村田基の逆転日記

進化倫理学の威力を試すブログ

タグ:アジア情勢

2017年の漢字が「北」であったように、北朝鮮に振り回された1年でした。
いや、正確に言うと、北朝鮮に対応するトランプ政権と安倍政権に振り回された1年でした。
 
たとえば安倍首相は1222日にこんなことを言っています。
 
安倍首相、韓国への渡航「問題ない」
安倍晋三首相は22日、都内の会合であいさつし、今後の北朝鮮情勢に関連し「基本的には(来年2月に)平昌冬季五輪があるから、大丈夫だ。緊張状態はあるが、韓国に行く分には(安全面で)何の問題もない」との認識を示した。
 
さんざん「国難」などと脅威をあおっておきながら、今度は「何の問題もない」です。しかも、その理由に五輪を挙げているのも不可解です。北朝鮮が五輪を尊重するということなのか、トランプ政権が五輪中は攻撃しないということなのか、それとも安倍首相が適当なことを言っているだけなのか。
 
一方で、政府が主催したミサイル避難訓練は3月以降、22道県で25回行われ、たとえば学校では、児童は窓から離れ、5分間、床に伏せて頭をかかえる姿勢をとるなどしたそうです。
 
これは通常弾頭のミサイルを想定した訓練のように思われますが、安倍首相は「北朝鮮はサリン搭載の弾頭を保有している可能性がある」と国会で発言したことがあります。化学兵器を想定するなら、ガスマスクを配布するとか、風向きを見て避難するとかの訓練をしなければなりません。
いや、韓国の統一相は2月に、北朝鮮は核爆弾の小型化をしてノドンに搭載可能だと国会答弁で述べています。核ミサイルも想定しなければなりません。
 
それに、地域も限定するのが当然です。北朝鮮が狙うのは米軍基地と東京、大阪などの大都市です。避難訓練をするなら、そういう地域で重点的にしないといけません。
 
しかし、米軍基地の近くが危ないなどというと、基地反対運動が起きかねませんから、ごまかしているのでしょう。
 
北朝鮮はICBMを開発したとはいっても、米本土を攻撃する能力はまだないとされます。核ミサイルの脅威が現実のものとなっている日本がアメリカと同一歩調をとれるわけがありません。
安倍首相は国民の命を危険にさらしてもトランプ大統領にへつらうという、まさに売国政治家です。
 
 
根本的なことを言えば、日本はアメリカの核抑止力に守られながら、北朝鮮に対しては核抑止力を持つなという、明らかに不当な要求をしています。
不当な要求でも、うまくいけばいいという考え方もあるでしょうが、明らかに不当な要求というのは通りません。
これは「最後通牒ゲーム」というゲーム理論の実験でも明らかになっています。人間は、明らかに不公平な取引を求められると、自分が損をしてもそれを拒否するのです。
これは人間が不合理な行動をする例とされますが、実験ではなく現実においては、不合理とはいえません。一度不公平な取引を受け入れた人間は、周りの人間になめられて、のちのち損をするに違いないからです(実験は見知らぬ人間同士で、一度限りという条件で行われるので、不合理だということになります)
 
ですから、いくら経済制裁をしても、北朝鮮に不当な要求を飲ませることはまず不可能です。
 
2018年を北朝鮮の核問題解決の年としたいなら、日本は北朝鮮に対する不当な要求をやめて、北朝鮮が納得して受け入れるような提案をするべきで、その方向でトランプ政権を説得するしかありません。
 

トランプ大統領は11月初めに予定されている訪韓の際に、南北軍事境界線の板門店を視察することを検討していると報じられていましたが、結局トランプ大統領の安全を考慮して視察はしないことになりました。
トランプ大統領の訪韓は1泊2日の日程なのに、そこに板門店視察を押し込もうとしたのは、よほど板門店を見たかったのでしょう。
 
代わりにというわけではないでしょうが、トランプ大統領に先立って訪韓したマティス国防長官は1027日、韓国の宋永武国防相とともに板門店を訪問しました。
 
トランプ政権高官は板門店訪問が好きなようです。
ティラーソン国務長官は3月17日に、ペンス副大統領は4月17日に板門店を訪問しています。
 
非武装地帯をはさんで両軍がにらみ合っているという休戦状態のところは、世界で朝鮮半島にしかありません。
ですから、ここは一種の観光名所になっています。
 
私も数年前に板門店ツアーに参加したことがあります。
「なにがあっても責任を問いません」みたいな文書に署名させられ、手を振ってはいけないとか笑ってはいけないとかの注意を受けます。
軍事境界線のちょうど上に会議場があって、周囲には両軍の警備兵がいて、緊張感があります。会議場の中に入ることもできますが、向こう側のドアに近づくなと注意されます。急にドアが開いて向こう側に拉致されるかもしれないというのです。
非武装地帯は野生動物の楽園になっているということです。
 
