女子プロゴルフの宮里藍選手が引退を表明しました。引退理由は、「モチベーションの維持が難しくなったというのが一番の決め手」ということです。
まだ31歳の若さで、とくに体の故障もないようです。結婚の予定もなく、今後なにかをする計画もないということです。
ここ数年は不調でしたが、スランプは誰にでもあることです。
まったく不可解な引退というしかありません。
 
「モチベーションの維持が難しくなった」というのは、要するに「やる気がなくなった」ということでしょう。
どうしてやる気がなくなったのでしょうか。
 
 
藍さんは父親から教わって4歳からゴルフを始めました。2人の兄もやはりプロゴルファーです。
父親はゴルフのティーチングプロで、父親と藍さんは親子であると同時に師弟関係でもあります。
 
親子であると同時に師弟でもあるというと、大相撲の若貴兄弟が思い出されます。若貴兄弟と親方と女将さんは理想的な家族としてもてはやされましたが、のちに家族関係にさまざまな問題が噴出しました。
 
人間は普通、仕事で一人前になると自然と親から自立するものです。しかし、親子が仕事で師弟関係であると、自立のきっかけがつかめません。
それに、そもそもその道を選んだのは自分ではないという問題があります。成長するとともに、親の敷いたレールの上を走り続けていることに疑問を感じるようになるのは当然です。そのとき、自分はこの道を行くしかないと思い直すことができればいいのですが、疑問を持ったままだと、モチベーションの維持ができなくなります。
藍さんの場合は、それではないでしょうか。
 
藍さんの父親は、宮里三兄妹を育てたということで、よくメディアに出て、ゴルフの指導法のほかに、「ゴルファーである前に人格者であれ」と教えてきたというような教育論を語っています。
そうすると、藍さんは活躍すればするほど、また人気が出れば出るほど、親の教育がよかったのだということになり、その分、自分自身の達成感が少なくなる理屈です。
 
どこかで親離れをすればいいのですが、藍さんと両親の仲はひじょうにいいようです。
引退表明の記者会見のあと、会場の裏で待っていた両親とハグしていたのをニュース番組が映していました。
 
父親はこのように語っています。
 
 
父・優氏は宮里藍の決断を尊重、第二の人生は「メンタルトレーナーとして選手を助けてみては」

宮里藍の引退会見の後、コーチとして藍を手ほどきしてきた父の優氏が報道陣の前で口を開いた。
(中略)
今後は「アメリカ各地に行ったが、ほとんどゴルフ場しかいってない。ですから引退後はアメリカのあちこちを案内してもらいたい。やっと親孝行してもらえるかな」とゴルフ以外の時間をもっと共有したいと話した優氏。また「本人の気持ちしだい」としながら、スランプを乗り越えてきた経験を活かし、「メンタルトレーナーとして選手を助けてみては」とメンタル面での指導者の道を歩んで欲しいと打ち明けた。
 
 
まだ藍さんといっしょに旅行などをするつもりのようです。
 
また、引退したアスリートが第二の人生をどうするかはひじょうにむずかしい問題で、本人が決めるしかありませんが、そこにまでアドバイスしています。
しかも、そのアドバイスがへんです。本人が「モチベーションの維持が難しくなった」と言って、メンタル面がコントロールできていないのに、メンタルトレーナーになれと言っているのです。
 
藍さんが不可解な引退をしたのには、父親との関係が大いに影響しているに違いありません。
 
まあ、それは私の想像ですが、31歳の娘の人生にまだ関わろうとする父親に問題があるのは確かです。
そして、それを仲良し親子として美化するマスコミも同罪です。
これは婚姻率の低下、引きこもりやニートの増加とも関わる大きな問題です。