村田基の逆転日記

進化倫理学の威力を試すブログ

カテゴリ: 安倍政権を見送る

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菅義偉首相が日本学術会議の新会員6人の任命拒否をしてからの展開は、デジャブというのか、まるでかつての安倍政権を見ているようです。

任命拒否の理由を説明しろという声に対して菅首相は「総合的、俯瞰的な活動を確保する観点から判断した」と説明にならない説明を繰り返し、明らかに法律の解釈変更をしたと思われるのに加藤官房長官などが解釈変更はしていないと答弁したりと、モリカケ問題、桜を見る会問題のときのようなむなしい議論が行われています。
「安倍政治の継承」を掲げている以上、似てくるのは当然ではありますが、似てきたおかげで違いも見えてきました。


森友学園問題、加計学園問題、桜を見る会問題は、隠されていたものが発覚して問題になりました。
学術会議新会員の任命拒否問題は、菅首相がみずから仕掛けて問題にしたので、そこが違います。

菅首相はなぜこんなことを仕掛けたかというと、おそらく「学問の自由」ということの重要さを理解していなくて、こんな大きな問題になるとは思っていなかったのでしょう。
菅首相は10月5日のグループインタビューで「学問の自由とはまったく関係ないということです。それはどう考えてもそうじゃないでしょうか」と語りましたが、案外本心のような気がしました。
菅首相はあくまで実務家で、学問の自由みたいな抽象的な概念はあまりよく理解できないのです。


もちろん菅首相の狙いは、政府の方針に反対する学者を狙い撃ちにして、見せしめにすることで、政府に反対しにくくさせることです。
ただ、こういうやり方も安倍前首相と違うところです。

安倍前首相が森友学園を国有地不正払い下げという手を使ってまで支援したのは、教育勅語を唱和させるような軍国教育をする学校をつくりたかったからで、安倍前首相にとって森友学園の籠池泰典理事長は同志でした。加計学園の加計孝太郎理事長は安倍前首相の学生時代からの友人です。桜を見る会には安倍前首相の地元後援会の人が多く招かれました。
つまり安倍前首相においては同志、友人、身内などの「人のため」ということがありました。
もっとも、同志のために国有地不正払い下げを行い、それを隠ぺいするために公文書改ざんを行い、そのために自殺者まで出すという無茶苦茶さですが、少なくとも出発点には「人のため」ということがあったわけです。

今回の菅首相の任命拒否には「人のため」という要素がありません。
もし菅首相にどうしても学術会議の新会員に任命したい人がいて、その人を押し込むために6人を任命拒否したというのなら、良し悪しは別にして、人情として理解はできます。
あるいは日本学術会議の組織改革のためという理由でも理解できますが、そういう理由があるなら説明できるはずです。
菅首相は見せしめのために6人を狙い撃ちにし、国民は「公開処刑」を見せられているようなものです。


人を幸せにすることがポジティブ、人を不幸にすることがネガティブだとすれば、菅首相はネガティブの多い人です。

携帯料金値下げにしても、実現すれば確かに「国民のため」ですが、とりあえずは民間企業の中に手を突っ込んで価格決定権を左右するという「いやがらせ」をするわけです。こういうことは菅首相以外にはなかなかできません。

菅首相はまた、生産性の低い中小企業の統合を進めるとも表明していますが、これも、中小企業が統合したくても規制があってできないので、それを救いたいということではなくて、中小企業が望んでもいないのに統合させようという、やはり「いやがらせ」の政策です。

菅首相は地方銀行についても、数が多すぎるとして再編の方針を示していますが、これも同じことです。

要するに当事者の意志を無視して上から権力を行使してなんとかしようという発想です。
こうした発想のもとには人間不信があります。


たとえば桜を見る会問題では、安倍首相は地元後援会の人を招いて喜ばせるというポジティブな役割を演じ、菅官房長官は見えないところで官僚に名簿の廃棄や虚偽答弁を強要するというネガティブな役割を演じるという分担になっていました。
菅氏はそれが向いていたので、7年8か月も官房長官が務まったのでしょう。

菅氏はそういうネガティブなキャラゆえに「陰険」と評されます。
今風に言えば「陰キャ」でしょうか。

菅政権は、安倍政権からポジティブな面を消去した政権です。
菅首相が学術会議新会員任命拒否みたいなことを繰り返せば、日本全体が暗くなってしまいます。

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朝日新聞が9月3日、4日に実施した世論調査によれば、安倍政権の7年8か月間の評価を聞くと、「大いに」17%、「ある程度」54%を合わせて71%が「評価する」と答え、「評価しない」は、「あまり」19%、「全く」9%を合わせて28%でした。
71%が評価するというのは驚きの高評価です。

どんな政策を評価するかというと、「外交・安全保障」の30%が最も多く、「経済」24%、「社会保障」14%、「憲法改正」は5%でした。
「外交・安全保障」にこれといった成果はなく、これも意外な高い数字です。

こうした数字に反安倍の人はとまどったでしょう。
「安倍を評価するなんて国民はバカだ」と思ったかもしれません。

私も反安倍ですが、そんなふうには思いません。
逆に「国民が正しくて、自分がバカなのかもしれない」と思います。
こういうふうに自分を絶対化せず、地動説的発想のできるのが私の偉いところだと、自画自賛しておきます。


安倍首相を評価する声に、「がんばっている」「一生懸命やっている」というのがあります。
こうした声に「政治は結果だ」と反論するのは容易ですが、ここが考えどころです。

確かに安倍首相はずいぶんとがんばってきました。
私が安倍首相のがんばりで思い出すのは、昨年5月、令和初の国賓としてトランプ大統領を招いて、茂原カントリー俱楽部で二人でゴルフをしたときのことです。
安倍首相はバンカーで手間取り、ようやくボールを出して、先に歩き出したトランプ大統領を追いかけようとして斜面ですっ転んだのです。その瞬間をテレビ東京のカメラがとらえていました。