あたりを見物していると、軍事境界線の向こうのほうに人の集団が見えます。ガイドが言うには、やはり板門店見物にきた中国人観光客だそうです。北朝鮮も板門店ツアーをやって外貨稼ぎをしているのです。彼らもこちらを見ていて、観光客の見物の対象になるのは妙な気分です。
 
トランプ政権の高官たちはどういうつもりで板門店を訪れるのでしょうか。外交的に意味がある行為とも思えません。やはり休戦状態なるものを一度見物しておきたいということでしょう。
 
朝鮮休戦協定が成立したのは1953年ですから、もう64年も休戦状態のままです。なぜこんなことになったのかというと、アメリカが朝鮮半島から撤退するという約束を破って平和条約を締結しなかったからです。このことは前に書いたことがあります。
 
知らなかった朝鮮休戦協定の話
 
ですから、いつまでも休戦状態が続いているのはアメリカが望んだことなのです。
アメリカ政府高官たちも、それが望ましい状態だから見にくるのでしょう。
 
なぜアメリカはそんなことを望むかというと、覇権主義のためというしかありません。
アメリカは世界の70以上の国と地域に約800の軍事基地を有しています。
朝鮮半島の基地は、アメリカから見て西方の最前線です。アメリカは建国以来、西へ西へと開拓を進めてきて、とうとうここまでたどり着いたのです。
 
アメリカが軍事基地を置いておくには一定の軍事的緊張が必要です。休戦状態というのは実に好都合で、そのため64年も続いてきたのでしょう。
ただ、その結果、北朝鮮の開発したICBMがアメリカ本土に届くかもしれないという事態になり、アメリカも少々あわてているというところでしょう。
 
現在、アメリカが北朝鮮を攻撃するかしないかという話になっていますが、そもそもアメリカは朝鮮半島をどうしたいのかということが問われないといけません。
平和条約を締結して朝鮮半島を平和にしたいのか、それとも軍事的緊張状態を続けたいのか、どちらかということです。
 
本来なら安倍首相がトランプ大統領に会ったときに問いただすべきですが、トランプ大統領に追随するだけの安倍首相にできるわけがありません。

近ごろ気になるのは、金正恩氏の笑顔です。
公開される動画や写真でやたら“満面の笑み”を浮かべています。
 
「金正恩 笑顔」で検索した画像
 
私は最初のうち、あれはつくり笑いではないかと疑っていましたが、何度も見るうちにつくり笑いとは思えなくなりました。
演技でもいちばんむずかしいのは笑顔や笑いだとされます。不自然な笑顔はすぐにわかるものです。
 
金正恩氏が父の死で最高権力者の座についたのは201112月、27歳のときです。
最初のうちは固い表情ばかりでした。この若さで最高権力者の座が務まるはずがなく、実権は長老などが握って、金正恩氏はお飾りだろうと言われていました。
 
最近の笑顔を見ていると、完全に権力を掌握した自信の表れという気がします。
 
しかし、プーチン大統領やメルケル首相もリーダーシップに自信を持っているはずですが、あんな笑顔はしません。権力者というのはだいたい威厳のある顔をしているものです。
そうすると、金正恩氏の笑顔は、自分が成長したことを喜ぶ若者の素直な笑顔といったものでしょうか。
ネットで検索していると、「金正恩氏の天真爛漫な笑顔にいやされる」といった声がけっこうあります(とはいえ、金正恩氏は兄の金正男氏を暗殺したりしています)
 
金正恩氏は暗殺を恐れているという説もありましたが、あちこち視察に出かけていますし、ミサイル試射成功のときなどは喜んで近くの人に抱きついたりして、完全に周りの人間を掌握しているという自信がありそうです。
核ミサイルが実用段階に入っていることも自信の根拠でしょう。
 
金正恩氏は9月22日、自分の名前でトランプ大統領を非難する声明を発表しました。最高指導者名義で声明を発表することは、祖父の金日成も父の金正日もしなかったということで、ここにも金正恩氏の自信がうかがえます。
こうなってくると、自信過剰でなにかしでかすのではないかと、それが心配です。
 
