
今井メロ公式ブログより
今井メロさんが子育てに悩んだ挙句、子どもを施設に入れることをブログで告白しました。
「ひどい親だ。子どもを捨てるのか」などと批判されそうですが、意外と賛同の声が上がっています。
今井メロさんというのは、昔は成田夢露という名前で兄の成田童夢さんとともにスノーボード選手として活躍し、トリノ・オリンピックに出場したこともあり、美人アスリートとして人気でした。
しかし、オリンピックで惨敗したことでバッシングされ、その後、水商売、風俗嬢、ヘアヌード写真集、AV嬢、整形告白、3度の結婚と離婚というスキャンダラスな人生でした。
現在は、芸能事務所に所属し、スノーボード指導員をしているということです。
シングルマザーで、子どもが3人いて、1人は元夫のところにいます。
今井さんが子どもを施設(たぶん児童養護施設)に入れることにしたのは、子育てがうまくいかなくて、虐待か虐待一歩手前の状態になっているという自覚があったからでしょう。
実際に虐待か虐待一歩手前だったのかどうかを確かめるために、今井さんの公式ブログを見てみました。
私の子供は長男、長女、おちびーぬその中でも非常にぶつかってきた母と娘(長女)幼い頃はイタズラ事で済んでいた件も今や結構、大事になったりして叱らざる負えない事態が続いたりしてきましたその中で長女も知恵がついてきて頻繁に嘘をつくようになった挙句の果てには家出からの警察に保護私(親)の愛情が届いていないから構ってほしくて本人なりの必死のアピールなのかなっと思い心のケアにも励みました産まれた頃から保育器で育ち他の兄弟に比べ腕の中に抱いてあげられる時間が短かったからけど…成長するに連れて様々な悪事を働くようになり学校でも問題を起こすように私なりに話を優しく聞いたり色々なやり方で接してみましただけど直ることはなく悪化する一方でした毎回、私なりにまぁこ(あだ名)に想いを伝えましただけど…ごめんなさいもう…分からなくなったんだ彼女はもうすぐ施設に入所します決して投げやりとかじゃないです今もこの文をかきながら手が震えていますみんなに嘘をつきたくない真実を伝えなきゃって思いで必死なんだhttps://ameblo.jp/majestavictory/entry-12641343778.html
ひと昔前なら、嘘をついたり悪事を働いたりする子どもが悪いという声が多かったかもしれません。
そういう考えの人は、「私なりに話を優しく聞いたり」という言葉をとらえて、「そういう態度がよくない。悪事を働いたときはきびしく叱るべきだ」などと主張します。
いや、今回もそういう意見があったのでしょう(現在、ブログのコメント欄では批判的な意見は削除されているようです)。
それに対して今井さんはこのように書いています。
確かに悪事をはたらくのはよくないかもせんよけどさそれは母子共に原因があるって理解してるだから皆さんが知らない部分も伝えたいまぁこ(娘のあだ名)はね誰よりも優しくて明るい子なんよ自分の意思が強くワガママな部分は私そっくりだけどいい部分でもあると私は思うママの事、本当は大好きだよってお手紙何度も書いてくれて何度も嬉しくて読み返しては泣いたよhttps://ameblo.jp/majestavictory/entry-12641595639.html
「子どもが悪いことをした→子どもを矯正しなければ→子どもを叱る→直らないのでさらに叱る→虐待」
こういう流れで虐待というのは起きると思われます。
今井さんは、子どもが悪いことをするのは自分にも原因があるという認識があったので、虐待の手前でとどまったのでしょう(ほんとうは「悪い」という認識に問題があります。「美は見る者の目に宿る」という言葉があるように「善悪は見る者の目に宿る」のです)。
今回のことはヤフーニュースで『今井メロ、長女の施設入所を告白「ごめんなさい もう…分からなくなった」 “親と子”の在り方に多様な意見集まる』という記事として取り上げられました。
そのコメント欄には、子どもが悪いという声はほとんどありませんが、代わりに今井さんが悪いという声が多くあります。
けっこう多いのが、「施設に入れるのはいいとしても、そのことを公表するのはよくない」という意見です。
しかし、施設に入ったのは、子どもに問題があるからではなく周囲の事情によるのですから、子どもにとって施設にいた経歴はマイナスになりませんし、隠すべきことでもありません。
それから、今井さんの生き方がよくないから子どもに問題が生じるのだということで、今井さんを批判する意見が多くあります。
「子どもが悪くなったのは親が悪いから」というわけです。
確かにそうかもしれません。
そうすると、「親が悪くなったのはその親が悪いから」ということも言えるはずです。
つまり悪の連鎖、虐待の連鎖です。
今井メロさんと子どもの関係は、ブログを読んである程度わかりました。
今井メロさんと親の関係は、わかるわけないだろうと思われるかもしれませんが、これがわかるのです。
今井さんは2012年に『泣いて、病んで、でも笑って』という本を出版しています。
この本に、自身の生い立ちが詳しく書かれています。
私は出版当時に読んで、その内容をこのブログの「スパルタ教育を受ける不幸」という記事で紹介したことがあります。