転んだことをバカにするのではありません。トランプ大統領のご機嫌をとるために必死になって追いつこうとするから転んだので、そのご機嫌とりの姿がみっともないと思いました。

この日の夕方は二人で大相撲の観戦をしました。国技館にトランプ大統領のためにわざわざ特別席を設置しました。私は枡席に椅子を置けばいいではないかと思いましたが、安倍首相はそれではだめだと思ったのでしょう。
トランプ大統領は格闘技好きだということで組まれたスケジュールですが、トランプ大統領はまったくつまらなさそうな顔で大相撲観戦をしていました。人種差別主義者のトランプ大統領には日本の伝統文化など興味がなかったようです。

結局、いくらおもてなしをしても、トランプ大統領がそれによって対日要求を緩和するということはなかったのではないかと思います。

私はトランプ大統領のご機嫌とりをする安倍首相をみっともないと思いましたが、安倍首相が一生懸命やっていたのは事実です。


プーチン大統領に対しても同じようなことがあります。
安倍首相はプーチン大統領のことを何度も「ウラジミール」と呼んで親密さをアピールし、二人そろっての記者会見で「ウラジミール、ゴールまで二人の力で駆けて、駆けて、駆け抜けようではありませんか」と熱く語ったこともありますが、プーチン大統領のほうは安倍首相のことを「シンゾー」とは呼びません。
親密でないのに親密なふりをする安倍首相を、私はみっともないと思いましたが、安倍首相が一生懸命やっていたのも事実です。
親密でないのに親密なふりをするというのは、そうとうな精神力(演技力?)がないとできません。


では、安倍首相が一生懸命やっているのを見て、私は低く評価し、国民の一部は高く評価したのはなぜでしょうか。

いろいろ考えるに、かつて日本は世界第二の経済大国になり、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」とか「日米は対等のパートナーシップ」と言われたころのイメージがまだ私の頭の中に残っているのです。
一方、若い人たちは、もの心ついたころにはバブル崩壊後の不況で、就職氷河期があり、経済は長期停滞で、見下していた中国にあれよあれよという間に抜き去られ、最初から“経済小国”の現実が身に染みついているのです。

ですから、私は安倍首相を見て、大国の首相なのにみっともないと思い、若い人は小国の首相なのによくやっていると思うのです。
こう考えると、若い世代に安倍内閣の支持率が高いことが理解できます。


安倍首相がこれまでやってきたのは、分相応の小国外交です。それが国民から支持されました。

安倍首相が習近平主席を国賓として招待することを決めたのは、安倍応援団には評判が悪かったですが、国民はおおむね受け入れていました。小国の日本が大国のアメリカと大国の中国のご機嫌とりをするのは当然のことです。

北方領土返還がほとんど不可能になっても、小国外交なんだからしかたがないという受け止めが多いためか、まったく問題にされません。

ただ、そういう小国外交だけでは国民の不満がたまります。
そこで、安倍政権は慰安婦像や自衛隊哨戒機へのレーザー照射や徴用工などの問題を大きくして、韓国を不満のはけ口にしました。
これは安倍政権の実にうまいやり方です(前は北朝鮮も不満のはけ口にしていましたが、トランプ大統領に言われて日本から無条件の話し合いを求めるようになって、そうはいかなくなりました)。


若い世代に限らず「日本は小国である」という認識はかなり広まっています。
しかし、そのことははっきりとは認めたくないという心理もあります。
そのため、逆に「ニッポンすごいですね」という番組がやたらにつくられます。
また、国力の国際比較もタブー化しています。
安倍政権は、前と比べて雇用者数や有効求人倍率や株価が改善したなどと成果をアピールしましたが、経済成長率の国際比較などはしません。
国際比較をするのは、蓮舫議員の「二位じゃだめなんですか」発言のあったスパコンが世界一になったときぐらいです。
野党も日本の経済成長率の低さをやり玉にあげたりはしません。それをすると「対案を出せ」と言われて、対案がないからです。

最近、財政健全化のこともすっかり言われなくなりました。
借金を返すには稼ぐ力が必要で、日本にそういう力はないと思われているのでしょう。
日米地位協定の改定などは、夢のまた夢です。

大国幻想を振り払ってみれば、安倍首相が小国の首相としてよくやったということがわかりますし、71%の評価も納得がいきます。

なお、安倍首相の辞任表明はいち早く中国でも報道され、SNSでは「お疲れさまでした」「いい首相だった」「尊敬できる政治家だ」など好意的な意見が多かったということです。
小日本にふさわしい首相と見られていたからでしょう。



ただ、小国というのはあくまで経済小国という意味です。
文化大国、平和大国、環境大国、人権大国など、日本が元気になる道はいくらでもあります。
再び経済大国になることも不可能と決まったわけではありません。

安倍政権の小国外交がさらに日本の小国化を推し進めたということもあるのではないでしょうか。

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権力者が権力の座を下りると、それまで隠されていた真実が次々と明るみに出て、かつての権力者は罪人となる――というのはよくあることですし、韓国の政治などは完全にそのパターンです。
安倍首相もそうなるだろうと漠然と思っていたら、どうやら様子が違います。

共同通信社が全国緊急電話世論調査を実施したのですが、「今月29、30両日の調査によると、内閣支持率は56.9%。1週間前の22、23両日の調査より20.9ポイント増加した」ということです。

首相退任が決まった内閣の支持率を調査するというのも妙なものですが、20ポイント超も上昇したのにはびっくりです。
病気を理由にした辞任に国民の同情が集まったのでしょうか。

田崎史郎氏はテレビコメンテーター界における安倍応援団の筆頭格です。こういう人は「安倍とともに去りぬ」になるのかと思ったら、このところテレビに出ずっぱりです。
ということは、安倍首相中心の支配構造は変わらないとテレビ局は認識しているのでしょう。


