村田基の逆転日記

親子関係から国際関係までを把握する統一理論がここに

カテゴリ: COVID-19

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記者会見で「気のゆるみ」を連発する西村康稔新型コロナ担当大臣(ウソ)

西村康稔新型コロナ担当相は5月16日の記者会見で、「39県の解除で、あちこちで少し気のゆるみが見られることを心配している。気のゆるみがあると、再び大きな流行になる」などと「気のゆるみ」という言葉を連発し、「上から目線」「責任を国民に転嫁している」などの批判の声が上がっています。

批判されるのは当然です。
新型コロナ担当相という責任ある立場の人間が「気のゆるみ」などという客観性のない言葉を使ってはいけません。「こういう行動がふえているのはよくない」と具体的に言うべきです。通勤客がふえているのは、「つい気がゆるんで通勤した」ということではないはずです。
それに、「気のゆるみ」という言葉は、学校やら部活やらで「お前らは気がゆるんでるぞ」と説教された記憶を喚起するので、不愉快です。

そして、根底には、国民の間に「いったいいつまで気を引き締めてなければいけないのか」という不満が高まっていることがあります。


2月初めごろ、新型コロナウイルスの実態がよくわからず、恐怖をあおる報道が過熱したため、「正しく怖がる」ということが言われました。
それにならって言えば、今は「正しく気をゆるめる」ことが必要です。
「正しく怖がる」と「正しく気をゆるめる」はコインの両面みたいなものです。


私が新型コロナウイルスについてこのブログで初めて書いた記事は「新型肺炎で日本人はみな視野狭窄に」というものでした。
その記事に、肺炎はもともと怖い病気で、日本では肺炎によって年間約9万5000人の死者(誤嚥性肺炎を除く)が出ているのだから、そこに新型コロナウイルスの肺炎が加わったところでたいしたことはないだろうと書きました。

その後、イタリア、スペインで爆発的な感染拡大が起きると、私も「たいしたことはない」とは言えなくなりました。
このころは「どこまで感染が拡大するのかわからない」という恐怖があったと思います。

しかし、日本で緊急事態宣言が出され、1か月余りして感染者数がへってくると、「これぐらい自粛すれば感染拡大は防げる」ということが体感でき、オーバーシュートや医療崩壊への無闇な恐怖はなくなりました。


恐怖がなくなれば、今後のことが冷静に考えられます。
そうすると、つねに第二波に警戒し続けなければならないことがわかります。
韓国や中国でも、やはり警戒をゆるめるとクラスターが発生しますし、北海道でも第二波がきました。
安倍首相も緊急事態宣言を延長するときに「持久戦を覚悟しなければならない」と言いました。

つまりこれからは「持続可能な自粛」をすることになります。
どれくらい持続するのかというと、最低でも1年、おそらく2年ぐらいになるでしょう。
そうすると、今よりもかなり気をゆるめないとやっていけません。
いや、精神の問題ではなく経済の問題としても、今の状態ではやっていけないはずです。

そういうことを考えると、「気のゆるみ」を戒めるばかりの西村大臣は、「持久戦の覚悟」を言う安倍首相ともちぐはぐで、長期戦略の欠如を感じさせます。

自粛をゆるめ、経済活動を再開すると、第二波がくるかもしれません。そうするとまた自粛を強め、波が収まるとまた自粛をゆるめるということを繰り返し、第三波、第四波をやりすごすうちに「持続可能な自粛」体制が確立されることになります。


それは新型コロナウイルスとある程度共存するものになるはずです。

先ほど肺炎による死者は年間約9万5000人だと言いましたが、その中で最も多い肺炎の原因は肺炎球菌によるもので、肺炎球菌による死者は年間約1万7800人です。
肺炎球菌に効くワクチンがあって、高齢者には接種が推奨されていますが、それでもこの死者数です。

現時点でわが国における新型コロナによる死者は700人弱です。
おどろくほど少数です。
日本人は肺炎球菌と共存しているのですから、新型コロナウイルスと共存できないわけがありません。
今よりもうんと気をゆるめてもいいはずです。

下のグラフのどこかに「新型コロナウイルス」という項目ができると考えればいいのではないでしょうか。

肺炎の原因

https://www.haien-yobou.jp/pneumococcal_infection.xhtml

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ツイッターで「#検察庁法改正案に抗議します」がトレンド1位になって話題となりましたが、その後、「#福山哲郎議員に抗議します」も一時トレンド1位になりました。

おそらく「#検察庁法改正案に抗議します」を真似て「#福山哲郎議員に抗議します」がつくられたのでしょう。
しかし、検察庁法改正案は国の根幹に関わる重大問題ですが、福山哲郎議員は一人の野党議員(正確には立憲民主党幹事長)ですから、重みがぜんぜん違います。
どうしてトレンド1位になったのでしょうか。

どうやら福山議員が国会で政府の新型コロナウイルス対策専門家会議の尾身茂副座長に質問したときの態度が失礼だったということのようです。
立民・福山哲郎幹事長に抗議殺到! 尾身氏への態度に医療従事者カンカン 「#福山哲郎議員に抗議します」ツイッタートレンド1位に 
 新型コロナウイルスをめぐる、国会審議の動画がネット上で炎上している。立憲民主党の福山哲郎幹事長が11日の参院予算委員会で、政府・専門家会議の尾身茂副座長(地域医療機能推進機構理事長)に質問したものだ。その言動について、ツイッター上で、「#福山哲郎議員に抗議します」がトレンド1位になり、医療関係者からも批判の声が上がっている。
 福山氏は注目の予算委員会で、国内の感染者を報告数の10倍程度とする専門家の推定を示して、「蓋然性があるのではないか」と質問した。
 これに対し、尾身氏は「今の報告数よりも多いのは間違いないと思うが、すべての人に検査をしているわけではなく、10倍かどうかは私には言えない」とした。
 その後、福山氏は「10倍いる可能性も否定もできないし、肯定もできないんですよね?」と尋ねた。
 尾身氏が答弁席に向かう途中、安倍晋三首相が何かを話したため、福山氏は「何、指導してんですか!」と声を荒らげた。
 一時速記が止まった後、尾身氏は、医療機関に行かない人の方が感染リスクが低いと考えられることから、東京都が発表している陽性率よりも感染者の数は少ないことが一般的である-などと感染状況について説明した。
 その間、福山氏は「ちょっと(回答を)短くしてもらえます?」などと話したほか、最後には「全く答えていただけませんでした。残念です」と言い切った。
 この動画が怒りを買っているのだ。
 尾身氏は1978年に自治医科大学医学部を卒業し、99年から2009年まで世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局長を務めた。SARS(重症急性呼吸器症候群)対策の陣頭指揮を執り、今回の新型コロナ対策でも日々奮闘している。世界的権威だ。