それがここにきて役立つことになりました。
そこから一部を再録します。
今井メロさんは1987年生まれで、上に兄が2人いて、長兄が成田童夢、次兄は一般人です。メロさんが5歳のときに両親が離婚し、メロさんと童夢さんは父親のもとで育ち、次兄はのちに母親に引き取られ、父親は再婚して弟が生まれます。複雑な家庭環境です。メロさんは幼いころの記憶がほとんどないといいます。ようやく記憶が始まるのは小学校に入ってからです。父親はファッションカメラマンですが、メロさんは父親からモーグルを教わります。5歳のときには滑っていて、6歳のときにモーグルマスターズの競技会、一般女子の部に出場し、成人女性を抑えて優勝します。といっても、本人には記憶がないそうです。6歳のときにモーグルからスノーボードに転向します。父親がスノーボードを勧めたのです。父親はトランポリンを使う独自の練習法を考え出します。これは今でこそポピュラーな練習法となっていますが、当時はまだ誰もやっていなかったそうです。トランポリンのある自宅屋上にはカメラが設置され、父親はリビングで練習の様子をチェックしていて、少しでも手を抜くと屋上にやってきて、叱責の声が飛ぶということで、メロさんはいつもその恐怖におびえていました。父親は徹底したスパルタ指導者で、メロさんは練習漬けの生活を送り、友だちと遊ぶ時間もなく、友だちは一人もいませんでした。メロさんは父親のことを「パパ」と呼んでいましたが、あるときから父親は「オレは先生や」といい、練習以外の家の中でも「先生」と呼ぶようになります。メロさんは15歳のころからプチ家出を繰り返すようになり、近所に子どもの「駆け込み寺」みたいな家があったので、その家に行って「お父さんにぶたれて怖いんです。助けてください」と訴えます。それがきっかけになり、メロさんは自分の意思で児童保護施設に入ります。そこでは「やっと解放された~」という気持ちになったそうです。その後、精神科病棟に入院し、また家に帰り、そして母の家に行き、姓を成田から今井に変えます。メロさんはワールドカップで2度優勝し、トリノオリンピック代表に選ばれると金メダルへの期待が高まります。派手な壮行会はテレビ中継され、そこでメロさんはまるで芸能人のようにラップを歌います。そうしたことの反動もあって、オリンピックで惨敗すると、世の中からバッシングを受けることになります。それからメロさんの人生は惨憺たるものになります。一時的に引きこもったあと、キャバクラ、ラウンジという水商売勤めをし、ホストクラブ通いをし、さらにはデリヘルという風俗嬢にもなって、それが週刊誌に報じられます。リストカット、拒食症と過食症、恋愛依存症、妊娠中絶、二度の結婚と離婚、整形手術、レイプといったことも本の中で告白されます。こうしたことの直接の原因はオリンピックで惨敗して世の中からバッシングされたことですが、やはり根底には家庭環境の問題があったでしょう。早い話が、親から十分に愛されなかったのです。この本を読むと、たとえばリストカット、拒食症と過食症、恋愛依存症といったことも、根本の原因は愛情不足なのだろうと思えます。また、メロさんは17歳のときに高校生らしい3人組からレイプされます。これはもちろんレイプするほうが悪いのですが、この女ならレイプしても訴え出ないだろうと見られていたという可能性もあります。学校でイジメられる子どもにも共通した問題があるのではないでしょうか。親から十分に愛されないと自尊感情や自己評価が低くなってしまいます。風俗嬢というのは社会的に低く見られる職業ですが、自己評価の低い人は抵抗なく入っていってしまいます。整形手術にも自己評価の低さということがあるのではないでしょうか。メロさんの場合、練習で鼻を骨折したための手術もあったのですが、子どものころから容姿コンプレックスがあったということです。普通、このように自己評価の低い人は自分の本を出すことはできません。精神科医やカウンセラーの本に、リストカットする患者などの症例として出てくるくらいです。メロさんは美人で人気あるアスリートだったために自分の人生を本に書くことができました。
今井さん自身が父親からひどい虐待を受けていたのです。
プチ家出を繰り返したということですから、自分の娘が家出をしたときには、自分自身と重なったに違いありません。
自分もみずから施設に入った経験があるので、娘を施設に入れることも決してマイナスにはとらえていないのでしょう。
今井さんは自分の生い立ちを本に書くことで、自分の経験を相対化できたのかなと思います。
ただ、「幼いころの記憶がほとんどない」というので、気づかないうちにそのころの経験に支配されているということがありそうです。
このあたりのことはカウンセラーなどの力を借りたほうがよさそうです。
「虐待の世代連鎖」ということはよく言われますが、私たちは今井さんの本のおかげで、それを具体的に知ることができました。
今井さんを批判するのが愚かなこともわかったでしょう。
ということは、今井さんの父親を批判するのも同様に愚かなことです。
父親にもつらい過去があったのだろうと想像されます。
今井さんがそこまで考えられるようになれば、自分自身も癒されるはずです。