 
ともかく、金正恩氏の笑顔を見ていると、経済制裁の効果がほとんどないことがわかります。
韓国銀行(中央銀行)によると、北朝鮮の2016年の経済成長率は3.9%となり、1999年(6.1%)以来17年ぶりの大きさになったということです。
 
プーチン大統領は、「北朝鮮は雑草を食べることになったとしても、自国の安全が保障されない限り(核開発の)計画をやめない」と言いましたが、それ以前の問題です。
 
安倍首相は国連演説で「対話ではなく圧力」と語り、経済制裁の履行を世界に訴えましたが、やったところでほとんど効果はありません。それは日本国民もわかっているでしょう。
危機感をあおって選挙を有利にしようという安倍首相の作戦ですが、北朝鮮の核ミサイルの射程内にある日本の首相のとるべき態度ではありません。
 

9月17日で拉致問題が明るみに出てから15周年でした。
そのときに5人が帰国しただけで、それ以降は拉致問題についてはなんの進展もありません。
 
当時、金正日委員長は拉致を認め、謝罪しましたが、まだ隠しているだろうということで、日本国内で北朝鮮に対する非難が高まりました。
非難したくなるのは当然ですが、残った拉致被害者を取り戻したいなら、それなりの戦略を考えるべきでした。
 
拉致被害者は北朝鮮国内にいるわけですから、日本政府が捜査することはできません。北朝鮮政府にやってもらうしかないわけです。日本がいくら「拉致被害者すべてを明らかにしろ」と要求しても、北朝鮮がその気にならなければだめです。現に北朝鮮政府に調査を約束させたことはありましたが、北朝鮮政府にその気がないので、なんの結果も出ませんでした。
 
どうすれば北朝鮮政府をその気にさせることができるか。ここが考えどころでした。
 
 
ジョージ・ワシントンが子どものころ、父親がたいせつにしていた桜の木を切ってしまいましたが、ワシントンがそのことを正直に父親に話したところ、父親はワシントンの正直さをほめたたえたという話があります(この話は事実ではないようです)
この話は、正直のたいせつさを教える話とされていますが、実際は叱らないことのたいせつさを教える話です。もし父親がこのときにワシントンを叱っていたら、ワシントンはそれから嘘をつくようになったでしょう。
 
また、「レ・ミゼラブル」のジャン・バルジャンは教会から銀の食器を盗み、警察につかまりますが、教会の司教が「それは私が彼に与えたものだ」と言ってかばったので、ジャン・バルジャンは改心します。
 
金正日氏を改心させ、正直にさせたいなら、拉致を認めたことをほめて、許すことです。
日本国内では北朝鮮を非難する声が高まっていても、小泉首相と安倍晋三内閣官房副長官が個人的に金正日氏への感謝と信頼を表明して、国交正常化交渉を進めていけば、いずれ金正日氏がみずから残りの拉致被害者のことを話したかもしれません。
少なくともそれしか方法はなかったといえます。
 
それに、9月17日に拉致問題が明るみに出たときは、小泉首相と金正日委員長が平壌宣言に署名したときでもあります。
平壌宣言は、日朝国交正常化を目指すとともに、「朝鮮半島の核問題の包括的な解決」をうたい、北朝鮮側は「ミサイル発射のモラトリアムを2003年以降も更に延長する意向」を表明するものでした。
事態が平壌宣言の方向に進んでいれば、北朝鮮の姿は今とまったく違ったものになっていたはずです。
小泉氏と安倍首相の対応の誤りがつくづく悔やまれます。
 
現在、日本は北朝鮮への制裁と圧力を強めるように主張していますが、これもまったく同じ誤りをしています。
いくら制裁と圧力を強めても、北朝鮮が核を放棄するはずがありません。
 
制裁と圧力で北朝鮮の体制崩壊を目指すというなら、それはそれでひとつの戦略です(そのあとがたいへんですが)
しかし、日本やアメリカにそういう戦略があるわけではなく、ただ制裁のための制裁をしているだけです。
 
 
こうした誤りは、世の中にまともな倫理学が存在しないことからきています。
犯罪が起こったときも、世の人々は犯罪者を非難することで反省させようとしますが、非難されて反省する人はいません。寛容な心に触れたときに人は反省するのです。
ただ、犯罪者が反省しようがしまいが、世の中にとってはどうでもいいことです。どうせ刑務所に放り込むか死刑にするからです。
犯罪者を非難することは、世の人々にとって娯楽のようなものです。
 