 福山氏独特の質問姿勢のせいか、ツイッターでは、「#福山哲郎議員に抗議します」というワードがトレンド1位になり、「#尾身先生を応援しよう」というワードもトレンド入りした。
 医療関係者などから、「(尾身先生は)世界レベルでも誇れる経歴の持ち主」「あれが物尋ねる立場の人間の態度か?」「専門家会議の先生たちは、本当に頑張ってくれています」「パワハラはもうたくさん」「情けない。怒りがふつふつと湧いてくる」などとコメントが寄せられている。
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/200513/dom2005130006-n1.html

福山議員がほんとうに失礼な態度だったのか、動画で確かめてみました。


(尾身副座長への質問は9分すぎごろから)

これを見る限りでは、ぜんぜん失礼な感じはしません。

ただ、次の動画では福山議員が尾身副座長の答弁中に「時間ないです」とか「ちょっと短くしてください」と言っているようです。



これが失礼かどうかは、各自が判断してくださいというしかありません。

なお、この動画では安倍首相が「数字じゃないんだよ」とヤジを飛ばしたことになっていて(正確には聞き取れませんが)、それで質疑が一時中断します。
相変わらず安倍首相は国会でヤジを飛ばしているようで、こちらも問題です。


福山議員と尾身副座長の議論がかみ合っていないのは事実です。
福山議員は、実際の感染者は把握された感染者の10倍であるという言質を取りたいようですが、それに対して尾身副座長は「10倍か15倍か20倍か誰にもわかりません」と言います。
私は、これは「10倍から20倍」という立派な答えだと思いましたが、福山議員は「わからない」という意味だと解釈します。
実際、尾身副座長はそのあとも明確な言質を与えない答弁をするので、福山議員の解釈が正しいのかもしれません。

実際の感染者数はどれくらいかというのは重要な問題です。正確には答えられないにしても、専門家なら与えられたデータからある程度推測できるはずです。はぐらかしの官僚答弁をするのはいただけません(もしかすると安倍首相の「数字じゃないんだよ」のヤジが影響したのでしょうか)。


以上のことについては「 ハーバー・ビジネス・オンライン」が「批判された立憲・福山哲郎議員の尾身茂副座長への質疑はどんなものだったのか? 全文起こして検証してみた」という詳しい検証記事を書いています。
この記事は、福山議員の態度より尾身副座長のはぐらかし話法により問題があるとしています。


いずれにしても、福山議員の尾身副座長への態度は、取り立てて失礼だったとはいえません。
それでいて「#福山哲郎議員に抗議します」がトレンド1位になったのは、なんらかの意図的な動きがあったからでしょう。

ひとつには、「#検察庁法改正案に抗議します」が盛り上がって政権が批判されているので、対抗して野党を批判しようという意図が想像されます。
しかし、今、野党を攻撃しても、なにもいいことはありません。

よく「今は国難だから政権批判はするべきでない」という人がいますが、そんなことはありません。政権批判をすることで現に政策が変化しています。
国難のときの野党批判こそまったく意味のない行為です。


野党批判のほかに、もうひとつの意図もあると思われます。
それは専門家会議への批判を封じることです。

安倍首相は一斉休校要請を専門家の意見を聞かずに決めたりしていましたが、最近は専門家の判断を重視しているらしく、5月14日の記者会見でも「専門家」という言葉を連発しています。

その判断については、今回、専門家の皆様の御協力を得て、感染の状況、医療提供体制、監視体制の3つについて、具体的な数値なども含め、解除の客観的な基準を策定いたしました。

こうした評価について、尾身会長を始め、諮問委員会の専門家の皆さんの賛同を得て、今月末までの期限を前倒しして、本日付で39県の緊急事態宣言を解除することといたしました。

1週間後の21日をめどに、もう一度、専門家の皆さんに、その時点で今回決定した解除基準に照らして評価いただき、可能であれば、31日を待つことなく、解除する考えです。

レストランなどの飲食店、百貨店や商店街、各種の商店、映画館、劇場、博物館や美術館などの文化施設、公共交通機関、さらにはホテルや旅館、80を超える業界ごとに、専門家の助言の下、本日、感染予防のためのガイドラインが策定されました。

専門家の皆さんが取りまとめた新しい生活様式も参考に、3つの密を生活のあらゆる場面で避けていただきたいと考えています。
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/statement/2020/0514kaiken.html
安倍首相は「専門家」を盾にして自分を守る作戦のようです。
そのためには専門家に権威がなければなりません。
専門家の権威を守るために、尾身副座長にややきびしい質問をした福山議員を集中的に攻撃して、今後専門家を批判しにくい空気をつくろうとしていると思われます。

尾身副座長は、最初は医者でしたが、厚生省に入り、それからずっと官僚人生を歩んできた人です。今も「政府の専門家会議」の副座長ですから、政府の一員として野党から追及されるのは当然です。

そもそも専門家会議が専門家らしいことをしてきたかといえば、はなはだ疑問です。
クルーズ船の対応で失敗し、PCR検査数をふやさず、市中感染を拡大させてきました。

専門家会議が多少専門家らしく見えるのは、“8割おじさん”こと西浦博北大教授の感染症の数理モデルがあるからですが、西浦教授は厚生労働省のクラスター対策班に属し、専門家会議のメンバーではありません。そのため、西浦教授の主張と専門家会議の主張はつねに微妙に食い違っています。

日本の感染症の専門家は“感染症ムラ”とでもいうべきものを形成しており、テレビに出てくる専門家もほとんどがそうですから、当たり障りのないことしか言いません。(例外は岡田晴恵白鴎大教授ぐらいです)。

マスコミもほとんど感染症の専門家のことを批判しません。
最近では週刊新潮5月21日号に『「尾身茂・専門家会議」に「社会の命運」を丸投げされた日本の悲喜劇』という記事があったぐらいです。

専門家会議が聖域化すれば、間違った対策がまかり通ってしまいます。

福山議員はなにか間違ったことをしたわけではなく、批判されているのは「専門家に対する態度が失礼だ」ということです。
新型コロナによる国難のさ中に、一野党議員の礼儀について何十万ものツイートをするほど日本人は愚かな国民ではないので、なんらかの陰謀があったのは間違いありません。