今後のことで安倍首相にとって困るのは、石破茂元幹事長が総裁選で勝利することです。
石破氏はこれまで安倍首相に迫害されてきましたから、安倍首相は石破氏に復讐され、それこそ罪人にされてしまうかもしれません。
しかし、今のところ明らかに菅義偉官房長官が有利な情勢になっています。
党員投票をやらない方向なのも、“石破つぶし”のためです。
ここまでは安倍首相が辞任を決めたときからのシナリオでしょう。

つまり安倍首相はキングメーカーになって、院政を敷くということになりそうです。


安倍首相は辞任の作戦が巧妙でした。
“難病”のイメージを徹底的に利用しました。
「病気で辞めるのならしかたがない」というだけでなく、「難病で辞めるのはかわいそう」というところまで持っていきました。

実際のところは、国会議員は辞めないのですから、病気であることもあやしいものです。
安倍首相はトランプ大統領やプーチン大統領と電話会談をしたりして、首相の仕事もちゃんとやっています。


安倍首相の「難病利用」によっていちばん迷惑をこうむっているのは、潰瘍性大腸炎の患者でしょう。
潰瘍性大腸炎になると治らない、仕事ができないというイメージになってしまいました。
それから、慶応大学病院にとっても迷惑です。処方した薬が効果を上げているのに首相を辞任されて、「慶応大学病院には治せなかった」というイメージになってしまいました。
実際のところは、潰瘍性大腸炎の治療法は進歩して、深刻化するケースは少なくなっているということです。

そもそも安倍首相は潰瘍性大腸炎を理由に第一次政権を投げ出し、その後、2012年の総裁選に出馬したときは、体調を不安視する周囲に対して、アサコールという特効薬が効いたとして「今はまったく問題がなくなった」と主張していました。
結局、また潰瘍性大腸炎を理由にして辞任するとは、どういう神経をしているのでしょうか。


安倍首相の場合、6月の定期健診で「再発の兆候」が認められ、8月に「再発が確認」されたということです。
なぜこの時期に再発したかというと、政権運営が行き詰まったストレスからでしょう。
ですから、今回の辞任は「政権投げ出し」だといえます。

しかし、よく考えると、「逃げの投げ出し」ではなく「攻めの投げ出し」であったようです。

普通、選挙は議員にとって大仕事ですから、衆院の解散は議員任期が残り少なくなってから行われるとしたものです。しかし、安倍首相はつねに野党の選挙準備が整わないうちに早めに解散総選挙を仕掛け、勝利してきました。
安倍首相は今回もその勝利の方程式に従い、「早めの辞任」を仕掛けたのでしょう。
ということは、菅総理大臣が誕生すると、早期に解散総選挙があるということが考えられます。
“安倍院政”なら当然そうなります。

いや、もっと長期的な戦略があるのかもしれません。
安倍首相は65歳、菅官房長官は71歳です。
自民党の総裁は3期までと決まっていますが、いったん辞めたあと再任を禁止する規定はないので、菅総裁のあと、また安倍氏が総裁になり、第三次安倍政権を発足させるということも可能です。

「難病利用の辞任」はあってはならず、安倍首相の潰瘍性大腸炎の症状はどの程度のものなのか明らかにされるべきです。

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辞任記者会見の安倍首相(官邸ホームページより)

安倍首相は8月28日、記者会見で辞意を表明しました。
第一次安倍政権のときに続いて二度目の唐突な「政権投げ出し」です。

潰瘍性大腸炎はストレスも症状悪化の原因です。
安倍首相は会見で「一議員として仕事をしていきたい」と言って、議員辞職は否定しました。
首相は務まらないが、議員としては務まるということです。
ということは、体の問題ではなく、「首相の重責」に耐えられないという心の問題ですから、「政権投げ出し」というしかありません。

ところが、マスコミは「政権投げ出し」という批判はほとんどしていません。
安倍首相のイメージ戦略に乗せられたようです。


安倍首相はこのところ「病気」というイメージを強く打ち出ししていました。

甘利明議員は、テレビ番組で安倍首相の「疲労蓄積」を心配し、「責任感が強く、自分が休むことは罪だとの意識まで持っている」と語り、麻生太郎財務相は「147日間休まず働いたら、普通だったら体調としては、おかしくなるんじゃないの」と語り、働きすぎが原因で体調を崩しているというイメージを広げました。
そして、8月17日、24日と続けて慶応大学病院に行ったときも、あらかじめマスコミに伝えました。そのためマスコミはずっと病院前に張り付いて、診察時間が「7時間半」と「4時間」だったと報じ、また病院に車で出入りする映像もニュース番組で流れました。
こうして「首相病気」のイメージを国民に植え付けたのです。

しかし、これはあくまでイメージです。
記者会見の言葉を聞いていると、辞任するほどの症状とは思えません。
首相官邸ホームページの「令和2年8月28日 安倍内閣総理大臣記者会見」から書き起こしてみます。
この8年近くの間、しっかりと持病をコントロールしながら、なんら支障なく、総理大臣の仕事に毎日、日々全力投球することができました。
しかし、本年6月の定期健診で再発の兆候が見られると指摘を受けました。その後も薬を使いながら全力で職務に当たってまいりましたが、先月中ごろから体調に異変が生じ、体力をかなり消耗する状況となりました。そして、8月上旬には潰瘍性大腸炎の再発が確認されました。
今後の治療として、現在の薬に加えまして、さらに新しい薬の投与を行うことといたしました。今週初めの再検診においては、投薬の効果があるということが確認されたものの、この投薬はある程度継続的な処方が必要であり、予断は許しません。
政治においては、もっともだいじなことは結果を出すことである。私は政権発足以来、そう申し上げ、この7年8か月、結果を出すために全身全霊を傾けてまいりました。病気と治療をかかえ、体力が万全でないということの中、たいせつな政治判断を誤ること、結果を出せないことがあってはなりません。国民のみなさまの負託に自信をもって応えられる状態でなくなる以上、なくなった以上、総理大臣の地位にあり続けるべきではないと判断いたしました。
総理大臣の職を辞することといたします。

