村田基の逆転日記

進化倫理学の威力を試すブログ

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日ロ首脳会談は、日本が三千億円の経済協力だけ約束して、領土問題ではなんの進展もないというお粗末な結果に終わりました。
安倍首相はテレビに出まくって弁明に努めていますが、失敗したのは明らかです。
 
1218日に放映されたNHKスペシャル「スクープドキュメント北方領土交渉」を見ました。
「スクープ」というほどの内容はありませんし、もうひとつ煮え切らない印象です。おそらく安倍政権に遠慮して交渉失敗と決めつけられないために、曖昧になってしまったと思われます。
 
驚いたのは、安倍首相、国家安全保障局長、外務審議官、総理大臣秘書官ら中心人物の会議にまでNHKのカメラが入り込んでいたことです。
会議の冒頭だけテレビカメラで撮影するというのはよくありますが、どうやらずっと撮影していたようです。おそらく官邸は、「領土問題で歴史的進展! その内幕のすべて」という感じの政権プロパガンダ番組にするつもりで撮らせていたのでしょう。しかし、交渉は失敗に終わって、煮え切らない番組になってしまったわけです。
 
その番組でいくつか印象に残ったことを紹介します。
 
 
安倍首相は何度もプーチン大統領と会談して、領土問題でなにかいい感触を得たらしく、交渉にのめり込んでいきます。
どうしていい感触を得たのかということが問題ですが、その根拠として、プーチン大統領から昭和天皇即位の礼で打たれた12振りの日本刀のひとつが安倍首相に贈られたことが挙げられます。
これが美しい装飾の施されたみごとな日本刀で、実に絵になります。
この刀について、プーチン大統領と安倍首相の間でこのようなやり取りがあったということです。

「コレクターから買ったものだが、贈呈したい。本物だという鑑定書もある」
「すばらしい刀だ」
「このようなものは祖国に帰るべきだ」
「ありがとう。時をへてついに祖国に帰るということだ」
 
「祖国に帰るべきだ」という言葉がなにかのメッセージだという見方が日本政府の中に広がったということです。
もし領土問題で進展があったら、これは実に興味深いエピソードです。
しかし、結果は、みんな間抜けな解釈をしていたということになります。
 
一時はプーチン大統領もその気だったのかもしれませんが、その後、領土問題できびしい態度を取るようになります。
日本はアメリカに配慮しすぎて、北方領土に米軍基地ができる可能性を否定しないなど、ロシアに安全保障上の懸念を抱かせてしまったようです(オバマ政権は日本に高官を派遣して日ロ交渉に横やりを入れていました)
 
プーチン大統領は1027日に、北方領土における共同経済活動について、記者会見でこう語っています。
 
「日本の主権下で共同経済活動をするというなら、次の交渉はない。話はそれで終わりです」
 
しかし、安倍首相は交渉を継続しました。
ということは、日本の主権を認めなかったということでしょうか。
このころ、日本のマスコミもロシアの“食い逃げ”に終わるのではないかという懸念を書き立てます。
 
そして、安倍首相は日ロ首脳会談2日前にこんなふうに語りました。
 
「相手を信じるという信頼関係がなければ、結局物事は進んでいかないんですね。だまされるのではないか、罠にはまるのではないかという猜疑心を持てば、お互いそういう気持ちに陥ってしまって、結局もとに戻るということになります」
 
「相手を信じる」というのは、外交交渉ではなくて信仰みたいなものです。
日本はアメリカに対して、信じればきっと応えてくれるという態度でやってきました。
安倍首相はそのため、まともな外交のやり方がわからなくなったのでしょう。
 
安倍首相は、領土問題で進展がなかったら経済協力の提案を引っ込めるという当たり前の外交交渉ができず、ロシアの“食い逃げ”を許してしまいました。
 
安倍首相はみっともない弁明をせず、失敗を認めるべきです。
そうしないと、また同じ失敗を繰り返すことになります。

愛川欽也さんが亡くなりました。私が愛川さんで思い出すのは、「愛川欽也パックインジャーナル」という番組です。
この番組は朝日ニュースターというCS局でやっていたので、知らない人も多いでしょう。ニュース解説番組で、愛川さんはこういう硬派な一面も持っていました。
 