バンクシー
「Banksy (@banksy) • Instagram photos and videos」より

上の絵は覆面アーチストのバンクシーによる新作です。
イギリス南部のサウサンプトン総合病院に届けられ、救急病棟近くのロビーに飾られました。
バンクシーの「あなた方のご尽力に感謝します。白黒ではありますが、この作品で少しでも現場が明るくなることを願っています」というメモが添えられています。
今秋まで同病院に飾られ、その後はNHS(国民保健サービス)の資金を調達するためにオークションにかけられるということです。

マスコミは、新型コロナウイルスの感染拡大で過酷な仕事を強いられている医療従事者への感謝を表現した絵というふうに報じています。
看護師の人形のほかにバットマンやスパイダーマンの人形もあるので、「看護師はヒーローである」ということを表現しているという解釈です。

しかし、バンクシーのことですから、そんな単純なことではなく、なにかの皮肉や寓意があるはずです。

バットマンやスパイダーマンの人形が入っているカゴは、どう見てもごみ箱です。
子どもはバットマンやスパイダーマンに飽きて、ごみ箱に捨て、今は看護師人形で遊んでいますが、いずれ看護師人形にも飽きて、ごみ箱に捨てることを暗示しています。


イギリスの看護師には外国からきた非白人の人が多いそうです(たいていのヨーロッパの国はそのようですが)。
日本でも医者と看護師は差別的関係にありますが、イギリスではそこに人種差別も加わるわけです。

「note」でそのことを指摘している人がいました。

今日はフランスのニュースで、バンクシーが新しく描いた絵が病院に飾られたという話をしていました。これを見た人たちは絶賛しているんです。
この絵は白人の男の子が、今までのヒーローはカゴに捨てられているように置かれている中、黒人の看護師が新たなヒーローとして遊ばれている絵です。
皮肉すぎませんか。それを白人の病院関係者の方が絶賛している姿がものすごく違和感です。この絵を見た時に私はいろんな感情が自分の中で渦巻きました。
https://note.com/momusplay/n/nf2c1cead3a6e

バンクシーのメモに「白黒ではありますが」という言葉が入っているのは、人種問題を暗示していそうです。
つまりこの絵は、過酷な現場で奮闘する看護師をヒーローとしてたたえつつも、看護師の多くが非白人であるという差別構造を皮肉っていると解釈できます。


ただ、私はそれだけではないと思います。

まずひとつは、捨てられたバットマンやスパイダーマンは、悪と戦うヒーローだということです。
というか、ヒーローというのは悪と戦うと決まったものです。
しかし、看護師のヒーローは悪とは戦いませんし、おそらくなにとも戦いません。
そういうヒーロー像の転換ということもバンクシーは言いたかったのではないかと思います(この絵のタイトルは「ゲームチェンジャー」というようです)。


そして、いちばん肝心なのは、子どもは看護師のヒーロー人形で遊ぶことにいずれ飽きるだろうということです。

現在、多くの人が医療従事者を持ち上げ、つまりヒーロー扱いして、感謝の言葉を述べています。
本気で言っているかどうかは誰にもわかりません。

たとえば、安倍首相は5月4日の記者会見でこのように語りました。
 各地の病院で集団感染が発生している状況を大変憂慮しています。しかし、医師、看護師、看護助手、そして病院スタッフの皆さんは、そのような感染リスクと背中合わせの厳しい環境の下で、強い使命感を持って、今この瞬間も頑張ってくださっています。全ては私たちの命を救うためであります。医療従事者やその家族の皆さんへの差別など、決してあってはならない。共に心からの敬意を表したいと思います。
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/statement/2020/0504kaiken.html
「心からの敬意」という言葉で医療従事者を持ち上げていますが、本気でそう思うなら、医療従事者に特別手当を支給すればいいのです。
現に大阪府では、基金を設けて寄付を募り、吉村知事は早ければ5月中にも、府内の病院で新型コロナ感染症の入院患者の治療にあたる医師など医療従事者に一律20万円を支給する考えを表明しています。

言うのはタダですから、いい人に見られたいために、うわべだけで医療従事者をヒーローとしてほめたたえる人もいます。
そういう人は、コロナ禍が過ぎ去れば、子どもがオモチャに飽きるように、医療従事者のことなどすっかり忘れてしまうだろう――バンクシーはあの絵にそういう皮肉を込めたのだと思います。

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首相官邸HPより

安倍首相は5月4日、緊急事態宣言の延長を発表する記者会見を行いました。
安倍首相の両側にはプロンプターが配置されています。
安倍首相はプロンプターの読み方が上達して、しっかりと言葉をかみしめるように発声するのが板についてきましたが、聞いているとむなしくなってきます。言葉に心がないからです。

安倍首相の記者会見の動画と書き起こし文は、官邸ホームページのこちらで見られます。

「新型コロナウイルス感染症に関する安倍内閣総理大臣記者会見」

ウイルス対策のあり方についてはこれまでも書いてきたので、今回は安倍首相の言葉づかいと、その背後にある発想に注目してみました。


安倍首相は緊急事態を1か月延長する決断をすることは「断腸の思い」だと言いましたが、私はこの言葉に違和感を覚えました。
普通は「苦渋の決断」とか「忸怩たる思い」と言うところです。

「断腸の思い」という言葉は、子猿を人間に奪われた母猿が百里余りも子猿を追いかけてきて死に、母猿の腹を裂いてみると腸がずたずたに断ち切れていたという故事に由来し、はらわたがちぎれるほどの耐え難い悲しみをいいます。
国語辞典には「駅伝のメンバーを決める時に、断腸の思いで故障がちなキャプテンを外す決断をした」という例文が載っています。

安倍首相に「断腸の思い」なんてあるのかと思いましたが、一応こういう文脈の中で使われています。

 当初予定していた1か月で緊急事態宣言を終えることができなかったことについては、国民の皆様におわび申し上げたいと思います。
 感染症の影響が長引く中で、我が国の雇用の7割を支える中小・小規模事業者の皆さんが、現在、休業などによって売上げがゼロになるような、これまでになく厳しい経営環境に置かれている。その苦しみは痛いほど分かっています。こうした中で、緊急事態を更に1か月続ける判断をしなければならなかったことは、断腸の思いです。

こういう意味なら「断腸の思い」という言葉は正しく使われています。
しかし、安倍首相は中小・小規模事業者を助けようと思えば助けられる立場です。ほんとうに「断腸の思い」がするなら、十分な補償をするはずです。
現実にはろくな補償をしていないので、「断腸の思い」という言葉にはやはり心がこもっていないということになります。