投薬の効果が確認されたのに辞任するのは不可解です。

質疑応答において記者も「治療を続けながら執務を続行するという選択肢はなかったのか」と質問していますが、安倍首相は「間違いなくよくなっていく保証はない」「コロナ禍の中において政治的空白を出さないようにするにはこのタイミングで辞任するしかないと判断した」と答えています。

さらに、次期首相が決まるまで首相の座にあることに関して、「もちろんこの任にある限りですね、コロナ対策、責任をもって全力をあげていきたい。幸いにも新しい薬が効いてますので、しっかりと努めていきたいとそう思っております」と言っています。
つまりしばらく首相を続けていけるというのです。

では、なぜ今辞めたのかというと、
①改憲が不可能になって、この先やりたいことがなくなった。
②やり続けても経済も外交も改善の見込みがない。
ということからではないかと思われます。

やはり「投げ出し」です。
前回は追い詰められてギリギリで投げ出したのですが、今回は早めに投げ出したわけです。

いや、「早め」というのは間違いです。
ほんとうはもっと早く投げ出しているべきでした。
たとえば対ロシアの北方領土返還交渉について、今では二島返還すら不可能な状況になっています。これは外交の大失策として首相のクビが飛んで当然です。
ところが、マスコミの追及が甘いので、平気な顔で首相を続けてきました。
モリカケや桜を見る会でも安倍首相は辞任して当然でした。

本来は死んでいるはずの体を集中治療室に入れてさまざまな延命措置を施してきたものの、本人が長すぎる延命に嫌気が差して、今回安楽死ならぬ“安楽辞任”を選択したというところです。

もちろん“安楽辞任”などということはあってはならず、今後、安倍首相の外交や経済政策をきびしく検証し、モリカケ、桜を見る会の疑惑を徹底追及するべきです。

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8月24日の安倍首相

安倍首相は8月17日、24日と続けて都内の慶応大学病院を受診し、健康不安が取りざたされています。

安倍首相本人は「体調管理に万全を期して、これからまた仕事を頑張りたい」と語りましたし、菅官房長官は「毎日お目にかかっているが、変わりはないと思う」と、健康不安説を否定しています。
しかし、政治家というのは病気であっても否定するのが当たり前なので、こういう言葉は信用できません。
病院での滞在時間は、17日が7時間半、24日が約4時間とかなりの長時間で、これでなにもないとは考えられません。


ただ、首相サイドはわざと健康不安説をあおっているという説もあります。

自民党の甘利明議員は16日のフジテレビの番組で、首相の疲労蓄積を心配して「ちょっと休んでもらいたい。責任感が強く、自分が休むことは罪だとの意識まで持っている」と語りました。
麻生太郎財務相は17日夜、「147日間休まず働いたら、普通だったら体調としては、おかしくなるんじゃないの」「休む必要があるということは申し上げた。ちゃんと自分で健康管理するのも、仕事の一つだ」と語りました。
つまり安倍首相が7時間の診察を受けた前後に、安倍首相の側近が「安倍首相の疲労蓄積」をアピールしているのです。

なぜそんなことをするかというと、安倍首相は国会も開かず、記者会見もしないでいるのを批判されているので、「疲労蓄積」を理由に批判をかわそうとしているというわけです。
確かに安倍首相が147日間休んでいないということは話題になって、安倍応援団は「安倍首相はこんなに国民のために働いている」と声を上げています。


とはいえ、政治家が「疲労蓄積」をアピールするのはやはり不可解です。
私は「疲労蓄積」をアピールする別の理由を考えました。

安倍首相は前の政権で突然に辞任を表明して、「政権を投げ出した」とさんざん批判されました。
今回また突然に辞任表明をすれば、前回以上に批判されるのが目に見えています。
そこで、あらかじめ「疲労蓄積」によって体調が悪化していることを周知させておき、それから辞任表明をしようという作戦ではないかと考えられます。

ということは、実際に体調はかなり悪くて、近く辞任することが視野に入っていることになります。
辞任するときのために今は「国民のために休みなしに働いて疲労が蓄積し、持病の潰瘍性大腸炎が悪化した」という物語をつくっているところです。


安倍首相の体調が悪いことは顔色を見てもわかります。

安倍首相は24日、病院から官邸に戻ると、記者団の前でコメントしました。
この日は安倍首相の連続在職日数が佐藤栄作首相を抜いて歴代最長の2799日となった記念日だからです。
この日は午前10時前に病院に入り、記者団の前に現れたのは午後2時前ですから、そんな疲れるはずはないのですが、顔色はさえません。



在職日数が歴代最長となったことについては、「すべてはこれまでの国政選挙において力強い支持をいただいた国民のみなさまのおかげでございます。心から御礼申し上げたいと思います。また、たいへんきびしいときにあっても、いたらない私をささえていただいたすべてのみなさまに感謝申し上げたいと思います」と語りました。
この言葉だけ聞くと、まるで辞任のときの言葉のようです。
今後のことについては「これからまた仕事を頑張りたい」と言っただけで、具体的な目標はなにも語りませんでした。


安倍首相が辞任するとすれば、総裁選なしに誰かが暫定的な首相に就くことになります。
常識的には麻生財務相か菅官房長官でしょう。
菅官房長官は18日にBS日テレ「深層NEWS」、21日にテレビ朝日「報道ステーション」と立て続けに生出演し、存在感をアピールしています。