しかし、北朝鮮という国は刑務所に放り込むわけにも死刑にするわけにもいきません。しかも、今や核兵器も持っているのです。
いつまでも「北朝鮮制裁」という娯楽をしている場合ではありません。
北朝鮮を反省させ、まともな国にするということに取り組むときです。
 

日本における北朝鮮関係の報道は“北朝鮮悪玉論”一色に塗りつぶされているのがあまりにも異様なので、私は北朝鮮にも生存権や自衛権があるという観点から、アメリカや日本の対応を批判してきましたが、歴史的観点から批判する人がいました。
 
朝鮮戦争の休戦協定は1953年に署名されましたが、それがそのままになっていて、ですから今も休戦状態です。これが異様な事態であることは誰もが感じているでしょうが、なぜそうなっているのかということはほとんどの人が知らないのではないでしょうか(私も知りませんでした)
 
9月13日のテレビ朝日系午前の「ワイド!スクランブル」を見ていたら、遠藤誉筑波大学名誉教授が「このような複雑な問題は出発点からひもとかないとわかりません」と言って、朝鮮戦争の休戦協定のことを解説しておられましたが、これが目からうろこの話でした。
遠藤氏は前からこのことをインターネットで発信して、著作でも書いておられたそうですが、あまり注目されていなかったようです。
 
遠藤氏の次の記事にもその話が書かれています。
 
失敗し続けるアメリカの戦略――真実から逃げているツケ
 
この記事から休戦協定に関する部分を引用しておきます。
 
 
◆アメリカが休戦協定を破っていることが根源的原因
 何度も繰り返すが、北朝鮮問題の根源的理由はアメリカが朝鮮戦争(1950625日~1953727日)の休戦協定(1953727日)を破っていることにある。
 休戦協定第60項では、休戦協定締結から3ヵ月以内に、朝鮮半島にいるすべての他国軍は撤退することとなっているが、アメリカを除くすべての軍隊が撤退したというのに、アメリカだけは撤退せずに今日まで至っている。休戦協定はアメリカが暫定的に提案したので、休戦協定の冒頭および第60項では、「終戦のための平和条約を結ぶこと」が大前提となっている。
 そのため平和条約締結と他国軍撤退のためのハイレベル政治会議を迅速に開催することが休戦協定60項には書いてある。それを実行するために195310月にジュネーブで開催された「ハイレベル政治会議招集のための予備会談」をアメリカだけがボイコット。
 しかし朝鮮戦争に参戦したのはアメリカが主導した「国連軍」である。
 朝鮮戦争を始めたのは北朝鮮で、金日成(キム・イルソン)の朝鮮半島統一の野心から始まった。だから、もちろん最初の原因を作ったのは北朝鮮であることは言うまでもない。悪いのは北朝鮮だ。その事実は動かない。
 しかし形勢不利と見て休戦を呼び掛けたのはアメリカだ。
 つまりアメリカが主導した国連軍なのである。国連加盟国のうち、アメリカ、イギリス、フランス、オランダ、カナダなど、22カ国に及ぶ。
 したがって、アメリカのボイコットは国際法違反だということで、当時の国際社会の非難の的となった。そこでやむなくアメリカは544月にジュネーブで開催されたハイレベル政治会議に出席したが、「休戦協定60項に基づく外国軍隊の撤去と平和条約締結」に関する話し合いはアメリカの反対により決裂した。
 なぜならアメリカは、休戦協定に署名しながら、同時に韓国との「米韓相互防衛条約」にも署名しているからだ。米韓相互防衛条約第二条には「いずれか一方の締約国の政治的独立又は安全が外部からの武力攻撃によって脅かされているといずれか一方の締約国が認めたときは、(中略)武力攻撃を阻止するための適当な手段を維持し発展させ、並びに協議と合意とによる適当な措置を執るものとする」となっている。つまり米韓軍事同盟を結んだことになる。
 そして米韓相互防衛条約第四条では概ね「アメリカの陸空海軍を、大韓民国の領域内及びその附近に配備する権利を大韓民国は許与し、アメリカ合衆国は、これを受諾する」となっており、さらに第六条では「この条約は、無期限に効力を有する」となっている。
 すなわち、完全に休戦協定第60項に反する条約に、アメリカはサインしているのだ。
 最初から休戦協定に違反しているのだから、「休戦協定を遵守すること」を考慮しない限り、北朝鮮問題など解決できるはずがない。
 