なお、安倍首相は「当初予定していた1か月で緊急事態宣言を終えることができなかったことについては、国民の皆様におわび申し上げたい」と言っていますが、なにが悪かったかを言っていません。
ここは「甘い見通しで5月6日と言ったことをおわび申し上げたい」と言うところです。
こういうことをごまかすので、「おわび」の言葉に心がこもりません。

安倍首相は「今から10日後の5月14日を目途に(中略)、地域ごとの感染者数の動向、医療提供体制のひっ迫状況などを詳細に分析いただいて、可能であると判断すれば、期間満了を待つことなく、緊急事態を解除する考えであります」と語りましたが、解除の基準を示していないことが批判されています。
「国民にとってはきびしい内容ばかりなので、少し甘いことも言っておこう」みたいなことで言ったのでしょう。
前に「5月6日まで」と言ったのと同じです。反省しないので進歩がありません。

安倍首相は、PCR検査を1日2万件可能にすると言ったのに実現できていないという問題を質疑応答で追及されましたが、ここでも「人的な目詰まりがあった」などとわけのわからない言葉でごまかして、自分の非を認めませんでした。


それから、安倍首相の言葉で気になるのが、「感謝」や「御礼」という言葉を連発するところです。
そういう部分を集めてみました。

協力してくださった全ての国民の皆様に心から感謝申し上げます。

子供たちには、長期にわたって学校が休みとなり、友達とも会えない。外で十分に遊べない。いろいろと辛抱してもらっています。心から感謝いたします。

緊急事態の下でも、スーパーや薬局で働いている皆さん、物流を支えている皆さん、介護施設や保育所の職員の方々など、社会や生活を様々な場所で支えてくださっている皆さん、そうした皆さんがいて、私たちの暮らしが成り立っています。改めて、心から感謝申し上げます。

今年は、大型連休中も不要不急の外出を避け、自宅での時間を過ごしてくださっている皆さんに、改めて、衷心より御礼を申し上げます。

例年、ゴールデンウィークには実家に帰省するなど、家族で旅行していた皆さんも多いと思いますが、今年はオンライン帰省などのお願いをしております。そうすることで皆さんの、そして愛する家族の命を守ることができます。御協力に感謝いたします。

また、国の権限強化等についてでありますが、今、言わば強制力を伴わない中におきましても、例えば夜の繁華街等についても営業しているのは1割以下の地域が多いわけでありまして、大変な御協力を頂いている。本当に感謝申し上げたいと、こう思っています。

そもそも罰則がない中でそこまでいただいている、協力を頂いていることに感謝を申し上げたいと思いますが、

国民は努力し、苦しさに耐えていますが、それは安倍首相に対してやっているわけではないので、安倍首相から感謝されてもとまどうだけです。
安倍首相は、「自分が要請したから国民は努力したり耐えたりしている」と勘違いしているようです。

勘違いは、次のようなところにも表れています。

 感染のおそれを感じながら、様々な行動制約の下での生活は緊張を強いられるものです。目に見えないウイルスに強い恐怖を感じる。これは私も皆さんと同じです。しかし、そうした不安な気持ちが、他の人への差別や、誰かを排斥しようとする行動につながることを強く恐れます。それは、ウイルスよりももっと大きな悪影響を私たちの社会に与えかねません。誰にでも感染リスクはあります。ですから、感染者やその家族に偏見を持つのではなく、どうか支え合いの気持ちを持っていただきたいと思います。

差別や偏見ではなく支え合いの気持ちを持つべき――というのは要するに道徳です。
首相が国民に対して道徳を説教しているわけです。
首相は国民よりも精神的な高みに立っていることになります。


道徳を重視するのは自民党の党是です。
自民党は一貫して道徳教育の推進を主張してきて、とうとう道徳の教科化を実現させました。
多くの国民は、「道徳を説かれるのは子どもだけで、自分が説かれるわけではない」と思って、道徳教育を容認してきました。
しかし、安倍首相は新型コロナ騒ぎに乗じて、子どもだけではなく国民に対しても道徳を説くようになったわけです。

安倍首相は国会答弁で何度も「私は立法府の長」と発言し、さらには「私は総理大臣ですから、森羅万象すべてを担当しております」と言ったこともあります。
森友学園問題や加計学園問題や桜を見る会問題などのスキャンダルを嘘と文書改ざんなどで乗り越え、新安保法制や特定秘密保護法などで支持率が落ちてもその都度回復し、そうした経験から万能感を持つにいたったのかもしれません。

ですから、新型コロナ問題も、適当に対応していればやがて解決し、支持率も回復するだろうという認識なのでしょう。
そうとでも考えなければ、こんないい加減なやり方を続けていられるわけがありません。
長期政権の弊害がきわまった感じです。

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近くの駅前広場の植え込みに、サツキの花が盛りになっています。
天気もよくて、美しい光景のはずですが、見てもあまり美しいと感じません。
緊急事態宣言で、花を見て楽しむ心の余裕がなくなっているようです。

東日本大震災のあとも似たような感じでした。
あのときは大きな余震がしょっちゅうあって、原発事故もまだ収束していないので、心がずっと緊張状態でした(私は東京在住です)。
緊急事態宣言によって、あのころに引き戻された感じです。


緊急事態宣言以降、国民は緊張状態にあるのではないでしょうか。
飲食店はアルコール提供夜7時まで、営業夜8時までということになりました。居酒屋がこんな要請を守っていては商売にならないので、要請を無視するところがけっこうあるのではないかと思ったら、ほとんどの店が8時で閉めています。
休業する飲食店も多くあります。ということは、要請以上のことをしているわけです。
営業している飲食店にも客はあまり入っていないので、国民も十分に要請に応えています。
休業しないパチンコ店が問題になるのも、ほかの業種はみな要請に応えているからでしょう。
企業も出勤者をへらし、通勤電車はかなり空いています。
地元の商店街やスーパーが混雑するという問題はありますが、緊急事態宣言は想像以上にうまくいっています。

ところが、緊急事態宣言は1か月程度延長されることになりそうです。
確かに感染者はそれほど減少していません。
今のやり方では不十分なのです。なにが不十分かということは、専門家会議が指摘しています。
『「通勤続く限り、8割減無理」 専門家会議がデータ公開』という記事にはこう書かれています。