どう考えても、安倍首相の辞任は近いと思われます。

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安倍首相が広島と長崎の平和式典で述べたあいさつがほとんど同じで、「“コピペあいさつ”でいいのか」という声が上がっています。

広島と長崎でそれほど変えようがないですし、コピペなのは毎年同じです。
今年だけ問題にされたのは、「安倍首相の言葉には心がこもっていない」という不満が高まっているからでしょう。

安倍首相は緊急事態宣言を発出するときや解除するときに国民に向かってスピーチをしましたが、用意された原稿をプロンプターで読むだけです。
もとの原稿が官僚の作文で、安倍首相もただそれを読むだけなので、「言葉に心がこもっていない」という印象になってしまいます。

スピーチだけではありません。
安倍首相は記者会見でも心のこもった言葉を言いません。

広島の平和式典のあと、安倍首相は久しぶりの記者会見をしました。
しかし、記者会見の時間は約15分で、記者の質問も4問だけでした。

会見の最後に朝日新聞記者が「総理、まだ質問があります」と言って手を上げたところ、朝日新聞の記事によると、『朝日新聞記者の腕を、首相官邸報道室の男性職員が「だめだよもう。終わり、終わり」と制止しながらつかんだ』ということがありました。
朝日新聞は「質問機会を奪う行為につながりかねず、容認できません」と報道室に抗議しましたが、菅義偉官房長官は7日午前の記者会見で「(首相の)広島空港への移動時刻が迫っていた中での出来事で、速やかな移動を促すべく職員が注意喚起を行ったが、腕をつかむことはしていないとの報告を受けている」と述べ、今のところ、腕をつかんだか否かはうやむやになっています。

記者会見で質疑応答があったといっても、やはり安倍首相の言葉には心がこもっていません。
なぜ安倍首相の言葉には心がこもっていないのかが明らかになる出来事が、長崎の記者会見場でありました。



この記者会見も時間は約15分でした。記者の質問は2問とあらかじめ決められていました。
会見が終わり、安倍首相は立ち上がる前に手元の書類を立てて持ちました。
その瞬間をANNのテレビカメラは撮っていました。

安倍カンペ




コピペ切り取り


字が小さくて見にくいですが、四角い囲みの中の冒頭に「問1」とあり、「核兵器」と思われる言葉が続いています。
これは、毎日新聞のマツムラマユ記者の核兵器禁止条約についての質問と思われます。
そして、その下に[答]という字があり、安倍首相が実際に答えた内容がそのまま書かれています。

要するに、記者の質問も安倍首相の答えも全部あらかじめ決まっていて、安倍首相は原稿を読むだけなのです(安倍首相のテーブルだけ花が飾ってあるのはカンペ隠しのためです)。
これでは言葉に心がこもらないのは当然です。

記者会見そのものが台本のある芝居、下手な学芸会のようなものです。
これなら記者会見などしなくて、安倍首相の手元にある原稿を各メディアが受け取って、それをもとに記事を書けばいいのです。
いや、それだとテレビは絵がないので、テレビのために学芸会をやっているのでしょう。


菅官房長官の定例記者会見も同じシステムに違いありません。
韓国で慰安婦像の前で安倍首相らしい人物が土下座する像が設置されたことについてTBS記者が菅長官に質問したところ、菅長官はそれに答えるときに「慰安婦問題の最終的かつ不可逆的な解決を確認した日韓合意」という言葉を正確に言ったので、質問も答えもあらかじめ決まっているのだとわかりました(このことは『「首相謝罪」の炎上商法が不発』という記事に書きました)。

質問があらかじめわかっていれば、いくらでもはぐらかしの答弁ができます。

安倍首相の記者会見での言葉はカンペを読んでいるだけだということが証拠映像つきでわかったのですから、ワイドショーなどがおもしろおかしく取り上げてもよさそうなものですが、同じマスコミなのでやらないのでしょう。
そのため、今のところツイッターでしか取り上げられていないようです。

記者クラブも情けないものです。
質問をあらかじめ提出するよう求められているなら、そのことを公表するべきです。
台本のないふりをするのは国民をあざむく行為です。

菅官房長官
首相官邸HPより

内政で行き詰まると国民の目を外にそらせるというのは、どこの国の政府もよくやることです。

感染の第二波の到来に対してまったく無策で、逆に「Go Toトラベル」キャンペーンを推進するという政府に対して、国民の批判が高まっています。
こうした状況で菅義偉官房長官は国民の目を韓国に向けさせようとしたのでしょうか。


そもそもの発端は、韓国平昌の韓国自生植物園という民間植物園の中に「永遠の贖罪」と題した造形物が設置され、8月10日に除幕式を行うと発表されたことです。
韓国の新聞は「この造形物は、座っている1・5mの慰安婦少女像の前で、1・8mの安倍首相の銅像がひざまずいて謝罪をしている姿だ」と報じました。
これを私費でつくった金昌烈園長は「罪滅ぼしの対象をはっきり形作る必要があり、少女像が向き合うものは安倍に象徴させて造成した」と述べました。
ただ、造形物に「安倍」の文字はないようです。

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FNNプライムオンラインより

こうした報道に対して、菅官房長官は7月28日の記者会見で次のように述べました。

事実かどうかは確認しておりませんけど、そのようなことは国際儀礼上許されないと思います。かりに報道が事実であるとすれば、日韓関係に決定的な影響を与えることになる。いずれにせよ、慰安婦問題については、韓国側に対し、慰安婦問題の最終的かつ不可逆的な解決を確認した日韓合意の着実な実施を引き続き強く求めていく、そうした考え方に変わりはありません。

「日韓関係に決定的な影響を与えることになる」とは強い言葉です。
しかし、そもそも官房長官が言及するようなことでしょうか。

韓国の一民間人が自分の施設の中にどんなものをつくろうと自由です。誰も止められません。
あの像が安倍首相だとすれば、「国際儀礼上許されない」ということは言えるでしょうが、安倍首相だとは特定されていませんし、やはり民間人の設置したものについて、日本の政府高官が言及するものではありません。