私が加入している地元のケーブルテレビで、朝日ニュースターは基本料金で見ることができたので、たまたま見たときにおもしろさに気づき、毎週見るようになりました。
 
この番組が始まったのは1999年で、私はたぶん始まった1年後ぐらいから見始めたと思います。左翼リベラルの立場から、レギュラーとゲストの合計6~7人がニュースについて解説や議論をするもので、愛川さんは司会役です。
左翼リベラルという立場はかなり鮮明で、テレビ局がこういう偏った番組をやっていいのかと心配になるほどでしたが、考えてみれば「チャンネル桜」なんていうのもあるぐらいで、CSは放送法の「政治的に公平」という縛りは受けないのでしょうか。
 
最初のころは、めっぽうおもしろかったものです。普通のテレビや新聞が報じない情報も多く、左翼リベラルの切り口も私の感覚に合っていました。
実際、番組の人気はかなりのものだったと思います。
 
もちろんそこには司会の愛川さんの力も大きかったと思います。
庶民の代表というスタンスから、素朴な疑問や怒りをぶつけて専門家の話を引き出しました。
 
しかし、5~6年前からでしょうか、どんどんおもしろくなくなって、私はすっかり見なくなってしまいました。
 
2012年には朝日ニュースターの方針変更で「パックインジャーナル」は終了することになりましたが、一部に根強いファンがいたために有料のインターネットテレビに移行して継続することになりました。
最初のころのおもしろさがあれば私も有料で見たと思いますが、そのころにはそういう気にはなりませんでした。おそらく視聴者もあまりいなかったのではないでしょうか。
 
あれだけおもしろかった番組がなぜおもしろくなくなったのか、愛川さんの訃報をきっかけに考えてみました。
 
おもしろくなくなった直接の理由は、愛川さんの感情的な発言が多くなり、それも同じことを繰り返すようになったからです。
愛川さんはカリスマ的な司会者なので、誰もそれを止めません。
よくも悪くも「パックインジャーナル」は愛川さんの番組だったのです。
 
愛川さんが感情的な同じ発言を繰り返すようになったのは、お年を召されたということもひとつの理由でしょうが、それだけとは思えません。
 
「バックインジャール」がいちばん盛り上がったのは、民主党政権誕生のころだったでしょう。愛川さんも民主党誕生を喜んで、大いに期待していました。
しかし、その結果はご存知の通りです。
そして、民主党政権失敗の原因がきちんと総括されていません。
これは「パックインジャーナル」の問題ではなくて、日本全体の問題ですが。
そして、そのことが現在の安倍政権の暴走につながっています。
 
そうした現実を前にして、愛川さんも感情的になるしかなかったのかなあと思います。
 
愛川さんの政治的な思いの原点にあるのは、ご本人も再三言っておられたように、学童疎開の経験です。戦争の悲惨さを体験したので、反戦の思いが強く、「憲法9条を守る」という立場を鮮明にしていました。
典型的なオールド左翼です。
 
オールド左翼の主張が時代遅れになっているのは事実です。
たとえば安倍政権が目指すのは、アメリカの対テロ戦争への参戦です。自衛隊は中東のどこかで戦うことになるのでしょう。それに反対するのに、昔の戦争の悲惨さを持ち出しても説得力はありません。
また、「憲法9条を守る」という守りの姿勢では、戦争勢力の攻勢に後退する一方になってしまいます。
 
結局、愛川さんは俳優や映画づくりやテレビの司会などをして豊かな人生を送ったと思いますが、政治的な思いとしては敗北感の中で亡くなったのではないでしょうか。
 
最期にきて、とんでもない時代に居合わせてしまったのは残念なことでした。ご冥福をお祈りします。

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