 また、端末所有者の居住地域別では、神奈川・千葉・埼玉の3県と、東京都との間の接触頻度の減少率は昼間、35~41%と小さかった。大阪を中心とする関西圏でも同様の傾向がみられた。これは東京と大阪のオフィス街への他府県からの移動を反映しているとみられ、提言は「都心等への通勤を続ける限り、生産年齢人口の接触頻度の減少度合いは少ない」と結論した。西浦教授は会見で、「都心との通勤を続ける限りは、(強制ではなく)自粛要請のレベルでは限界があることがデータからわかった」などと述べた。

企業は通勤者をへらしていますが、まだ不十分だということです。

政府はこれまで隠してきましたが、クラスターがいちばん多く生まれている場所は企業です。
「ITmediaビジネスONLINE」4月21日の『新型コロナが複数判明した場所、企業などの「事業所」が医療施設と並び最多――クラスター源か』という記事によると、『SNSの投稿データ分析などを手掛けるJX通信社(東京・千代田)が、公的情報を元に複数人の感染事例が判明している施設の数を集計したところ、「医療施設」と並んで「事業所」が感染者数トップになった』ということです。
事業所クラスター

ですから、人との接触機会8割削減という目標を達成するには、生活インフラを維持する以外の企業活動を停止すること、つまり欧米並みのロックダウンをするしかありません。
専門家会議の指摘を受け止めると、そういうことになります。


では、政府は強力なロックダウンに踏み切るのかというと、そんなことはありません。
安倍首相は4月30日、記者団に対して「5月7日からかつての日常に戻ることは困難だ。ある程度の持久戦を覚悟しなければならない」と語りました。
どうやら今のやり方を続けるつもりのようです。
いや、西村新型コロナ担当相は、経済活動の自粛を緩和し、経済活動再開の手順を検討していることを明らかにしました。

専門家会議の目指す方向と西村大臣の目指す方向が逆で、安倍首相はどちらを目指してるのかよくわかりません。
日本は針路の定まらない船みたいなものです。

欧米並みのロックダウンをすると経済がひどい打撃を受け、かといって安易に緩和すると、北海道のように第二波に襲われます。
その中間の道を行くと、安倍首相の言う「持久戦」になりますが、これとても長くは続けられません。
完全にジレンマです。


このジレンマから脱出する道があります。
それは韓国のやり方を学ぶことです。
だいたい日本人は欧米ばかり見ているので、ロックダウンか否かという発想になってしまいます。
韓国はロックダウンせずにウイルス対策を成功させ、最近では1日の感染者が10人前後に抑えられ、4月30日には感染者ゼロを記録しました。

韓国のやり方は、「徹底した検査と徹底した隔離」というものです。
たとえば大邱市では、新興宗教団体の集会で大規模なクラスターが発生しましたが、市当局は信者約1万人全員の検査を1か月以内に終わらせ、検査件数は約10万件に達しました。最終的に市全体で7000人近い感染者が出ましたが、軽症者用の生活治療センターをつくって隔離し、今では感染は抑え込まれ、市の中心部にある西門市場は買い物客でごった返しているということです。

現時点で日本の感染者数は1万4000人程度で、100万人越えのアメリカは別にして、スペイン、イタリア、イギリスは20万人前後ですから、まだまだ少ない数字です。感染者を徹底的に明らかにするという韓国方式はまだ可能なはずです。

「人との接触機会8割削減」という目標は、市中のどこに感染者がいるかわからないという状況が前提です。感染者が特定され、隔離されれば、外出自粛など必要なくなります。


ただ、日本ではPCR検査数がきわめて少ないという問題があります。
日本はオリンピックのためやら医療崩壊を防ぐためやらでPCR検査数を抑えるという初期対応をとり、検査を受けたいのに受けられないという状況が報道されても、安倍応援団は「検査をふやすと医療崩壊が起きる」「陽性とわかっても治療法がないので意味がない」などと言い、韓国がPCR検査数をふやしてドライブスルー方式を考案したりするのをずっとバカにしてきました。

今はさすがにPCR検査数をふやすべきでないという人はいないでしょう。
安倍首相も「PCR検査体制を1日2万件に増やす」と表明しています。

ところが、安倍首相の表明にもかかわらず、PCR検査数の伸びは遅々としたものです。
4月28日時点の数字ですが、OECD36か国において、人口1000人当たり何人がPCR検査を受けたかという数字で、日本は下から2番目です。

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https://www.oecd.org/coronavirus/policy-responses/testing-for-covid-19-a-way-to-lift-confinement-restrictions/

安倍首相が検査数をふやすと言ってもふえないのは、厚労省、国立感染症研究所、専門家会議などの人間が無能だからです(まさか悪質なサボタージュをしているということはないでしょう)。
そして、安倍首相や自民党は、官僚や専門家が無能なとき、なすすべを知りません。

原発事故のとき、菅直人首相は官僚や専門家が全員無能なことを知ると、どなりまくり、外部の専門家を呼んで、なんとか対処しました。
そこが安倍首相と菅首相の決定的な違いです。

安倍首相は無能の乗組員を従えた無能の船長です。
新型コロナウイルスの海を日本丸は漂うだけです。

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新型コロナウイルス感染症に乗じて、世界的に差別的言動がふえています。

中でも目立っているのがトランプ大統領です。
トランプ大統領はWHOのテドロス事務局長をしきりに非難しますが、これはテドロス事務局長がエチオピア出身の黒人だからです。トランプ大統領はオバマ元大統領のように黒人が高い地位につくことが許せません。
トランプ大統領はまた、新型コロナウイルスを“チャイナ・ウイルス”と呼び、「中国はウイルスの発生源で、素早く食い止められたはずだし、そうしていれば世界中に拡大しなかった」と言って、中国に損害賠償請求をする可能性に言及していますが、これも中国人への差別からです。
そして、テドロス事務局長は中国寄りだとして、両者をまとめて非難しています。

確かにWHOと中国はいろいろと間違いを犯しましたが、多くの国の政府も間違いを犯しています。
中でもひどいのがトランプ政権です。オバマ政権が強化したCDC(米疾病管理予防センター)の予算を大幅に削減し、今年1月末には武漢での状況を伝える報告書が上がっていたにもかかわらず、トランプ大統領は「暖かくなる4月にはウイルスは消えてなくなる」などと楽観論を述べて、中国からの入国を禁止する以外の手をほとんど打ちませんでした。トランプ政権が中国に対して損害賠償請求をすることが可能なら、アメリカ国民はトランプ政権に対してもっと巨額の損害賠償請求をすることが可能でしょう。