なお、そもそも慰安婦像が問題になったのは、ソウルの日本大使館前の歩道に行政の許可なく像が設置されたからです。
ウィーン条約に「公館の安寧の妨害又は公館の威厳の侵害を防止するため適当なすべての措置を執る特別の責務を有する」とあるのに違反しているとして、日本政府は撤去を求めました。

そのときと今回はぜんぜん事情が違います。
「国際儀礼上許されない」とか「日韓関係に決定的な影響を与える」とかは、まるで韓国政府に対して言っているようですが、言う根拠がありません。
民間人に対して言っているとしても、おかしなことです。

菅長官が言及する前にも、韓国内でこの像について賛否両論があって、「なんの利益になるのか」とか「幼稚すぎる」といった批判がありました。
放っておけば、落ち着くところに落ち着いたでしょう。


菅長官は定例記者会見において、TBS記者の質問に対して答えたのですが、菅長官は「慰安婦問題の最終的かつ不可逆的な解決を確認した日韓合意」という言葉を手元の資料を見ながら言いました。ということは、この質問があることがあらかじめわかっていて、答えも用意されていたのです(質疑応答自体がなれ合いです)。

菅長官は「日韓関係に決定的な影響を与える」という強い言葉を使って、この問題を炎上させようとしたのでしょう。

しかし、金園長は騒ぎが大きくなって8月10日の除幕式は中止するつもりのようですが、「造形物を撤去するつもりはまったくない」「造形物の代わりに私を撤去しろ」と強気です。
こう言われると、それ以上どうにもなりません。
菅長官の“炎上商法”は不発に終わりました。

いや、不発どころではありません。
「リテラ」は『“首相謝罪”像が意外な展開! 嫌韓より「安倍が日本国民に謝ったんじゃないのか」のツッコミが続出、「謝罪像ほしい」の声も!』という記事で日本国内の反応を伝えています。

ツイッターで「首相謝罪」がトレンドワードになると、安倍首相が日本国民に謝罪したと誤解した人が続出したそうです。

〈首相謝罪、てっきり今までのコロナ対策の怠慢や無策を国民に詫びるとかだと思ったら違った。〉
〈コロナ対応や水害の被災者支援についての対応遅れについてかと思ったらちゃうのね〉
〈首相謝罪?って、私は首相が布マスク配布やGOTOトラベルで無策で迷惑かけているのでてっきり国民に謝罪する件なんだとおもったんだが。〉

「首相謝罪」の意味が、韓国に設置された首相の謝罪像のことだとわかっても、韓国非難の声は盛り上がらず、やはり安倍首相に対して謝罪を求める声のほうが強いということです。

〈トレンドに「首相謝罪」ってあるけど、コロナ対策もロクにしてないし、まずお前が謝罪しろ。〉
〈首相謝罪?韓国に謝罪はいらんよ。安倍は日本国民に謝罪してくれよ。〉
〈#首相謝罪 また使えないマスク8000枚配るバカはマジで国民に土下座しろ〉
〈首相謝罪像の頭を日本国民の方に向けて設置するべきなのでは〉
〈日本にも一体送ってくれんかな〉
〈「首相謝罪の像」、日本にも何個か設置したいと思いませんか? 例えば福島とか、森友小学校跡地とかに。〉

かつては嫌韓ネタを投下すると、世論が盛り上がったものですが、今回はまったく違います。
官房長官が一韓国国民に文句をつけるという愚かなことをした上に、もともと安倍首相に対する怒りが充満していたからです。

いまだにコロナ対応よりも世論操作のことを考えている安倍政権に国民があきれるのは当然です。

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新型コロナウイルスの感染者が急増し、「第二波」が到来したと言うしかない状況です。

そんな中、7月21日発売の月刊「WiLL」9月号(ワック出版)が「新型コロナ第二波はこない」と断言した記事を目玉にして、「壮大に予想を外した」と評判になっています。


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月刊誌なので書店に並んだときには状況が変わっていたということではなくて、編集部はこの内容に自信を持っているようです。
発売に合わせてYouTubeで配信された「WILL増刊号インターネット版」では、山根真デスクはこの記事が文芸春秋最新号の特集「第二波に備えよ」にケンカを売る内容であるとして、「自信あるんで、もうかかってこいって感じですよね」と語っています。

「新型コロナ第二波はこない」の執筆者として2人の名前があがっていますが、上久保靖彦京都大学大学院特定教授は、日本で新型コロナ感染症の死者が少ないのは日本人がすでに新型コロナに対する集団免疫を獲得しているからだという仮説を発表した人で、もう1人の小川榮太郎氏は、自称文芸評論家で、『約束の日 安倍晋三試論』という著書もある、安倍応援団の筆頭格の人です。

「WiLL」自体が安倍応援雑誌みたいなものですが、9月号の表紙を見ると、壮大に外しているのは「新型コロナ第二波はこない」だけではなくて、「日本のメディアが伝えない米大統領選はトランプ圧勝」も同じです。

このふたつの記事はつながっています。
トランプ大統領は、「ウイルスはすぐに消え去る」などと言って感染拡大を軽視してきました。「第二波はこない」と同じです。もしそれが正しければ「トランプ圧勝」も正しかったでしょう。
現実にはウイルスは猛威をふるい、トランプ大統領はバイデン候補に大きく水をあけられています。


「第二波はこない」はトランプ大統領の言いそうなことです。
「バイデンはボケてるョ!」という記事もありますが、これもトランプ大統領の言いそうなことです。

「WiLL」のバックナンバーを見てみると、安倍応援記事ばかりでなく、トランプ応援記事と、トランプ大統領の言い分と同じような記事が多く目につきます。

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「新型コロナウイルスは中国の陰謀だ」と「人種差別反対運動は反トランプの陰謀だ」という記事がやたら目につきます。「ディープステート」という言葉も出てきます。まるでアメリカ保守派の雑誌みたいです。

