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テレビ朝日ホームページより

テレビ朝日「報道ステーション」の番組宣伝CMが女性蔑視であるとして炎上しました。
愚かな政治家が愚かな発言をするのと違って、テレビ局の報道番組に関することですから、問題は深刻です。

テレビ朝日はCM動画を削除して謝罪しましたが、今のところそのCM動画はYouTubeで見られるはずです。



動画が見られなくなるかもしれないので、あるサイトから内容を文章化したものを引用しておきます。

テロップ「これは報道ステーションのCMです」

(場面)女性の自室らしい。そこへ女性が帰宅した。24~5歳くらいの女性が画面にフレームインして喋りだす。動画のオンラインで友達と話をしているのだ。女性は極めてリラックスしていて、話している相手が恋人だと思う人がいても良いくらいのイメージで撮ること。女性は全編通して溢れる笑顔である。

女性「ただいまー。なんか、リモートに慣れちゃったらさ。久々に会社行ったらなんか変な感じしちゃった」「会社の先輩、産休あけて赤ちゃん連れてきてたんだけど、もうすっごいかわいくって。どっかの政治家が『ジェンダー平等』とかって今、スローガン的に掲げてる時点で、何それ、時代遅れって感じ」「化粧水買っちゃったの。もうすっごいいいやつ。それにしても消費税高くなったよね。国の借金って減ってないよね?」「あっ9時54分。ちょっとニュース見ていい?」

テロップ「こいつ、報ステ見てるな」
https://news.yahoo.co.jp/articles/a07c8b849df6f038e1b9f763ab9ea77df5708985

いちばん炎上したのは「どっかの政治家が『ジェンダー平等』とかってスローガン的に掲げているのが時代遅れ」という部分です。
ジェンダー平等は国連「2030アジェンダ」に明記されていて、時代遅れどころか2030年までの実現を目指す国際目標です。しかも日本はジェンダー平等については後進国ですから、目標達成ははるか未来です。

それから、最後に「こいつ」という言葉が出てきて、男が女性を上から視線で見ていることがわかります。
女性蔑視CMだとして炎上したのは当然です。


ただ、こんな女性蔑視CMでも擁護する人がいました。
「消費税高くなったよね」という言葉があるので、これは未来社会のことだから、ジェンダー平等のスローガンが時代遅れになっているのだというのです。

「消費税高くなったよね」という言葉に、私も「あれ? いつのことだろう」と思いました。
ただ、未来のことだとは断定できません。未来と過去の両方の場合があります。

それに、もうひとつ別の可能性もあります。
4月1日から小売店で消費税込み価格の表示が義務づけられているので、現在、小売店で税抜きだった価格表示が税込みに変わりつつあります。それを見て、消費税が上がったと勘違いしているのかもしれません。
つまりこの女性はおバカなのです。
男性目線のCMですから、「美人で、明るくて、おバカ」という男にとって都合のよいキャラに設定されている可能性があります。



このCMに対する批判は、もっぱら女性蔑視、女性差別だからけしからんという観点からですが、私は別の観点から批判したいと思います。

今、ジェンダー平等を叫んでいる政治家の多くは野党議員で、女性差別だと批判される政治家の多くは自民党議員です。
この若い女性は、会社の同僚や化粧品など身近なことにばかり関心があるようですが、突然「ジェンダー平等を叫ぶ政治家は時代遅れ」と政治家に対して強烈なパンチを見舞います。
笑顔を浮かべながらのパンチですから、より効果的です。
蓮舫議員や福島瑞穂議員はさぞかしアタマにきたでしょう。

そのあと「消費税高くなったよね。国の借金って減ってないよね」と言うのですが、それに対する感想や意見はありません。
普通なら「消費税上げたのに国の借金がへらないっておかしくない?」などと言うところです。
この若い女性は終始笑顔なので、増税も国の借金も笑顔で受け入れているようです(「消費税高くなったよね。国の借金って減ってないよね」と言うときは笑顔は消えるのですが、すぐまた笑顔になります)。

この女性は、野党議員には的外れなパンチを放ち、財政赤字増大という政権が生み出した重大問題はスルーするのです。
これが報道ステーションのCMだということは、報道ステーションは政権寄りの番組だと宣言しているようなものです。

テレ朝の上層部も、テレビ局は「政治的に公平」であるべきだということは理解しているはずですが、それでも政治的偏向を露呈するとは、骨の髄まで偏向しているのでしょう。


今、テレビ局は、視聴率調査が世帯視聴率から個人視聴率に変化していることもあって、若い女性の視聴者を増やしたいようです。このCMもその狙いでつくられたのでしょう。
若い女性の視聴者を増やしたいなら、報道ステーションのスタッフに若い女性を増やして、「報道ステーションには多くの女性スタッフがいて、女性向けの情報発信を行っています」というCMをすればいいのです。
しかし、テレビ局は既得権益にあぐらをかいているので、そういう自己変革はできず、小手先の対応をするので、このようなおかしなCMができてしまうのです。

既得権益にあぐらをかいている点では、テレビ局も自民党も同じ穴のムジナです。



テレ朝はCM動画を削除するときに声明文を発表しましたが、そこには「ジェンダーの問題については、世界的に見ても立ち遅れが指摘される中、議論を超えて実践していく時代にあるという考えをお伝えしようとしたものでしたが、その意図をきちんとお伝えすることができませんでした」とあり、伝え方が悪かっただけで、意図は正しかったという態度です。
テレビ局のかかえる問題はかなり根が深いといえます。