日本でも、トランプ大統領の尻馬に乗って、テドロス事務局長は中国寄りでけしからんと非難する人がいますが、これも差別意識からきた非難です。

日本人は欧米に対してコンプレックスを持っているので、たとえばWHOの事務局長がフランス人で、アメリカ寄りだったとしても、「あの事務局長はアメリカ寄りだからけしからん」という人はいません。テドロス氏がエチオピア人で、中国寄りだから非難しているのです。

日本人は国際機関のトップを批判したことはほとんどありませんが、例外が潘基文国連事務総長です。それまで国連事務総長批判などしたことのない日本人が、潘基文氏については任期中ずっと批判しっぱなしでした。もちろんこれは潘基文氏が韓国人だからです。潘基文氏がポルトガル人のアントニオ・グテーレス氏に替わると、批判はぱったりとやみました。

新型コロナウイルスは中国起源で、最初は日本と韓国に広がったことから、海外ではウイルスにからめて日本人も差別の対象になりました。
その日本人が“武漢ウイルス”などという言葉を使って、ウイルスと中国人を関連づけようとしているのは情けない限りで、それは日本人にも返ってくることになります。
中国政府の対応を批判するなら、“武漢ウイルス”などという言葉を使わずにするべきです。


新型コロナウイルスに関連した差別はいっぱい見られます。
休業要請に応じないパチンコ店に非難が集中し、店名をさらされたりしているのは、やはりパチンコ業界の社会的地位が低いからでしょう。
キャバレーやクラブなどもそうです。警察が夜の歌舞伎町をこれ見よがしにパトロールするのも公平ではありません。
湘南の海に集まるサーファーがやたら非難されるのも、スポーツ愛好家の中でもサーファーが低く見られているからではないでしょうか。
少なくともゴルフ練習場に集まるゴルファーと扱いが違うと思われます。


テドロス事務局長やパチンコ店を非難している人は、自分が差別感情から非難しているとは思っていないでしょうが、差別主義とはそういうものなので、注意が必要です。

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5月6日に緊急事態宣言を解除するか否かが焦点になってきました。
これを判断するには、とりあえず外国の状況を把握しておく必要があります。

世界でいちばん新型コロナウイルス対策に失敗している国はアメリカです。
現時点でアメリカの感染者数は約98万人、死亡者数は約5万5000人です。
その次がスペインで、感染者数は約22万人、死亡者数は約2万3000人ですから、アメリカの悪さは際立っています。

アメリカはいち早く2月2日に緊急事態宣言を発令し、中国からの入国を全面的に禁止しました。
アメリカのCDC(疾病予防管理センター)はきわめて強力な組織であるとされ、日本もそれを手本に同じような組織をつくるべきだとよくいわれます。
それでいてこの惨状です。

一方、新型コロナウイルス発祥の国である中国は、現時点で感染者数は約8万8000人、死亡者数は約4600人ですが、最近の感染者数は1日数十人です。
武漢でもロックダウンは解除され、全国的に経済活動も復活しつつあります。

アメリカ対中国でいえば、中国の完全な勝利です。
中国はすべて手探りで対策をしてきて成功し、アメリカは中国のやり方を見ていながら失敗しました。
トランプ大統領は“アメリカワースト”というべき状況にブチ切れて、中国やWHOに当たり散らしています。

もっとも、グローバルな視野で見ると、アメリカばかりが失敗しているとはいえません。
感染者数が多い順にいうと、アメリカのあとはスペイン、イタリア、フランス、ドイツ、イギリスと、ヨーロッパの主要国です。
WHOの調べでは、死亡者の約9割が米欧に集中しているということです。


中国周辺の国はどうかというと、韓国、台湾、ベトナム、モンゴルは感染の抑え込みに成功しています。
韓国はロックダウンせずに感染を抑え込み、今では飲食店も普通に営業しています。台湾は無観客ながらプロ野球が開幕しました。ベトナムはいまだに死者0人ですし、モンゴルの感染者は100人以下です(北朝鮮は0人?)。

ということは、「新型コロナウイルスは欧米で猛威をふるっているが、東アジアではほぼ抑え込まれた」ということです。

これはどういうことかというと、BCG接種で新型コロナウイルスにある程度免疫ができるので、BCG接種を実施している国ではあまり感染が広がらないのだという仮説があります。
その仮説もありそうなのですが、もうひとつの仮説として、東アジアではCOVID-19に似たコロナウイルスによる病気(インフルエンザや風邪など)が流行したことがあり、そのため東アジアではCOVID-19に対する集団免疫がある程度できているのだという考え方もあります。
「週刊現代」5月2・9日合併号で経済産業研究所上席研究員の藤和彦氏もこの説を述べています。
ユーラシア大陸では、東から西に行くほどCOVID-19が猛威をふるうという傾向があるので、この仮説も有力だと思われます(とすると、今後南米やアフリカで猛威をふるうことになります)。


そうすると、日本は東アジアで唯一、感染対策に失敗した国ということになります。
その理由は簡単です。日本は東京オリンピック開催のために感染者を少なく見せようとし、PCR検査数を少なくしたからです。クラスターを追跡するという方針は間違っていないと思いますが、検査数が少ないために見逃したクラスターがあって、クラスターといえない個人から個人への感染もあって、市中感染が拡大し、それがここにきて表面化してきたわけです。

とはいえ、まだ日本の感染者数は約1万3000人、死亡者数は約400人です。
東アジアでは劣等生ですが、欧米と比べると優等生です。

最近、日本は医療崩壊の瀬戸際だと言われますが、おそらく勘違いです。
たとえばニューヨーク州(人口約1900万人)の感染者数は約28万8000人、死亡者数は1万7000人です。
東京都(人口約1400万人)の感染者数は約3900人、死亡者数は約100人です。
ニューヨークは医療崩壊の瀬戸際だと言われますが、今のところ持ちこたえています。
2ケタ少ない東京都で医療崩壊が起きたら、世界の物笑いです。
今、医療崩壊が言われるのは、医師会などが利権のためにあおっているのではないでしょうか。


日本は緊急事態宣言以来、欧米のやり方を真似て“準ロックダウン”ともいうべき状態にあります。
しかし、感染者数、死亡者数を見れば、日本は欧米とはぜんぜん違います。
ちょっと前の韓国と同じような状態です。

日本人は明治維新以来、欧米を崇拝し、アジアを軽蔑し、もっぱら欧米から学んできましたが、こと新型コロナウイルスで参考になるのは、韓国や台湾のやり方です。
“準ロックダウン”みたいなことはやめて、経済活動を続けながら、徹底した検査と徹底した隔離で感染を阻止できるのではないでしょうか。