トランプ大統領は「中国ウイルス」という言葉を使って中国に責任転嫁する一方で、「ウイルスはすぐに消え去る」とも言ってきて、7月4日の独立記念日の演説では、新型コロナウイルスの症例の「99%は無害」と言いました。
ですから、「WiLL」にウイルス中国陰謀説とともに「第二波はこない」という記事が載るのも不思議ではありません。



「第二波はこない」という記事は、おかしな雑誌が予想を外したというだけのことではすまないかもしれません。
というのは、執筆者の一人の小川榮太郎氏は安倍首相にきわめて近い人物で、それなりの影響力があるかもしれないからです。

小川氏はFacebookにこんなことを書いています。

小川栄太郎


上久保靖彦教授の日本人集団免疫仮説に基づく「第二波はこない」説を自民党や担当大臣にレクチャーしているのです(担当大臣というのは常識的には西村康稔新型コロナ担当大臣のことでしょう)。

安倍政権は唐突に「Go Toトラベル」を前倒しして実施すると発表し、明らかに第二波が襲来していると思われる中でも強行して世の中を混乱させていますが、その判断にはこのことも影響していたのかもしれません。


トランプ大統領の妄想が日本の保守派に浸透し、それが安倍政権を動かしているかもしれないということです。
“中国ウイルス”ならぬ“トランプウイルス”の脅威です。

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7月22日、新型コロナウイルスの新規感染者数が795人になり、過去最多を記録しました。
安倍首相は官邸で記者から「Go Toトラベル」が始まったことについて聞かれ、「国民の皆様のご協力をいただきながら、慎重に経済活動再開を目指していく方針に変わりはありません」と答えました。

こういう答えを聞くと、いらっとします。
本来なら「この程度の感染者数では経済活動再開の方針を変える必要はないと思います」みたいなことを言うべきです。
もっとも、そうすると「では、どの程度なら方針を見直すんですか」と聞かれて、安倍首相に定見のないことがバレてしまいますが。

「感染防止と経済活動の両立」と言葉でいうのは簡単ですが、「感染防止」と「経済活動」という異質のものを天秤にかけて計るには、高度な判断力が必要です。

安倍首相は非常事態宣言を解除するときに「日本モデルの力を示した」と自慢げに言いました。
麻生財務相は「民度が違う」と言いました。

「日本モデル」も「民度が違う」も、つまるところ「日本スゴイ」ということです。
こういうことを言うと国民の喝采が得られると思っているのでしょうが、科学的に感染防止に取り組もうという意欲が感じられません。


安倍首相と麻生財務相に続く政権のキーマンである菅官房長官は、このところ存在感がありませんでしたが、「Go Toトラベル」の前倒しが決まってから、注目される発言をするようになりました。

7月11日、北海道で講演した菅長官は、最近の感染拡大について「この問題は圧倒的に『東京問題』と言っても過言ではない」と語り、「これは国の問題」と反論する小池都知事とやり合いました。

この「東京問題」という発言は、感染を小さく見せかけたいために言っただけかなと思いましたが、その後、「感染の根源」という言葉を使いました。

感染急増「夜の街」対策強化へ…菅氏「根源を一つ一つつぶしていく」
 政府は、新型コロナウイルスの感染者が多数出ているホストクラブなどへの対策を強化する。全国の警察が風俗営業法に基づき、各地の「夜の街」に積極的な立ち入り調査を行い、感染防止策を含む営業実態を確認する方針だ。

 菅官房長官は19日のフジテレビの番組で、接待を伴う店としてホストクラブやキャバクラを挙げ、「どこに新型コロナの根源みたいなものがあるか分かってきたから、警察が足を踏み入れ、根源を一つ一つつぶしていく」と述べた。
https://news.yahoo.co.jp/articles/32b8202aa328b5f71cbaf2a487eafe8c4f66ce01


「感染の根源」という言葉に驚きました。
感染に「根源」などあるはずがなく、すべては感染の「通過点」です。

「感染の根源」は単なる思いつきの言葉ではなく、菅長官は20日午前の記者会見でも語っています。


記者 コロナウイルスが蔓延している場所は限られているとおっしゃいましたけども、これは意味としては、蔓延するきっかけになった店舗が夜の街全体ではなくて、少ないところに限られているという意味なのか、市中に感染してないという意味なのか、どうなんでしょうか。
菅長官 夜の街の感染がきわめて大きいことは、たとえば東京都の検査でも明らかになってきているんじゃないでしょうか。明らかにホストクラブとかキャバクラ、そうしたところが根源になっているということは、今日までの検査の中で明らかになってきているというふうに思っています。そうしたところに風営法等を初めとする各法の義務を徹底させるということはだいじじゃないでしょうか。

小池都知事は「夜の街」という言葉をよく使いますが、これはパチンコ屋とともに差別的に見られる水商売を悪者にする一方、経済活動に直結する職場と通勤電車から国民の視線をそらせようという作戦でしょう。
ところが、菅長官はそれを真に受けたのか、ホストクラブやキャバクラを「感染の根源」と見なして、これから警察の立ち入り調査などで「根源を一つ一つつぶしていく」ということです。

これだけ市中感染が広がっている中で、今さらホストクラブやキャバクラを規制したところで、大した意味はありません。
菅官房長官は感染のメカニズムがなにもわかっていないようです。

トランプ大統領はアメリカの感染拡大を中国やWHOのせいにして攻撃していますが、菅長官も同じ発想をする人かもしれません。
菅長官は2月、3月ごろのマスク不足の対策を担っていて、マスク不足は転売ヤーのせいであるとして政令改正でマスク転売を禁止しましたが、効果はありませんでした。マスク不足はマスクの絶対数が不足しているからで、転売ヤーのせいではなかったからです。