◆思考停止――なぜ日米はアメリカの国際法違反に目をつぶるのか
 忖度という言葉が日本では話題になった。
 主として、権力を持っている相手の意向を考慮して、それに沿うような形の選択をする行為として注目された。
 第二次世界大戦後、ほぼアメリカ一強でこんにちまで来た西側諸国や日本にとって、「アメリカに都合の悪い事実に触れてはいけない」というのが暗黙の了解で、見てみぬ振りをしてきた。それが習性となって、今では「アメリカが休戦協定違反をすることが正義」という錯覚に染まり、「そもそもアメリカが休戦協定違反をしていることさえ知らない」という思考停止状態にさえなっている。
 
 
アメリカが休戦協定違反をしている――こんな基本的なことを知らずにほとんどの日本人は北朝鮮問題を論じているのです。
 
もっとも、アメリカにも言い分はあるでしょう。米軍が半島から撤退すると半島が全部共産化されるので、それを阻止するのがアメリカの使命というわけです。
しかし、冷戦が終わったので、もうその理屈は成り立ちません。
 
今や北朝鮮を承認する国は百六十何か国もあり、ヨーロッパのほとんどの国が承認しています。
日本も、小泉首相が訪朝して署名した平壌宣言は国交正常化を目指すものでした。しかし、拉致問題があまりにも問題化したためにいまだに国交正常化ができていません。
 
今、日本とアメリカだけが北朝鮮に対して特殊な立場にいるのです。
 
 
もちろん北朝鮮は異様な独裁国家です。
しかし、撤退せず、平和条約への話し合いも拒否してきたアメリカがそうさせたという面も否定できません。
アメリカは毎年2回の大規模な米韓合同軍事演習をして北朝鮮にプレッシャーをかけ続けてきました。話し合いを拒否された北朝鮮が軍事力に頼る国家になったのはある意味必然です(北朝鮮は戦車と航空機を実質的に放棄しているので、韓国へ侵攻する能力はなく、もっぱら抑止力を強化しています)
 
アメリカは、北朝鮮には対話より圧力という態度です。
なぜアメリカはいまだに国交正常化と平和条約への話し合いを拒否するのでしょうか。
アメリカの対北朝鮮政策を問いただすことが先決と思われます。

安倍改造内閣でちょっと驚いたのは、河野太郎氏が外務大臣に起用されたことです。
河野太郎氏は行政改革に熱心な人ですから、内政向きのはずです。
 
どうして河野氏が外務大臣かということにはいろいろな説がありますが、中国や韓国に配慮したものではないかという見方もあります。河野氏の父親の河野洋平氏は慰安婦問題で河野談話を出した人で、中国や韓国の受けがよさそうだからです。
現に韓国のメディアはこの人事を好意的に伝えています。
 
安倍首相はずっと「地球儀を俯瞰する外交」と称して中国包囲網づくりに力を入れ、中国の周辺国にバラマキ外交を行ってきました。
ところが、安倍首相は6月初めに、中国の「一帯一路」構想に協力する意向を表明しました。
その少し前には、二階幹事長が日本政府はアジアインフラ投資銀行(AIIB)に参加を決断すべきだとの考えを表明しています。
 
つまりこの時点で、安倍政権は中国包囲網づくりをやめて、中国と協力していく方向に転換したと思われます。
このことはこのブログでも書きました。
 

「安倍首相は中国へすり寄るつもりか」


河野氏の外務大臣起用もその流れにあると思われます。
 
これは日本外交の大転換です。
しかし、このことはあまりメディアでは論じられないので、私の考えすぎかと思っていたら、「選択」8月号にこんな記事がありました。
 
 
20日中首脳会談実現の舞台裏 習近平に拝み倒した安倍官邸
 七月八日にドイツ第二の都市ハンブルクのホテルで日中首脳会談が行われたが、裏では日本側が譲歩を重ねていた。
 会談実現に向けて日本側は五月から準備。谷内正太郎・国家安全保障局長が、来日した楊潔篪国務委員を箱根に招いて実施を頼み込んだのだ。しかし中国側は態度を明らかにせず、七月に入り、主要二十カ国・地域(G20)首脳会議の開催の直前になってようやく了承を伝えてきた。しかも、この段階になって、「面会するなら宿泊先に来い」という要求をしてきたのだ。まるで日本側が呼び出されたような格好だが、首相官邸はこれを了承した。当初、七日に開催される予定だったが、これも中国側の意向を忖度して八日に変更した。というのも七月七日は盧溝橋事件が起きた日だったため、「習近平氏の感情を損ないかねない」という見方が出たのが原因のようだ。
 現地時間の七日午前、G20会合に出席した安倍晋三首相は会場で習近平主席に「会って話をしましょう」と直接話しかけた。日本側がこうした涙ぐましい努力を重ねたものの、中国から正式な連絡を受け取ったのは七日夜になってからだった。土下座せんばかりに拝みこんで実現したものであったことがよくわかる。
 
