ea9f22649b4e4acea55243fbe5415caa_s


アドリブのきかない芸人がノープランでステージに上がって醜態をさらした――吉本興業の岡本昭彦社長の記者会見は、まさにそういうものでした。

宮迫博之氏と田村亮氏が7月20日に記者会見を行い、その反響が大きかったために、急きょ2日後に岡本社長が会見することになったようです。準備不足は否めませんが、それにしても「お前らテープ回してないやろうな」と言ったのは「冗談のつもりで言った」とか、「全員連帯責任でクビにするからな」と言ったのは「父親が息子に言う『勘当や』という意味合いだった」など、弁解がお粗末すぎます。
会見の前に弁護士などと相談して、謝るべきところは謝り、主張するべきところは主張するという作戦を立てそうなものですが、こういうパワハラ体質の人は人の意見を聞かないのでしょうか。


問題は、岡本社長個人よりも吉本興業という会社にあります。
宮迫・田村会見で、岡本社長が「在京5社、在阪5社のテレビ局は吉本が株主やから大丈夫や」と言ったことがばらされましたが、吉本はテレビ業界を完全に抑えているという自信があるわけです。宮迫氏は最初、詐欺集団の闇営業のギャラをもらっていないと弁明していて、誰もがそんなわけないだろうと思ったはずですが、ワイドショーなどはほとんど追及しませんでした。

それに、吉本は行政との結びつきを強め、大阪万博の民間企業体連合のトップになっていますし、NTTグループと組んで教育関連のコンテンツを配信する事業を始め、これには官民ファンドの出資も決まっています。
「wezzy」の「吉本興業に行政案件を担う資格はあるか 大阪万博、国連、教育事業との関わり」という記事にはこう書かれています。


こういった行政案件への食い込みを可能にしている背景には、吉本興業と安倍政権の密接なつながりがあることは疑いようもない。

 NMB48の吉田朱里は大阪G20におけるロゴマークを決める選考会のメンバーに選ばれていたし、大崎会長はいま現在も、沖縄の米軍施設・区域が返還された後の跡地利用を協議する有識者懇談会の委員に選任されている。
 安倍政権と吉本興業のつながりはどんどん露骨になっている。統一地方選直前の4月に安倍首相が吉本新喜劇の舞台に上がり、その後、6月に吉本所属のタレントたちが首相官邸を表敬訪問したことは記憶に新しい。

 安倍政権は吉本芸人のタレントパワーを人気取りに利用し、吉本興業は安倍政権との密接な関係で行政案件に食い込んでいく──吉本興業のブラック体質とともに、この関係性についても見直しが求められてしかるべきなのではないだろうか。
https://wezz-y.com/archives/67889

吉本興業はアベ友企業だったのです。
安倍政権とつながっているということが岡本社長の自信になり、記者会見への対応をおろそかにしてしまったのでしょう。

アベ友の不祥事といえば、もちろん森友加計があります。
最近では幻冬舎の見城徹社長もそうです。作家の津原泰水氏が百田尚樹氏の「日本国紀」を批判したため、見城社長が津原氏の本の実売部数をツイッターで公表して炎上しました。

「権力は腐敗する。絶対権力は絶対的に腐敗する」という言葉があるように、安倍長期政権は腐敗の極みです。
安倍政権に関わった人が腐敗にまみれて不祥事を起こすのは不思議ではありません。


なお、今回のことでは、「クビ」や「解雇」や「契約解除」や「引退」という言葉が飛び交いましたが、これらの言葉はみな同じ意味です。
吉本興業をクビになると、芸能界を干されて、引退に追い込まれるのです。
かつてサブローシローという漫才コンビが吉本興業の意に反して独立し、徹底的に干されて、つぶされるということがありました。
ですから、宮迫・田村の両氏は芸能界引退をかけての記者会見だったわけで、必死さが伝わったのは当然です。
本来なら、この二人のような実力のある芸人なら、吉本をクビになれば、ほかの芸能事務所が喜んで迎えてくれて、今まで以上に活躍できても不思議ではありませんが、吉本に限ってはそういうことがありません。
いや、ジャニーズ事務所も同じです。元SMAPの三人は今もテレビ番組にほぼ出られません。公取委はそうしたことでジャニーズ事務所に「注意」をしています。
レプロエンタテインメントから独立したのん(能年玲奈)さんも、ほとんど芸能活動ができない状態です。
吉本の芸人のギャラが安いということが話題になっていますが、もし芸人が自由に移籍や独立ができるようになれば、そうした問題はなくなります。

今回の事件をきっかけに、芸能界のダーティな体質も徹底的に改善されるべきです。