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新型インフル特措法に基づく緊急事態宣言では、外出禁止命令は出せず、外出自粛要請しかできませんが、国民は協力的ですから、外出自粛要請でもちゃんとやればうまくいくはずです。

安倍首相は4月22日、「緊急事態を早期に終息に向かわせるためには、いまが非常に重要な時期だ」と語りましたが、2月25日にも「今がまさに感染の流行を早期に収束するために極めて重要な時期」と語っていたので、まったく進歩がありません。
今回の発言は、詳しくは次のようなものです。
安倍総理「ゴールデンウィークは“オンライン帰省”で」人との接触を減らす「10のポイント」
 22日夕方、安倍総理は「専門家会議で2週間の行動変容を踏まえた現状分析と提言をいただいた。例えば都市部では平日で概ね6割以上、休日では7割以上の減少率となっており、接触機会の“8割削減”を目指すためには、より一層の努力が必要な状況だ。今回、専門家会議で示された、8割を減らすための“10のポイント”には様々な工夫が詰まっている。ゴールデンウィークについても帰省するのではなく、“オンライン帰省”を行うなど、行動を見直していただき、“8割削減“にご協力をお願いしたい」と述べた。
(後略)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200422-00010020-abema-soci
現状は6割、7割の削減で、8割削減の目標に届いていません。

そこで安倍首相が言ったのは「オンライン帰省」です。
マスコミもこの言葉を大きく報じました。
そのため、「オンライン帰省」さえすれば、8割削減の目標が達成できるような雰囲気になっています。


「オンライン帰省」というのはおそらく新語でしょう。
「帰省する代わりにビデオ通話(テレビ電話)の活用を」というのを一言で表現したわけですが、ビデオ通話は活用する人はすでにしているので、今さら言っても意味はありません。

この言葉は安倍首相が考えたのではなく、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議のメンバーが考えたもののようです。
今回、専門家会議は人と人の接触を8割へらすための「10のポイント」というのを作成しました。「オンライン帰省」というのは、その一番目にあります。

・ビデオ通話でオンライン帰省
・スーパーは1人または少人数ですいている時間に
・ジョギングは少人数で。公園はすいた時間、場所を選ぶ
・待てる買い物は通販で
・飲み会はオンラインで
・定期受診は間隔を調整。診療は遠隔診療
・筋トレやヨガは自宅で動画を活用
・飲食は持ち帰り、宅配も
・仕事は在宅勤務。通勤は医療・インフラ・物流など社会機能維持のために
・会話はマスクをつけて

ありきたりのことばかりです。

「筋トレやヨガは自宅で動画を活用」などは、わざわざ言われることではありません。
「飲み会はオンラインで」というのも同じです。
なにか“生活指導”をされているような感じです。
感染症の専門家が言うことではありません。

安倍首相は、この「10のポイント」の中から「オンライン帰省」という言葉を取り上げて、強調しました。そのためネットでは「80代の夫婦にはむり」とか「タブレットがない。配布してくれないか」などという声が上がっているそうです。
帰省をやめてほしいなら、「オンライン帰省」などという言葉を使わずに、「今年のゴールデンウイークは帰省はやめてください」と直接的に言うべきでした。

いや、「帰省をやめてください」というのも、すでに的を外しています。
というのは、帰省を完全にやめたところで、目標の8割削減には届かないからです。
安倍首相としては、たとえば次のように言うべきでした。

「現状からさらに1割か2割の削減をしなければ、緊急事態宣言の解除はできません。今後、外出するのは一日一回にしてください。帰省などはもってのほかです」

「一日一回」というのは、あくまでたとえばの話ですが、このように具体的に言ったほうが伝わります。

これまでは「不要不急の外出は控えてください」と言ってきました。
この言い方はあいまいだという批判もありましたが、各自が都合よく判断できるので、あまり不満はありませんでした。
しかし、「外出は一日一回にしてください」と言われると、束縛感がひじょうに強くなるので、不満も強くなります。
安倍首相にはそれを言うだけの覚悟がなかったのでしょう。

その点、小池東京都知事は「ステイホーム週間」という言葉を使って、外出自粛を強く打ち出しています。
安倍首相と小池都知事を比較すると、安倍首相がここにいたっても問題を把握していないし、国民に訴える力もないことがわかります(考えてみると、安倍首相は昭恵夫人の桜の見えるレストランでの会食や大分県の神社へのツアーなどを正当化してきたので、国民に向かってだめだとは言えないのかもしれません)。


現在、休業要請に応えないパチンコ店とか、サーファーでにぎわう湘南の海などが問題になっていますが、これは小さな問題です。
外出自粛という元栓を閉めないで、パチンコ店とかサーファーとかの小さな蛇口を閉めようとしているようなものです。
蛇口はほかにもいっぱいあるので、その蛇口だけ閉めても、ほかの蛇口の水圧が高まるのがおちです。

罰則のない外出自粛要請でも、リーダーの強い意志と論理的な説得力があれば、しかるべき効果を上げることができるはずですが、安倍首相も専門家も「オンライン帰省」などという言葉遊びに逃げていてはむりです。

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新型コロナウイルス対策に成功しているのは女性リーダーの国だ――という説があります。
「Forbes JAPAN」の「コロナ対策に成功した国々、共通点は女性リーダーの存在」という記事が指摘しました(4月18日のTBS系「新・情報7daysニュースキャスター」でもやっていました)。

その記事によると、アンゲラ・メルケル首相のドイツ、蔡英文総統の台湾、ジャシンダ・アーダーン首相のニュージーランド、カトリン・ヤコブスドッティル首相のアイスランド、サンナ・マリン首相のフィンランド、アーナ・ソールバルグ首相のノルウェーは、いずれも感染拡大を抑え込んで、国民の支持も得ているということです。

女性リーダーと男性リーダーでそんな違いがあるのかというと、ある可能性は十分にあります。


狩猟採集生活をしている未開社会では、採集は男女ともにしますが、狩猟はもっぱら男性が担うという性別役割分業があります(ですから、性別役割分業はジェンダーばかりとはいえません)。
その延長線上と思われますが、戦争ももっぱら男性が担ってきました。
そのため男性の頭には戦争の文化がいっぱい詰まっています。


男は、新型コロナウイルス対策をどうしても戦争になぞらえてしまいます。
戦争というのは、攻撃は最大の防御なので、敵を識別し、攻撃するというのが基本です。

ウイルスが国内に侵入していないときは、ウイルスは敵として認識することができ、ウイルスの侵入を防ぐ水際作戦を行うことができます。
これでうまくいけばよかったのですが、世界でうまくいった国はないようです。

