に“正義の怒り”を覚えるからです。
しかし、自粛しない人がある程度まで増えると、今度は自分が自粛をやめることで不公平を解消しようとし、“自粛体制”が一気に崩壊するということが考えられます。

これまで自粛要請に素直に従うというのが日本人の“美徳”でしたが、アリの一穴で、これをきっかけに日本人のモラルハザードが進むかもしれません。


国会は新型インフルエンザ等対策特別措置法が欠陥法であることを認めて、緊急事態宣言を出す前に、罰則つきの外出禁止命令が出せるように法律を改正するべきです。

このページのトップヘ