ともかく、「感染の根源」などという言葉を使う人にまともな感染対策ができるとは思えません。

西村コロナ担当相も加藤厚労相も、記者会見や国会でしゃべっているところを見ていると、感染のことがよくわかっていないのではないかという気がします。


政府の「感染防止と経済活動の両立をはかる」という方針はいいのですが、「感染防止」と「経済活動」を天秤にかけて計れる人間が誰もいないので、政府はエンジンの壊れた船のように、利権と世論の風に吹かれて漂流しているだけです。

今の政府首脳が学習して向上するということは考えられないので、国民としては、せいぜい正しい方向の風を吹かせるしかありません。

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「Go To トラベル キャンペーン」の問題点について書こうと思いましたが、問題点が多すぎて、なにから書いていいのかわかりません。
いろいろ考えて、ようやく問題点を整理しました。

国土交通省は4月の一次補正予算に約1.7兆円の予算額の「Go Toキャンペーン」事業を盛り込みました。この事業には「Go To Travel キャンペーン」「Go To Eat キャンペーン」「Go To Event キャンペーン」「Go To 商店街 キャンペーン」などがあって、コロナ収束後に観光業などの地方経済を回復させることが目的です。

この事業が発表されたのは、緊急事態宣言が発出される前です。
そんなときからコロナ収束後の計画を立てていたとは、長期的視野がすごいのか、危機感がなさすぎるのか、どちらにしても感心します。

この少し前には、自民党の農林部会や水産部会が和牛や魚の消費喚起をするために「お肉券」や「お魚券」を計画しましたが、これは反対の声が強くて、立ち消えになりました。
「Go Toキャンペーン」も基本的に同じようなもので、特定の業界を税金で救済するものです。

ここに問題がありますが、ただ、特定業界を税金で救済することが必ずしも悪いわけではなく、やり方次第です。

キャンペーン
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001339698.pdf

これらのキャンペーンは、4月7日の閣議決定で「感染症の拡大が収束した後」に実施するとされました。

キャンペーンの目玉である「Go Toトラベル」は、旅行代金の半額(うち3割は旅行先で使えるクーポン)を政府が負担するというものです。こんなに得なら、これ目当てに旅行にいく人がいっぱい出るでしょう。

「Go To トラベル」は8月初めから実施する予定でした。
この時期も問題ではありましたが、7月10日の記者会見で赤羽国交相が7月22日から前倒しして実施すると発表して、急に問題が大きくなりました。
そのとき感染者が明らかに増加傾向にあったからです。


この決定を主導したのは菅官房長官のようです。
菅長官は感染者の急増について、「この問題は圧倒的に『東京問題』と言っても過言ではない」と言って、問題を軽視しましたが、小池都知事は「これは国の問題」と反論、さらに「Go Toトラベル」について「冷房と暖房と両方かけている」と批判しました。

結局、菅長官も国民の反対の声に押されて方針転換しましたが、東京発着をキャンペーンの対象から除外するという中途半端な対応でした。
東京だけ除外したのは、菅長官の小池都知事に対する感情からかもしれません。

「東京だけ除外」にしたために、さまざまな問題が生じました。東京都民でないことを証明する書類が必要になるとか、東京ディズニーランドとスカイツリーに行くツアーはどうするのかといった問題があり、赤羽国交相はキャンセル料は補償しないと言っていたのに自民党の岸田政調会長がキャンセル料補償を検討していると言ったり、赤羽国交相が高齢者と若者の団体旅行は除外すると言ったり、わけのわからないことになっています。

こうしたいきさつを見ると、「Go Toトラベル」自体の問題よりも、突然実施を前倒しし、ゴリ押しし、東京だけ除外という半端な対応をしたことによる問題がほとんどであることがわかります。
当初の閣議決定通り「感染症の拡大が収束した後」に実施すれば、なにも問題はなかったでしょう。


ただ、ほんとうに感染が収束すればキャンペーンなどしなくてもみんな旅行するようになるはずです。そうすれば、キャンペーンなど必要ないということになります。

そう考えると、旅行代金の半額を政府が負担するというこの「Go Toトラベル」は、感染の危険性がある中でも人を旅行させようと設計されたキャンペーンであると考えられます。
つまり「感染症の拡大が収束した後」に実施するという閣議決定が、キャンペーンの趣旨に反するのです。
感染がいっこうに収まらず、誰も観光旅行をしないような今こそ、観光業界救済のためにキャンペーンを発動するというのは、このキャンペーンの本来の姿です。

そう考えると、今の時期に実施を前倒しし、ゴリ押しした政府の態度は一貫しています。
東京を除外したところは少しぶれましたが、これは東京都に対するいやがらせでしょう。

つまり政府の方針は、「多少の感染リスクがあっても経済を回していこう」ということです。
これは前から一貫していて、政府が緊急事態宣言を出したのも、小池都知事や医師会やマスコミにせっつかれて、いやいや出したという感じでした。
今、感染者数は緊急事態宣言当時の水準に近づいていますが、政府が緊急事態宣言を出すような気配はまったくありません。

問題は、そうした政府の方針を誰も説明しないことです。
安倍首相か菅官房長官が「多少の感染リスクはあっても経済回復を優先するべきであるという観点から、『Go Toトラベル』を実施することにした」と国民に向かって説明すれば、もちろん反論があるでしょうが、論点が明確になります。
感染防止優先か経済回復優先か――という国民的議論が起こって、そのうちコンセンサスが成立するでしょう。
これまでの日本人は新型コロナを恐れすぎていたので、少し経済優先にシフトするのが適正かと思います。

そういう説明能力のある政治家が一人もいないのが日本の不幸です。

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