 
やっぱり安倍首相は中国包囲網づくりはやめて、中国にすり寄っていたのです。
しかし、このときもメディアはこの会談のことをあまり大きく報じませんでした。日中首脳会談実現というと、普通は大きなニュースなのですが。
 
それにしても、中国に土下座せんばかりに頼み込んで会談を実現したというのは情けない限りです。
私は、安倍政権の外交方針の転換は、アメリカべったりから、アメリカと中国を天秤にかけるしたたかな外交への転換かもしれないと思ったのですが、そういうことではなかったようです。
自主独立の外交をやったことがないので、アメリカ依存か中国依存かという二者択一になってしまうのでしょう。
 
もちろん背景には、中国の台頭と、トランプ政権のでたらめさがあります。
ということは、安倍外交の迷走はこれからも続くはずです。
メディアや野党はもっと追及するべきです。

加計学園と共謀罪に隠れがちですが、安倍政権の外交方針が大きく変化しているようです。
 
トランプ大統領がパリ協定からの離脱を表明した翌日の6月2日、麻生太郎財務相は閣議後の記者会見で「その程度の国だということですよ」と語りました。
麻生氏は放言癖のある人ですが、山本公一環境相も記者会見で、「失望に、プラス怒りを覚えている」と語りました。
日本の政府高官が反米的な言葉を口にするのは長らくなかったことで、驚きました。
 
そして、安倍首相は5日、都内で講演した際、中国の「一帯一路」構想に協力する意向を表明しました。
これにもびっくりです。安倍首相はこれまでもっぱら中国包囲網を形成するために世界を飛び回って、バラマキ外交をしてきたからです。
中国包囲網構築をやめたとすれば、外交方針の大転換です。
 
 
安倍政権がトランプ政権に見切りをつけたというのはありそうなことです。トランプ政権は人事すらいまだに固まらず、大統領が弾劾される可能性も高まっています。麻生氏らの発言はその方針にのっとったものだとすれば理解できます。
 
ただ、そうすると、安倍首相がこれまでトランプ大統領にすり寄り、親密さをアピールしてきたのはなんだったのかということになります。
 
 
トランプ政権に見切りをつける一方で中国にすり寄るというのもありそうなことです。
 
自民党の二階俊博幹事長は5月中旬に北京で開かれた「一帯一路」国際協力サミットフォーラムに出席し、習近平主席に安倍首相の親書を手渡し、両国首脳の相互訪問を実現したいとの安倍首相の考えを伝えています。
そのときに二階幹事長は記者団に、アジアインフラ投資銀行(AIIB)に日本政府が早期に参加を決断すべきだとの考えも表明しています。
AIIBに参加していないのは、主要国では日本とアメリカだけです。日本政府はアメリカが参加する事態を恐れているという報道もありました。
 
考えてみれば、中国は今でも6~7%の経済成長を続けており、包囲網に収まるわけがないのです。
 
もっとも、産経新聞などは、安倍首相の「一帯一路」への協力表明は透明性、公正性という条件づきであって、中国へのすり寄りではなく、中国を牽制する狙いなのだと解説しています。
 
安倍政権がトランプ政権に見切りをつけて中国へすり寄っているとすれば、安倍政権は想像以上にしたたかで、政権の長期化を狙っていることになります。
実際はどうなのでしょうか。国会でも追及してほしいところです。

韓国の新大統領になった文在寅(ムンジェイン)氏は、反米・反日・親北朝鮮だということです。
早くも日本では、北朝鮮と仲良くして同盟国の日本やアメリカを裏切るのはけしからんという声が上がっています。
しかし、韓国の立場としては、まず対北朝鮮政策を決めて、それに準じてアメリカや日本や中国との関係が決まってくるのが当たり前です。もし北朝鮮と関係改善ができれば、アメリカとの同盟がほとんど無意味になるということもありえます。
 
