ナイジェリアでイスラム武装勢力によって少女が200人以上誘拐されるという事件が起きています。日本ではそれほどではありませんが、欧米では大騒ぎになっています。この事件はどうとらえたらいいのでしょうか。
 
ナイジェリアで女子生徒多数誘拐 米、救出に専門家派遣
ナイジェリア北部で、イスラム武装勢力「ボコ・ハラム」に女子生徒がさらわれる事件が先月から相次ぎ、これまでに200人以上が誘拐される事態になっている。国際的な非難が高まっており、オバマ米大統領は6日、救出に向けた専門チームの現地派遣を表明した。
 
 ナイジェリア北部ボルノ州の学校では、4月中旬に女子生徒200人以上が武装集団に誘拐された。別の場所でも今月4日に8人の女子生徒が誘拐された。AFP通信などによると、ボコ・ハラムの指導者が4月の犯行を認め、「神が娘たちを売り飛ばせと言っている。人身売買の市場がある」などと主張している。
 
 「ボコ・ハラム」という名は「西洋の教育は罪」という意味で、同グループは最近は教育施設への攻撃を強めている。政府施設へのテロ攻撃も繰り返しており、今年だけでも1500人以上が犠牲になった。国際テロ組織アルカイダ系組織から訓練を受けているとされる。
 
 オバマ米大統領は6日、ナイジェリアに、軍や情報機関などからなる専門チームを派遣したことを明らかにした。連れ去られた場所を特定し、解放に向けた交渉を支援する。
 
 オバマ氏は米ABCテレビで、「とても痛ましい状況で、常軌を逸している」と非難。パキスタンで武装勢力に頭を撃たれながらも、女性教育の重要性を訴えているマララ・ユスフザイさんもツイッター上で「女の子たちを取り返せ」と掲げた写真を掲載し、救出を訴えている。
 
 米国務省のハーフ副報道官は5日、「女子学生の多くは隣国などの国外に連れ出された情報がある」とし、武装勢力が誘拐後にナイジェリア国外に移動しているとの見方を示している。(ヨハネスブルク=杉山正、ワシントン=奥寺淳)
 
「娘たちを売り飛ばせ」とか「人身販売の市場」とか、とんでもないことを言っています。騒ぎになるのは当然です。
 
ただ、欧米諸国がヒートアップするのは、相手がイスラム勢力だからということもあるでしょう。日本が同じようにする必要はありません。
 
イスラム過激派のやっていることに弁護の余地はありませんが、それを批判している者が正しいとは限りません。
自分のことを棚上げにして他人を批判する人間がいちばん悪いかもしれないのです。
 
日本人も欧米を通してイスラムを見るので、そこに偏見が加わっているおそれがあります。
たとえば、厳格なイスラム国では女性はヴェールで顔を隠していますが、これは女性差別で、けしからんという人がいます。
しかし、日本では女性は化粧せずに人前に出ることができません。素顔を出せないという点では同じですし、ヴェールをかぶるよりも化粧するほうが手間もコストもかかります。たとえば女子大生は就活のとき全員ヴェールをかぶることにすれば、実力で評価されるようになるでしょう。
単純にイスラム式はだめだとはいえません。
 
「ボコ・ハラム」は女子教育の禁止を主張しているそうで、これが間違っているのは明らかです。
しかし、欧米や日本では、女子にせよ男子にせよ、教育からの離脱を禁止しています。つまり義務教育です。そのため子どもが学校に行きたがらないと、親が暴力を振るってまで学校に行かせるということが行われています。子どもに選択権がないことでは同じです。
 
少女を監禁して人身売買をすることがよくないのはわかりきっていますが、では、日本でそういうことが行われていないかというと、そんなことはありません。
一部の犯罪組織の話ではありません。普通の家庭で、親が子どもの進学先や就職先を決め、さらには結婚にまで親が介入するということが少なからず行われています。人生を支配することは人身売買とさして変わりません。こうしたことは人生相談のレベルでは問題になりますが、決して社会問題としては扱われません。
 
アフリカなどでは少年兵(子ども兵士)がいるとして、このこともよく問題になります。もちろん子どもを兵士にすることはよくないことですが、日本人が「日本の子どもは恵まれているが、アフリカの少年兵はかわいそうだ」みたいなことを言うのもおかしなことです。日本の子どもも受験戦士に仕立てられているからです。
 
次のサイトによると、少年兵は誘拐されて仕立てられるケースもありますが、ストリートチルドレンが合流してなるケースもあり、戦功をあげれば昇進して成年兵を統率する立場になることもあるそうです。子どもが自発的にやっているなら、日本の受験戦士よりもましかもしれません。
 
「子ども兵士」の背景と実情 ―― なぜ子どもが兵士になるのか
小峯茂嗣 / NGOアフリカ平和再建委員会(ARC)事務局長
 
また、アフリカ史研究の今泉奏という人が、西洋式の近代教育がアフリカの伝統教育を破壊してきたことを思うと、「ボコ・ハラム」の主張に共感に近いものを感じると述べています。
 
ナイジェリアのテロ組織「ボコ・ハラム」が主張する世界
 
ともかく、一面的な見方ではなく、多様な角度から見ることが必要です。
ハリウッド映画ならヒロイックな救出作戦で事件を解決しますが、そういうやり方ではなにも進歩しません。