ウイルスが国内に入り込んで広がれば、敵がどこにいるかわからないので、攻撃のしようがありません。
もちろん感染者は敵ではありません。
ただ、勘違いして、感染者を差別したり、発熱しているのに旅行したり会社に行ったりした人を非難する人はいますが。

ウイルスが国内に広がった時点でフェーズが変わり、戦争にたとえるなら、国が戦場ではなく野戦病院になったようなものです。
戦うことよりも、医療崩壊を招かないように病床と医療スタッフをふやすとか、マスクや防護服や人工呼吸器を確保するとか、隔離施設を別につくるといったことが最優先の課題になります。
感染拡大を防ぐ手段も、要するに家にじっとしていることですから、“戦う”というイメージではありません。

ところが、男の頭はなかなか“戦う”モードから切り替わることができません。
その典型がトランプ大統領です。最初に中国からの全面入国禁止やEUからの入国禁止という水際作戦を行い、それが失敗したあとも、いまだに中国を攻撃し、WHOを攻撃しています。
安倍首相も、外出自粛を呼びかけながら、「動き回る若者」や「夜の繁華街」を敵視して攻撃しています。


武漢で医療崩壊が起こったとき、日本でも同じことが起こるかもしれないと思って、早めに医療体制を強化することもできましたし、都市封鎖のやり方を参考にすることもできました。
しかし、中国を敵国ととらえている男は、中国から学ぼうとはしません。
韓国もドライブスルー方式のPCR検査などを考えだし、感染拡大を抑え込むことに成功しましたが、日本の男は韓国を敵視しているので、かたくなに韓国から学ぼうとしませんでした。
敵味方を分ける発想はウイルス対策の足かせです。

もちろん日本の男がみんなそうだというのではありません。右翼とか自称保守の男がそういう“戦争脳”なのです。

女性にはそういう“戦争脳”はまずありません。
そのため女性リーダーの国はウイルス対策に成功しているようです。
台湾の蔡英文総統は、中台は敵対関係にあるのに、中国からの情報収集に努めて、いち早く正しい対策を打ち出しました。
それによって台湾の感染者は今でも400人台です。


安倍首相は4月10日に田原総一朗氏と面会した際、「実は私自身、第三次世界大戦は、おそらく核戦争になるであろうと考えていた。だが、コロナウイルス拡大こそ第3次世界大戦であると認識している」と語ったそうです。田原氏が自身のブログで明らかにしました。

今の状況を第三次世界大戦になぞらえる感覚もどうかと思いますが、安倍首相はおそらく戦争の指揮官のつもりでしょう。
ウイルス対策を戦争だととらえると、迷走するしかありません。
それに、戦争の指揮官は野戦病院の内部のことなど考えないので、そのために日本は医療崩壊の瀬戸際になっています。

今の日本に必要なのは、戦争の指揮官でも兵士でもなく、野戦病院の運営をするナイチンゲールです。

星野源と安倍首相

星野源さんの「うちで踊ろう」という曲に、安倍首相が勝手にコラボして、自宅で犬を抱いたり、飲み物を飲んだり、本を読んだりする動画をアップしたことが批判され、炎上しました。

これはすでに十分に批判されているので、あまり付け加えることはありませんが、私が思うのは、安倍首相は人気取りのことばかり考えているのだなということです。
よい政治を行って人気を得るという王道を行くのではなく、印象操作やメディア支配で人気を得るという安易な道を行くことを覚えてしまって(しかも記録改ざんなどで批判をかわすことも覚えてしまって)、星野源さんとのコラボ動画もその延長線上です。

「星野源は若者に人気だそうだから、私が降臨すれば、『安倍さんは私たち若者の気持ちがわかっている』となって、若者の支持率がアップするだろう」みたいに考えたのでしょう。




安倍首相はコラボ動画に添えて、こんなコメントもツイートしていたので、私はこのコメントについて論じたいと思います。

安倍ツイッター

安倍首相は、「友達と会えない。飲み会もできない」というのが若者の平均的な気持ちだと思っています。
「遊びのことばっかり考えているチャライ若者」というのが安倍首相の若者観です。
現在の緊急事態宣言下の状況では「収入がなくなってどうしよう」とか「いつになったら学校が始まるのだろう」といった不安をかかえている若者も多いはずですが、安倍首相の頭にはないようです。

安倍首相は4月7日の記者会見でも「既に自分は感染者かもしれないという意識を、特に若い皆さんを中心に全ての皆さんに持っていただきたい」と、若者を特別視した言い方をしています。まるで若者がペストを媒介するネズミみたいです(正確には媒介するのはネズミのノミです)。

新型コロナウイルスに感染すると、若者であっても命の危険があります。
星野源さんの「うちで踊ろう」にも「生きて踊ろう」「生きてまた会おう」という歌詞があり、お互いの命をたいせつにしようというメッセージが根底にあります。

安倍首相はこのツイッターで若者に呼びかけているのに、若者の命を気遣う言葉がまったくありません。
「多くの命が確実に救われています」や「医療従事者の皆さんの負担の軽減につながります」というように、若者以外の人のことばかり言っています。
これは「お国のために」と言って若者を戦争に送り出すときの論理と同じです。



そうしたところ、夫の東出昌大さんの不倫問題でなにかとお騒がせの杏さんが、星野源さんと同じようにギターの弾き語りをする動画をアップして、話題となりました。
弾き語りしている曲は加川良さん作詞作曲の「教訓Ⅰ」です。
タイミングからして、安倍首相のコラボ動画とツイッターの言葉に反応したものではないかと想像されます。


この動画には、

「自分のことを守ることが、外に出ざるを得ない人を守ることになる。利己と利他が循環するように、一人ひとりが今、できることを」

というコメントがつけられています。
このコメントは、安倍首相のコメントに対しての思いでしょう。

「教訓Ⅰ」の歌詞の最後だけ引用します。
死んで神様と 言われるよりも
生きてバカだと いわれましょうヨネ
きれいごと ならべられた時も
この命を すてないようにネ
青くなって しりごみなさい
にげなさい かくれなさい
https://www.uta-net.com/movie/43159/

安倍首相のコメントと比べると、その違いがよくわかります。
若者の命をたいせつにするかしないかの違いです。


「教訓Ⅰ」は1970年に発表された歌で、ベトナム戦争を背景にした反戦歌です。
アナクロな首相がいるために、50年前の歌が今も歌われます。

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