韓国の選挙中にトランプ大統領は「韓国政府はTHAADの代金十億ドルを支払うべきだ」と発言して、韓国民がこれに反発し、反米的な文在寅氏に有利に働いたということです。
 
また、トランプ大統領は「習近平国家主席から『韓国は中国の一部だった』と聞いた」とも発言して、韓国民の感情を逆なでしました。習主席がほんとうにそう発言したのかわかりませんし、韓国民はトランプ大統領にも反発したようです。
 
トランプ大統領は「すべての選択肢がテーブルの上にある」という表現で、北への武力行使を示唆していましたが、それに対しても韓国民は反発しています。アメリカの武力行使で韓国も被害を受けるからです。
 
トランプ大統領の発言をいちいち真に受けるのもどうかと思いますが、ともかく韓国民はトランプ大統領に対してそういう反応をしています。
 
 
 
一方、日本人はトランプ大統領がなにを言っても反発するということがありません。
 
たとえば、トランプ大統領は日本との自動車貿易は不公平だと繰り返し主張していました。これに対して日本側は、「トランプ大統領は事実がわかっていない。日本はトランプ大統領に説明するべきだ」といった反応ばかりでした。「事実に反する批判をするのはけしからん。トランプ大統領は発言を訂正するべきだ」といった反発はありません。
 
トランプ大統領の北朝鮮への武力行使を示唆する発言に対しても、日本はただ受け入れるだけです。そして、今はトランプ政権は一転して米朝対話の方向に舵を切っていますが、これに対しても日本は歓迎も反発もないようです。「せっかく米艦防護をしてやっているのに対話とはなんだ」とか「拉致問題の解決なしの合意には反対だ」とか主張してもいいはずです。
 
韓国の政治は、朴槿恵前大統領の失脚などを見ていると、日本よりも後進的だなあと思いますが、対米関係に限ると、日本よりもはるかにまともです。
その結果、韓国では政治がダイナミックに変化し、政権交代が起きますが、日本ではまったく起こりそうにありません。
 
トランプ大統領はコミーFBI長官を解任するなど、早くも末期症状を呈しています。
トランプ大統領の対北朝鮮政策も、ただ迷走しているだけです。トランプ政権は中国を介して北に「核放棄をすれば体制を認める」と通達したという報道がありましたが、北は核放棄をするはずがなく、トランプ外交の稚拙さは目をおおうばかりです。
 
日本人の中からいつトランプ大統領批判が起きるのか、楽しみに待ちたいと思います。
 

トランプ大統領は5月2日、ブルームバーグのインタビューで「(北朝鮮の)金委員長に会うことが自分自身にとり適切なら、当然、会談を行うことを光栄に思う」とし、「適切な状況下で会談する」と述べました。
これに対してホワイトハウスのスパイサー報道官は、「北朝鮮が挑発的な行動を即時に控えることを米国は確認する必要があり、現時点でこうした要件が満たされていないことは明白」と述べて、トランプ大統領の発言に否定的な見解を示しました。
 
トランプ大統領はまた4月27日のインタビューで、韓国に配備された高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD)の費用約10億ドルを「韓国側が支払うのが適切だと伝えている」と述べました。
この費用はアメリカ側が負担するということで合意ができていました。韓国大統領府の金寛鎮国家安保室長とマクマスター米大統領補佐官が改めて30日に電話で協議し、従来の合意を確認しましたが、マクマスター氏は米FOXニュースとのインタビューで、費用負担を巡る再交渉を示唆し、別の米韓関係筋も「トランプ氏の発言は否定できない。今後、再交渉は避けられないだろう」と述べたということです。この費用負担問題で韓国は大騒ぎです。
 
トランプ大統領の思いつきの発言によって政権全体が右往左往していることがわかります。
ですから、トランプ大統領や政府高官の発言をいちいち真に受けるのは愚かなことです。
 
 
しかし、安倍政権はトランプ政権から発信されるさまざまな情報を都合よく解釈して、危機感をあおろうとしています。
しかもそのやり方があまりにも露骨です。
 
北朝鮮、サリン搭載ミサイルを保持の可能性 安倍首相
東京(CNN) 日本の安倍晋三首相は13日、北朝鮮が猛毒の神経ガスであるサリンをミサイル弾頭に搭載して発射し、地上に着弾させる能力を既に保有している可能性があるとの見解を示した。
国会の外交防衛委員会で述べた。この見解の根拠については触れなかった。
首相はまた、日本を取り囲む安全保障の環境は厳しさを増し続けているとの認識も表明。化学兵器が用いられたとされ、乳児や子どもを含む多数の罪のない住民らが殺されたシリアの最近の惨事にも触れ、我々は「現実をしっかり踏まえるべきだ」と強調した。
(後略)
 
サリンをミサイルに搭載する可能性があるというのは当たり前のことですし、「サリンをミサイル弾頭に搭載して発射し、地上に着弾させる能力」などというと特別な能力のようですが、第一次大戦のときから毒ガスは砲弾に詰めて撃たれていました。安倍首相の発言には情報としての価値がまったくありません。ただ危機感をあおるためだけの発言です。
 
内閣官房のサイトも呼応して毒ガスへの恐怖をあおっています。
 
問8近くにミサイルが着弾した時はどうすればいいですか。
・屋外にいる場合は、口と鼻をハンカチで覆いながら、現場から直ちに離れ、密閉性の高い屋内の部屋または風上に避難してください。
・屋内にいる場合は、換気扇を止め、窓を閉め、目張りをして室内を密閉してください。
 
4月29日に北朝鮮が弾道ミサイルを発射したときには、東京メトロは10分間全線の運転を止めました。北朝鮮はミサイルの発射実験をしているだけで、日本を狙って撃っているわけではありません。乗客に迷惑をかけるだけの意味不明な対応です。
 
しかし、こうしたことが安倍政権にはプラスです。なにより森友学園問題が脇に押しやられてしまいました。
 
トランプ大統領もシリア攻撃が評価され、北朝鮮への強硬姿勢も国民から支持されているようです。
 
金正恩氏も、戦争の危機は国民を結束させ、政権基盤を強くすることになるので、積極的に危機をあおっていると思われます。
 
トランプ大統領も金正恩氏も安倍首相も、自分から積極的に戦争をする気はなくて、戦争の危機をもてあそんでいるだけでしょうが、火遊びをしているうちに火事が起こることもあります。
愚かな国家指導者ほど厄介なものはありません。

北朝鮮情勢は、見る角度によってぜんぜん違って見えます。
たとえばロシアから見れば、金正恩よりもトランプのほうが危険だと、ニューズウィーク日本版の記事が書いています。
 
半島危機:プーチン静観は、北朝鮮よりトランプのほうが危ないから
 
ロシアにしてみれば、北朝鮮の核が自分のところに向けられるとは思っていないのでしょう。
 
その点では中国も同じで、北朝鮮の核を脅威とは感じていないはずです。
考えてみれば、北朝鮮のICBM開発を脅威に感じるのはアメリカだけです。
トランプ大統領は中国が北朝鮮に圧力をかけてくれるのを期待しているようですが、中国が本気でやるとは思えません。表向き制裁しているふりをするというのがこれまででしたし、今回も同じでしょう。
 
韓国もまた北朝鮮に対してあまり危機感がないようです。安倍首相が朝鮮半島からの難民流入の可能性に言及すると、韓国外務省の報道官は「仮想の状況を前提にした言及は誤解を招き、平和と安定に否定的な影響を及ぼしかねず自制すべきだ」と不快感を示し、大統領選の各陣営も「日本が危機感をあおっている」と批判しました。
ソウルは北朝鮮の長距離砲の射程内にあり、戦争になれば「火の海」になるとも言われます。それでいて危機感がないのは、北朝鮮と同胞意識があるからでしょう。同胞がソウルを「火の海」にするわけがないと思っているのです。
 
 
では、日本はどうかというと、安倍政権とマスコミはやたら危機感をあおっています。
アメリカと日本を一体と見なしているからです。
 
しかし、日本は韓国のような同胞意識を持つことはできないとしても、拉致問題さえ棚上げにすれば、ロシアや中国と同じ立場に立つことはできるはずです。
そして、日本がロシアや中国と同じ立場に立てば、北朝鮮の核を脅威に思うこともなくなります。
 
主権国家が自衛のために軍備を持つことは当然の権利です。
北朝鮮が核を搭載したICBMを持つことは止められません。
しかし、そうなっても、核保有国の中国とロシアに北朝鮮が加わっただけの話です。
 
冷戦思考から脱却すれば、北朝鮮の核は決して脅威になりません。
逆に、トランプ政権が軍事力で北朝鮮の核武装を阻止しようとするなら、トランプ政権のほうこそが脅威です。

このページのトップヘ